2021年3月20日土曜日

本日は,きれいなチラシにひかれて室生犀星記念館の企画展「美しい本 山口蓬春」へ。犀星つながりのように21美にアンズの木があるのを発見。その後,泉鏡花記念館の企画展も観てみてきました。

本日の午前中は室生犀星記念館に行って,蓬春没後50年「美しい本山口蓬春」という企画展を観てきました。観ようと思ったのは,白い余白たっぷりの中,蝶が2羽飛んでいるチラシがとても奇麗だったから...という単純な理由です。それと晴れていたからです。

ちなみにこんなチラシです。

例によって自転車で出かけました。まず,犀川大橋。この橋は通るたびに撮影したくなります。

橋からは山並みが消えました。犀川の源流付近でしょうか?真ん中に見える山は大門山だと思います。


犀川大橋を渡ると新しい看板を発見。野町広小路の方に登っていく坂です。「瓶割坂」とのことです。

この坂は登らず,雨宝院の方へ。犀星ゆかりのお寺です。

寺の前には,『性に目覚める頃』からの文章が碑になっていました。本を開いた形です。

そして室生犀星記念館に到着。


今回の企画展のテーマとなっている山口蓬春は,大正から昭和に掛けて活躍した日本画家で,晩年の犀星の本の装幀を多数担当しています。実は,初めて聞く名前だったのですが,その絵を見て「この方の装幀だったのか」と思いました。新潮文庫に収録されている『杏っ子』の表紙の杏の絵には見覚えがあったのですが,この作品を含む昭和30年代の8冊の単行本,12巻の作品集の装幀を担当しています。

今回の展示によると,装幀については,ずっと「堅牢さ」や「渋み」を重視していた犀星が,晩年は画家を起用した華やかなものに変わったとのことです。その代表が蓬春のものです。チラシの雰囲気どおり,清澄な鮮烈さと品の良さが合わさったデザインで,「これなら本の売れ行きも良くなるかも」という気がしました。

展示の中では,蓬春の『新日本画の技法』という著作の中の言葉が印象に残りました。写生の極意として次のようなポイントを挙げていました(ざっとメモしたのですが,不正確だと思います)。
観たまま(視覚でとらえたありのまま)
感じたまま(生命に触れる自己感動)
知ったまま(自分の力で発見)
これは感覚で感じ取る,芸術鑑賞全般についても当てはまるポイントですね。

次の写真は杏の実と杏の木のオブジェ(多分,写真撮影OKだと思います)。
壁には犀星の著作がずらっと貼ってあります。上の方が新しい本なので,蓬春のものは上の方に集中していました。

ミュージアムショップにも色々と欲しいものはありましたが...文房具的なものはなかなか使い切れないので,今回は何も買いませんでした。

その代わりに先ほど瓶割坂の登り口で見かけた和菓子屋さんが気になりここで,和菓子を購入。
歴史のありそうな袋です。
買ったのは「さくら餅」。店頭の貼り紙を見て,本日3月20日が「彼岸の中日」だと認識。明日は墓参りに行ってみることにします。

本日は特に予定はなかったので,「泉鏡花記念館でも本の装幀の展示をやっていたかな?」と思い,浅野川大橋方面まで行くことにしました。

その途中,金沢21世紀美術館を通過。結構お客さんが入っていました。美術館の周りに,ピンク色の花が咲いている木があったので撮影。何か札が下がっていたので見てみると...
何とアンズでした。出来過ぎためぐり合わせに感激しました。ちなみにこの絵は,金沢大学附属中学校の生徒が描いたものです。山口蓬春の作品に劣らず,うまそうです。
それにしても杏の花が,桜とそっくりだとは今まで知りませんでした。

せっかくなので,21美の屋外展示を紹介しましょう。空と建物が面白い感じに映っていました。
こちらが本物です。金沢市役所です。雲の方はちょっと不思議な感じですね。

その後,浅野川大橋方面へ。泉鏡花記念館の自転車置き場からは,久保市乙剣宮がよく見えます。
記念館の入口。

現在行っている企画展のポスターです。鏡花本の装幀についての企画展は,一つ前の展示だったようです。せっかくなので,この「山本タカト日本幽玄綺譚」を観てきました。


展示では,鏡花の「薬草取」という作品と岡本綺堂と鏡花のつながりに注目していました。

「薬草取」は,不治の病に冒された鏡花の師尾崎紅葉の平癒を祈って書かれた短編小説ということで,疫病退散への祈りという点では,現在のコロナ禍中の状況と通じる部分があります。チラシは「月の前で少女が祈っている」デザイン。このイメージを持ちつつ,短編を読んでみたいと思います。確か金沢にある医王山が出てくる話だったと思います。

鏡花記念館の向かい久保市神社の入口には,「下新町」について鏡花が書いた文章の碑がありました。「照葉狂言」の一部です。

せっかくなので主計町方面まで行ってみることに。途中「禁煙室」という名前の「たばこの吸える喫茶店」が...あったはずですが...

内装を撤去中でした。お店を閉じることになったが,そのことを惜しんだ大阪の喫茶店が,内装を受け継ぐことになった,といったことが書かれていました。ずっとこの場所にあった喫茶店なので,確かになくなるのは寂しいですね。

ちなみに次の「お店」が引き継ぐようです。
次にも情報が書かれていました。どういう形で移設されるのか,行ってみたい気がします。

主計町です。観光客もちらほらいました。
というコースで金沢市内を一回りしてきました。

帰宅後,もらってきたチラシやパンフレットを確認。

犀星記念館の方では,とても立派なパンフレットを配布していました。入場料分以上の価値がありそうな感じでした。

このチラシの蝶を,昔からどこかで見たことがあると思っていたのですが,展示を見てわかりました。新潮文庫版の室生犀星詩集の表紙でした(全く同じ蝶ではありませんが)。

その他,新潮文庫の犀星作品の表紙はみんな蓬春のものだとわかりました。ちなみに...すべて家人の蔵書で私の方は1冊も読んでいません。これを機に,『杏っ子』あたり読んでみたいのですが,結構厚い本ですね。

こちらは岩波文庫版の『鏡花短編集』
この中に「薬草取」が入っていました。

もう一つ。何となく持ってきた,井上ひさしの文学館である遅筆堂文庫(山形県)のパンフレット。
この中に,井上ひさしが作詞をした,釜石小学校校歌の歌詞が掲載されていました。東日本大震災の時,この校歌の教えが避難の際に生きた,というエピソードを聞いたことがありますが,素晴らしすぎる歌詞です。学校名や地名が全く入らない型破りの校歌ですが,さすがとしか言いようがないですね。

最後の写真は,チラシで作った文庫本用ブックカバー。確かに「美しい本」といった感じになりました。