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2025年3月18日火曜日

地下鉄サリン事件から30年後に聞くボッケリーニの音楽と岩城宏之さんのエッセー『音の影』

音楽CDを40年ぐらい買い続けていると「なぜ買ったのだろう?」というCDが時々出てくるようになりました。昨日何となく手にしたのもそういうCDでした。

「Music an europäischen Höfen」というタイトル。「ヨーロッパの宮廷の音楽」といった感じでしょうか。曲目も解説もすべてドイツ語で書かれた輸入盤(多分中古盤で購入)で次の4曲が収録されています。

  • ハイドン/交響曲第39番ト短調,Hob-1:39
  • クヴァンツ/フルート協奏曲ト長調,QV5:174
  • ハイドン/交響曲第34番二短調,Hob-1:34
  • ボッケリーニ/交響曲第6番ニ短調,op.12-4

指揮はThomas Feyという人でオーケストラはHeidelberger Sinfoniker。フルート独奏はAndreas Schmidtという方でした。それにしても「何で買ったのだろう?」

曲目的には古典派時代の短調の曲を集めた,シュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)風のドラマティックな雰囲気を持った音楽集という感じです。ただし古楽奏法のせいか,暗く沈み込む感じはなく、1曲だけ長調のフルート協奏曲をはじめ、どれもとても瑞々しい音楽。というわけで、普通に良いCDです。ただし,なぜ買ったのかがどうしても思い出せません。

そのうちに、ボッケリーニの交響曲に標題が書かれているのに気づきました。

「La casa del diavolo」。イタリア語です。casaは「家」だなと思いつつ、翻訳ソフトで調べてみると「悪魔の家」だと判明。

「そういうことか」と思い出したのが,この副題の曲について故岩城宏之さんがエッセー集の中で何か書いていたことです。オーケストラ・アンサンブル金沢の(定期公演以外の)演奏会でも一度聞いたことがあるような気がしてきました。というわけで我が家の蔵書を調べてみると....2004年に刊行された『音の影』に掲載されていることが分かりました。


この本は,辞書のような感じでAから順番にそのイニシャルの作曲家について岩城さんがエッセーを書いた本で(岩城さんの得意なスタイルですね)、Bの項目が「ボッケリーニ 地下鉄サリン事件と『悪魔の家』」となっています。

イラストはおなじみ,和田誠さん

ただし...結構ゆるい企画で「作曲家にはBが多いので」という理由でBの項目が11も並んでいるのも,岩城さんらしいところです。

そのエッセーの中には,地下鉄サリン事件の頃、ニュース映像に合わせてボッケリーニのこの曲が印象的に使われていたこと。その曲を数ヶ月後,偶然都内のクラシック喫茶で聞いて曲名が分かったことなどが軽妙なタッチで書かれています。

「悪魔の家」という標題自体,オウム真理教の宗教施設(サティアンという名前でしたね)と重ねてしまいます。岩城さん同様,ニュース番組の音楽担当者がどういう経緯でボッケリーニのこの曲を選んだのか気になりますが(このサティアンを思わせるタイトルが理由なのかもしれません),その後,この曲は頻繁に演奏されるようなメジャーな作品にまではなっていないようです。知る人ぞ知る作品といったところでしょうか。

いずれにしても地下鉄サリン事件から丁度30年の時期に「悪魔の家」のCDをたまたま手にしたというのも何かの因縁なのかもしれません。このCDを買った経緯は,たまたま中古CDの中にボッケリーニの「悪魔の家」が入っているのに気づき,購入したような気がしてきました。色々な記憶を風化させないためにも,今日は岩城さんの本を読みながらこの曲を聞いてみたいと思います。

岩城さんのサイン入りでした。


2023年12月24日日曜日

シネモンド開館25周年記念 映画「秋聲旅日記」を鑑賞。金沢らしさ秋聲らしさあふれる映画の後は,甫木元空監督を交えたトークイベント。シネモンドならではの上演&企画でした

本日の午後は,シネモンド開館25周年記念,青山真治特集として行われた,映画「秋聲旅日記」をシネモンドで観てきました。

シネモンドが開館したのは1998年12月。この時,映画「ムトゥ:踊るマハラジャ」を観たことは今もしっかり覚えています。あれから25年,金沢の香林坊には「無くてはならない場所」であり続けていると思います。

今回上演された「秋聲旅日記」は,昨年3月に亡くなった青山真治監督が,20年以上前に金沢で行われた映画のワークショップがきっかけとなって生まれた中篇(43分)です。タテマチ商店街とシネモンドなどが中心となって作られた作品ということで,25年を振り返るのには相応しい作品と言えます。

この作品ですが,ストーリーはシンプル。「訳あり」の秋聲が金沢に戻って来て,なじみの女性の営業する東茶屋街の宿に数週間滞在した後,東京に戻る...といったものです。独特なのは,ドラマの内容自体は,セリフなどはほぼ原作どおりなのに(複数の秋聲作品を組み合わせたもの。調べてみると「挿話」「籠の小鳥」「町の踊り場」「旅日記」が原作),映像の方は現在の金沢という点です。

冒頭,秋聲は小松空港に飛行機で到着するのですが,着ている衣装は当時の秋聲のまま。その後,現代の車で金沢まで移動し,鮎を現代のお店で食べます。その後,芸妓の歌や三味線を聴いたりします。いちばん面白かったのは,秋聲がジャズボーカルを昔なじみの芸妓などと一緒に聴くシーンでした。ここで出てきた店が,柿木畠の「もっきりや」(この店には何回も行ったことがあるので嬉しくなりました)。そして,ケイコ・リーさんによる情感たっぷりのボーカルをしっとりと聴かせてくれました。中篇作品なのに,この曲は1曲全部入れるなど,たっぷりと時間を取っていたのも大胆。時の流れ方が分からなくなる感じのする作品です。

そして,時空を飛び越えた映像なのに,全く違和感を感じさせないのは,やはり金沢でロケをしているからだと思います。金沢の観光地には,江戸時代から続く茶屋街だけでなく,金沢21世紀美術館などもありますが,その「金沢らしさ」がそのまま映像化されていると思いました(ただし21美がオープンしたのは,この映画の撮影後です)。そして,秋聲自身のキャラクターの「和洋折衷」感にも合っていると思います。同じ金沢出身でも,犀星や鏡花については,和服のイメージですが,秋聲の方は洋装のイメージが強いですね。その辺の「茶屋街を描きつつも,モダンさも持った雰囲気」が,秋聲らしいと思いました。

というわけで,物語的には大きなドラマはなくとも,時空を超えた不思議な雰囲気に浸れるというのが金沢人にとっては嬉しい作品です。恐らく,金沢在住者以外が観ても,怪しげな魅力が伝わり,金沢に来てみたくなるのではと思いました。

役者さんでは,秋聲役の嶋田久作さんの無骨で飄々とした感じが,秋聲に合っていると思いました。ただし,実際の秋聲よりはかなり長身ですね。相手役・お絹は,とよた真帆さん。故・青山監督の奥さんということで,映画後のトークでは,「明らかにとよたさんを丁寧に映していますね」といった話題が出ていました。確かに「もっきりや」の場で,とよたさんの「うなじ」を結構長く映していました。というわけで...とよたさんの美しさも見所の一つです。

この日は青山監督との弟子である,甫木元空監督も来館しており,上演後この作品のことを中心としたトークが行われました。こちらも興味深いものでした。次のようなことが特に印象に残りました。

  • 20年ぶりに上演して,フィルムの劣化で色が変わっていた。いつの時代か分からない感じがさらに強くなって,作品にマッチしているかもしれない。
  • 「風景はその時にしか撮れないもの。映画はそれを記録している」といったことを,酔った青山監督が語っていたとのこと。
  • 20年前,試写会をした際,「映画の中に金沢の湿度の高さが写っている」という感想があり,嬉しかった(トークイベントに登壇されていた,シネモンド開館時に支配人だった土肥さんのお話)

その他,「劇場で映画を観ることの良さ」について質問された甫木元監督が語った言葉については,私自身,「そのとおり,同感」と思いました。次のようなことをおっしゃられていました。

  • 自分以外の違ったお客さん観られることが楽しみの一つ。「ここで笑うんだ」など自分の感覚との違いが分かる。それも毎回違う。
  • 映画の前後の風景などの方が記憶に残ることもある(例えば,今日だと外に雪が残っているとか)が,それで良いと思う。映画が色々なことのきっかけになれば良い。
  • 映画館ごとに音の響き方が違う。ここもライブっぽい点だと思う。

私もこの「ライブ感」が好きです。自宅でテレビを観ても,映画館ほどには集中できないということもありますね。

トークの最後は,シネモンドの25年を振り返るスライドショー。色々と懐かしい写真が出てきました。上映された作品+トークということで,シネモンドでないと味わえない,上演&企画だったと思います。


映画を観た後は,久し振りに東急スクエアをブラブラ。世間はクリスマス・イブということで,賑わっておりました。その後は,久し振りにバスで帰宅。いつもしないことをたまにするのも新鮮な気分になって良いものだと思いました。


2023年7月22日土曜日

梅雨明けして夏本番の中,開通した幹線道路を眺めに石川県立図書館へ。図書館では能「道成寺」に関するイベントに参加後,鉄道関係の展示も観てきました

子供たちの夏休みスタートに合わせるように, 金沢も梅雨明け。子供たち同様,この時期の晴れた空を見ると,心躍ります。暑すぎて,何もする気にならない感覚もあるのですが,その辺も込みで「夏本番だな」と感じます。

石川県立図書館です。夏の空の色ですね。

そんな中,石川県立図書館前の幹線道路(小立野から旭町・田上方面につながる道路)がようやく完成しました。この道路が開通すると,結構金沢市内の交通の流れが変わりそうです。というわけで,暑い中この道路を見てきました。

写真だとなんだかよく分かりませんね

右側は建設中の金沢美大。ほとんど完成している感じです。

道路だけ見ていても仕方がないので,県立図書館で午後からやっていた,能の「道成寺」に関するトークイベントも聞いてきました。

金沢で活躍する宝生流能楽師・高橋右任さんと能面師・後藤祐自さんの対談で,道成寺のストーリーや道成寺で使う能面の話題に加え,謡のレッスンの時間までありました。謡の節回しはなかなか難しいのですが,高橋さんの渋くツヤのある声を聴いていると,ちょっとやってみたくなりました。

能を観ると「眠くなる」と言われますが,高橋さんによると,「これは「幽玄の眠り」,これでいいんです。そもそも能面を付けている登場人物は皆さん霊界にいる死んだ人ばかりなので,ふわっとした感じで聴いてもらえばそれでよい」とのことです。そういえばワキの人は面を付けずにいるのですが,こちらは霊界と現実のつなぎ役とのこと。こういったことを知るだけで,能の見方が変わりそうです。


能面についての配布資料。大変充実した内容でした。

その他,館内では鉄道に関する展示も行っていました。

展示物の中では,今はなき特急「雷鳥」のプレート(何と呼ぶのでしょうか)が懐かしかったですね。

県立図書館の方は開館1周年で,閲覧席の方は,相変わらず賑わっていました。私も,この夏,「避暑」を兼ねて何回か出かけてみたいと思います。



2022年9月15日木曜日

アシェット・コレクションズ「恋愛小説の世界 名作ブックコレクション」,「週刊〇〇百科」的な商品にはついついひかれてしまいます。第1回「高慢と偏見」499円を買ってみたのですが...

8月末,アシェット・コレクションズ・ジャパンから「恋愛小説の世界 名作ブックコレクション」というシリーズがスタートしました。デ・アゴスティーニなどからも出ている,「週刊〇〇」的な分冊百科にはついつい注目してしまうのですが,本を箱に入れて雑誌として売るというのは,結構珍しいと思います(本の定期購読とどう違うのか....という気もしますが)。

その第1回配本,ジェイン・オースティンの「高慢と偏見」が499円という特価で発売されたので,ついつい買ってしまいました。この小説をこれまで読んだことがなかったからという理由もありますが,やはり,ハードカバーの魅力というのに惹かれてしまいました。





というわけで,「今後どうする?」ということになります。粗品もいろいろついて来るし...

取りあえず2週間に1回発売されるので,その間に読めるか試してから考えることにしました。その結果ですが...見事に読めなかったですね。平日の夜は疲れていて眠くなるし,土日も読書だけをしているわけにはいきません(他にも読むものもあるし)。それと私の場合,そもそも翻訳物が苦手というのもあります。今回の翻訳の文章はプレインな感じで分かりやすく,登場人物紹介のページも非常に充実していたのですが,どうも私の場合,登場人物が多いと,人間関係がすぐに分からなくなってしまいます。

ちなみに,光文社古典新訳文庫(某図書館から借りてみたのですが)の紙面と比較していました。アシェット版には,章ごとに(オリジナルにはない)小見出しのようなタイトルを付けて,分かりやすくしていることが分かりました。


その他,挿絵が入っているのも特徴です。

その上でですが,文章自体は光文社版の方がこなれた感じで読みやすいかなと感じました(私の個人の感想ですが)。紙質の方も光文社版の方が滑りが良く,それにつられて自然にするする読める...ような気がしました。

というわけで,定期購読は断念することにしました。第2回は「嵐が丘」ということで,心は動きましたが,価格が急上昇して約2000円に。各巻2週間のペースで読み終え続けることは難しそうだし,そもそもハードカバー全80冊を揃えた場合の置き場所の問題もあります。

今回の「高慢と偏見」も,いつの間にか光文社古典新訳文庫の方で読む形に置き換わってしまったので(せっかくなので読み進めようと思います),今後は,アシェット・コレクションズのラインナップを眺めつつ,(好みに応じて)同じタイトルを図書館で借りて読むというのもありかなと考えているところです。

改めて考えると,読み通すことよりは,インテリアとしてハードカバーの本を並べるという点にこのシリーズの主眼があるのかもしれないですね。電子書籍が少しずつ浸透する中,その反動の一種ともいえそうです。

PS.ラインナップの中に,「カラマーゾフの兄弟」が入っていました。

「これも恋愛小説?」という感じで,何でも入ってきそうです。長編小説には多少なりとも恋愛小説的な要素があるので,内容的には「世界の名作長編小説」といったところかもしれませんね。

2022年8月28日日曜日

石川県立図書館まで往復するために通っている図書館裏の小立野の狭い道の雰囲気が気に入っています。旭町と小立野を結ぶ鶴間坂も通行量が増えていそうです

新石川県立図書館が開館して,1カ月余り。車の駐車場は混雑しているようなので,自転車を使っているのですが,難関の急坂はあるものの,10分程度で到着するので,すっかりお気に入りの場所となっています。本日も午後から出かけてきました。

晴れていたのですが,湿度が低く,さらっとした空気だったので,サイクリング自体も楽しかったですね。そろそろ秋という兆候かもしれませんね。

最初は浅野川沿いの散歩コース。

浅野川の若松橋付近ら小立野までは直線距離だととても短いのですが,その間には河岸段丘ならではの急な坂があります。旭町のバス停付近から小立野まで行く場合,いちばん短いのは,鶴間坂という坂を通るコースです。いつもここを通っているのですが,以前に比べると通行量が増えている気がします。県立図書館まで往復している人はきっといると思います。

夏の間ならば,電動アシスト自転車でも汗をかくぐらいですが,本日はまったく汗をかきませんでした。

この坂を上りきると,金沢商業高校のグランドの裏(下の写真の右のフェンス側が高校)に出ます。

この辺りには細い路地が沢山あり...道に迷ったこともありますが...何となく昭和の空気感があって気に入っています。由緒ありげな洋館風の住居も数軒ありますね。

その後,自動車通行禁止の細い道へ。

ここを真っすぐ行くと県立図書館の裏側に出ます。

というわけで,これから秋になるとますます,図書館に出かける回数が増えるかもしれません。冬,雪が降った場合は結構大変ですが,そろそろ図書館周辺の幹線道路も開通するかもしれませんね。

2022年8月12日金曜日

猛暑の中,石川県立美術館で「 竹久夢二展:憧れの欧米への旅」を鑑賞。夢二の晩年の欧米旅行のスケッチなど貴重な作品も公開されていました。そのの後,石川県立図書館で一休みしながら,文章をまとめました。

昨日から夏休みを取っています。今年は,まず庭仕事をしているのですが、この暑さの中、かなり危険かもしれませんね。というわけで,一区切りをつけ、石川県立美術館で行われている「竹久夢二展:憧れの欧米への旅」を観てきました。

夢二の展覧会は、過去何回も行われていると思いますが、今回の特徴は、よく知られている本の表紙や挿絵、に加え、夢二作品の有数のコレクター,中右英氏が所蔵している直筆作品を多数展示していることです。特に夢二が欧米を訪問し、スナップ写真を撮るように、人物や風景をいろいろとスケッチしているのが面白かったですね。1930年代の前半,晩年の夢二がザルツブルクとかに行っていたというのは、面白いですね。

その他,これまで観たことのない展示としては、関東大震災直後の被災地の様子のスケッチも印象的でした。いつもの「大正浪漫」といった筆致とは違い,非常に精緻にくっきりと描いていたのが、「特別な災害」の感じを出していました。夢二はメモ魔だったと書かれていましたが、なるほどと感じました。

夢二の作品には、着物を着た女性(大体は憂いを帯びた感じ)がたくさん出てきますが、今回は、「銘仙」と呼ばれる,「絣(かすり)」の一種の着物の実物も展示されていました。いろいろな安い布を組み合わせている点が特徴で、庶民的なのですが、デザインが大胆で,どれも違っているような独創性があります。鮮やかだけれどもどこか滲んだ感じがあるのも、夢二の様式にぴったりだと思います。

展示を観た後は、ミュージムショップへ。最近はA5版のクリアファイルをよく見かけますが、版画の多色刷りのような感じで色が重なる,3つポケットのあるものを発見。これは面白いと思い購入しました。

1つめのポケットに白い紙を入れるとこんな感じ。椿の花でしょうか。

2つめのポケットに入れると,葉っぱが出てきました。

3つ目のポケットに入れると,全体が見えてきました。
歴史博物館前には,ライトアップイベントに関連したオブジェが並んでいました。
夜になると光るのだと思います。

その後は、少々遠回りになりましたが、石川県立図書館に寄ってきました。
本日は裏口から入りました。

相変わらず親子連れや自習をする学生たちの姿が目立ちましたが、人が沢山いても不思議と落ち着く空間です。せっかくなので,展覧会の感想(この文章)をまとめてみました。

本当は,図書館に併設されている,HUM&Goに入って,昼食でも食べてみようと思ったのですが...ずっと列がついていました。当分は混雑しそうですね。



2022年7月23日土曜日

音楽之友社の新しいシリーズ ON BOOKS advanceの3冊を購入。かつてのLP・CDの解説の代替として使えると思いました。その後,我が家にあったON BOOKSを取り出しているうちに懐かしくなってきました。

 音楽之友社には,以前,「ON BOOKS」という新書サイズのレーベルがあり,”音楽鑑賞之友”としてよく読んでいました。そのレーベルがリニューアルされ,ON BOOKS advanceとして3冊が発行されました。

そのコンセプトは,クラシックの特定の名曲について,「総論,楽曲の魅力」「楽曲解説」「演奏史・録音史・名盤」の3部構成で極めてもらうというものです。1冊1200円(税抜)ということで,やや高めの印象ですが,「こういうシリーズが読みたかった」という気持ちがあったので,ご祝儀気分で一気に3冊購入しました。

取り上げられている曲は,ベートーヴェンの第9(相場ひろ著),ストラヴィンスキーの「春の祭典」(満津岡信育著),ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」(広瀬大介著)の3曲です。個人的には「トリスタン」はほとんど聞いたことがない曲なので,この本を読みながら聴いてみたいなと思っています(CDなども持っていないのですが)。

ざっと読んでみた印象としては,LP,CDなどの音盤の解説書が発展した感じかもと感じました。現在,インターネットでの配信で色々な曲を気軽に聴けるようになった代わりに,解説を読みながら深く楽しむということが出来にくくなってきています。その辺のニーズに応えるシリーズとも言えそうです。そういえば,音楽之友社の雑誌「レコード芸術」の特集記事にも,以前,こういう感じの記事があった気がします。それを発展させた感じかもしれませんね。

さて,かつてのON BOOKSですが,私自身,1970年代中頃からよく読んでいました。いちばん最初に買ったのが,諸井誠さんの「交響曲名曲名盤100」でした。その頃,諸井さんはFM番組の解説者としてもよく出演されていたので,「今の私を作った5冊」の中の1冊と言えそうな本です。その後,この本について「PDF化したら便利かな」と思い,裁断してスキャンしてあるのですが...今となって思えば,そのまま紙で持っておけば良かったと後悔しています(PDFの方は,すっかり埋もれてしまっています)。

紙で残っているON BOOKSを調べてみると,次のようなものが出てきました。

諸井誠さん以外にも,長岡鉄男,黒田恭一など懐かしいお名前です。茂木大輔さんの本は比較的新しめです(なぜか「続」しか出てこなかったのですが,正編も持っていたはず)。というわけで,タイトルを眺めているうちに,ON BOOKS自体,復活して欲しいなという気になってきました。

そしてもひとつは,ON BOOKS SPECIALというシリーズ。

すべて古本で購入したのですが,いつの間にか「ほぼコンプリート」になっていました。今回のadvanceは,このシリーズの発展形とも言えそうですね。

というわけで,このシリーズで今後どういう曲が取り上げていくのか楽しみにしています。

2022年3月13日日曜日

本日は,3つの選挙の投票後,金沢市立中村記念美術館で「お茶とお香の小さな道具の世界」,室生犀星記念館で「旅する犀星:大陸編」を観てきました。その後,東急スクエアで期間限定のヴィンテージショップへ。

本日の金沢は,石川県知事選挙,金沢市長選挙,金沢市会議員補欠選挙という3選挙の投票日。3つが重なるのも初めてですが,28年ぶりに知事が変わり,金沢市長も変わるということの方が大きなニュースでしょうか。午前中に投票を済ませた後は,本日も自転車を乗るには丁度良い気温だったので,金沢市内をふらっと一回りしてきました。

まず,金沢市立中村記念美術館に行って,「お茶とお香の小さな道具の世界」という展示を見てきました。特にお茶にもお香の世界には詳しくないのですが,小さなものが端正に並んだ感じのポスターが「いい感じ」だったので見に行くことにしました。


展示室には,タイトルどおり,茶器,棗(なつめ),香炉,香合といった小さな道具が沢山並んでいました。個人的には,抹茶を入れる茶器である棗が好きです。緻密にぎゅっと引き締まった,丸っこい形を見ると何故かうれしくなります。展示室の入ってすぐのところに,まず野々村仁清作の「色絵菊桐文茶器」というのが展示されていましたが,その他にも松田権六,大場松魚,寺井直次といった大家の作品が並んでおり壮観でした。

香関係の道具は,さらに小さいものばかりでした。香箱ガニでおなじみの「香箱」などを見ていると,小型の家具といった感じで,雛人形の世界,さらにはシルバニアファミリーの人形の世界(現在でも売っているのでしょうか?)などを彷彿とさせる感じがあると思いました。

チラシの裏の写真です

わが家にある「棗」風のお茶の葉入れと一緒に撮影してみました。

というわけで,茶や香の世界の「小さな豊かさ」を実感できる展示でした。

せっかくなので,お土産に新発売の缶バッチを購入。時節柄,「密」という文字の書かれたものも面白かったのですが...今回展示されていた金沢市指定文化財の青木木米作の「扇形梅の絵香合」がデザインされたものの方が記念になるなかとこちらを購入しました。

よくよく見ると入場券のデザインと同じでした。

美術館前には梅が咲いていました。

その後は,本多町→竪町→新竪町→桜橋→犀川大橋...というルートで,しばらく休館していた室生犀星記念館まで行くことにしました。

旧石川県立図書館のすぐ裏が中村記念美術館です。

本多町を通るのは久しぶりでしたが,繁華街のすぐそばなのに,とても閑静な感じがあるのが良いですね(道も間違いやすいのですが)。

里見町付近の町並み

桜橋から上流の山を眺めてみました

W坂です。90度左回転させると文字通り「W]になりました。

犀川大橋

室生犀星記念館では,「旅する犀星:大陸編」という企画展を行っていました。

犀星が1937(昭和12)年に行った,当時の満州への旅行にテーマを絞ったもので,この旅行の結果生まれた,いくつかの作品が紹介されていました。このポスターになっている「わんぱあ,わんぱあ」というのは「哈爾濱(ハルピン)詩集」の中の「鼈」に出てくることばです。ちなみに,この「鼈」という字ですが,「すっぽん」と読みます。初めて見かけましたが,動物好きな犀星ならではの詩かもしれません。

犀星は本来,旅行嫌いなのですが,「何等かの意味に於て日本を新しく考え,そして国のためになるような小説を書きたい」という願いで満州に赴きます。ただし,結果的には,「大それた小説などは書けずに相渝(かわ)らず私らしい小説を書いて了った。作家のたましいというものはどういう処にいても,猫の目のいろのように変わるものではないのである」ということのようです。こう書けるのが良いですね(以上は,企画展ガイドペーパーに書かれていた「文学は文学の戦場に」からの引用)。

常設展示の方では,有名作家による袱紗(ふくさ)の展示が面白かったですね。谷崎潤一郎の「我といふ人の心は ただひとり我より外に知る人ハなし」という言葉は,その通りだなと実感したのでメモしておきました。

その後は,東急スクエアへ。シネモンドの隣にいくつかの古書店などが合同で期間限定のヴィンテージ・ショップを出しているということで眺めてきました。シネモンドの隣というのがとても良いですね。本日は何も買わなかったのですが,また来てみたいと思います。

ちなみにシネモンドでは,イランのアッバス・キラロスタミ監督特集を行っていました。この監督の作品は,何本か見たことがあるのですが,やはり映画館で観たいですね。というわけで,時間ができたら観たい...という気分になってきました。

最後に,いちばん下まで降りて,うつのみやで1冊本を購入。最近,ショパンのピアノ曲ばかりを聞き続けてるので,そのガイドとするために,ピアニストのイリーナ・メジューエワさんが書いた「ショパンの名曲(講談社現代新書)」を購入。昨年出た本ですが,曲を聴くのがますます楽しみになりそうです。