夏といえば「花火大会」ですが,夕方以降,人ごみの中を出歩くのもすっかり苦手になってしまったので,その代わり,夏休みを利用して,我が家にある,ヘンデルの「王宮の花火の音楽」のCD聴き比べをすることにしました。実は...不要なディスクを処分するのも目的だったのですが,結果的に「どのディスクも捨てるのは惜しい」ということになってしまいました。
この曲ですが,もともとは戦争の終結+平和を祝福する花火大会用の音楽として,国王からの注文でヘンデルが作った曲。国王からは管楽器と打楽器のみでというリクエストだったのですが,ヘンデルの方は本当は弦楽器も入れたかった...ということで,我が家にあった6枚のディスクにもその辺の事情が反映。どれも版が違っている感じ。こうなってくると処分するのも惜しくなりますね。
最初は吹奏楽の指揮者として著名なフレデリック・フェネル指揮クリーブランド管弦楽団の管楽メンバーによる演奏。何というか「言うことなし」という見事な演奏。テラークの録音ということで,時々,ずしっと響きが出てくるのも良いですね。
続いてはホフダン・ヴァルハル指揮カペラ・イストロポリターナによる演奏(弦楽器入り)。6種類のなかではいちばん「おとなしい」感じで,どこか「メサイア」を聞いているような気分になってくる演奏です。NAXOSレーベル最初期に購入したディスクで,モノとしての愛着もあるディスクです。
キングズ・コンソートの方は「オリジナル楽器でオリジナルの編成で演奏しました」という演奏。オーボエ24,ファゴット12,トランペット9,ホルン4...といったとんでもない数が書かれています。ジョージ2世の時代,こういう編成がすぐ実現できたことが驚きですね。演奏の方は,そんなに重苦しい感じはせず,暖かみがあります。
ピノックの方はその後再録音をしているようですが,1984年録音盤は弦楽器入りの標準的な編成(それでも管楽器はかなり多目)。元気良さと威厳とがバランスよく調和していて,6つの中ではいちばん気に入っています。序曲の最初,打楽器のロールが入っているものと入っていないものがありますが,このピノック版の小太鼓のロールがいちばん「はまっている」感じがします。
最後の2枚は,20世紀に入ってからの編曲版。レオポルド・ストコフスキー指揮RCAビクター交響楽団の演奏は,明るく,華やか。花火大会の気分にいちばんぴったりかもしれません。版はよく分かりませんが,ストコフスキー自身による編曲がされているかもしれないですね。最後はマルコム・サージェント指揮ロイヤル・フィルによる「ハーティ版」による演奏。新星堂の1000円シリーズで購入したものです。かつてはこのハーティ版が定番だった時代もあるようですが,サージェントのキャラクターにもよるのか,非常に穏やかでほっこりとした感じ。曲の配列もオリジナルとは違っています。
というわけで,6枚6様の「ストーリー」が感じられ,「思い出」もあったので,処分は断念することにしました。一般的に最初に買ったディスクほど,「捨てられない」感じです。