コロナ禍後変わったことの一つに,親睦会などの飲み会がほぼゼロになり,職場などでの積立金の額が減ったことがあります。というわけで(やや強引なつなげ方ですが),その代替の意味合いも込めて,ショパンのピアノ曲を集めた14枚組ボックスCDを購入しました。これが「大当たり」でした。
購入したのは1980年のショパンコンクールでダン・タイ・ソンに次いで2位だったタチアナ・シェバノワが,1849年製エラール社のピリオド・ピアノで演奏した作品集(「ほぼ全集」だと思います)です。シェバノワさんのお名前は,1980年代当時からずっと記憶に残っていたのですが(金沢に来たこともあったかもしれません),既に10年程前に亡くなられているとのこと。その名前の懐かしさ+寂しさ,ピリオド楽器,ほぼ全集...といった点に惹かれて画面を観ているうちに,何回もお知らせが届くようになり,購入したという次第です。某ショップのポイントを使いたいという気持ちもありました。
CDの収録形態ですが,ショパンの作品をジャンル別にまとめるのではなく,作曲時期順に(1)若い頃,(2)パリ時代,(3)マジョルカ島,ノアン時代,(4)晩年といった感じでまとめられています。
まだ聞いていませんが,ブリュッヘン指揮18世紀 オーケストラとの共演による協奏曲も楽しみです。 |
いちばんのセールスポイントの1849年製のピアノの音色ですが,とても軽く,素朴な印象。シェバノワさんは,じっくり慌てずに演奏しており,普通に演奏していても,常に「憂愁の影」「そこはかとなく甘い香り」が漂います。
通常のジャンル別収録も良いですが,例えば,マズルカやノクターンのような同じタイプの曲が沢山あるジャンルの場合,ずっと聞き続けるのは正直なところ難しさもあります。この年代別収録だと,「その頃のショパン」をまとめたリサイタルを聞くような面白さがあります。それを当時の楽器で聴くということで,ショパンが実際に活躍していた170年ほど前の時代の空気が戻ってくる感じです。
シェバノワさんによるピリオド・ピアノの音を聞きながら感じるのは,ショパン演奏はパワーではないということです。大半の曲については,少人数の聴衆を前に室内で演奏するのが本当の姿なのでは,という思いになります。
というわけで,コロナ禍に戻るのですが,コロナ禍中の今,家の中で聴くのにぴったりの録音だと感じています。
ちなみに,ショパンの作品の「年代別収録」というのは,これまでもいくつか録音がありました。アシュケナージの全集もこの形で,少しづつ録音を積み重ねていたものだったと思います。高橋多佳子さんの「ショパンの旅路」シリーズも同様の構成で,わが家には,たまたまその第2巻がありました。シェバノワさんのセットだと5,6枚目辺りになります。この聴き比べも楽しそうです。