久しぶりに能舞台の「あの雰囲気」に浸ってきました。
観能の夕べは,入場料1000円で,夏の期間の土曜日夕方に気軽に能と狂言を味わる企画です。私自身,参加するのは2回目です。今回はコロナ対策のため,使える座席は半分。上演前の解説もなかったので,昨年度までとは少し雰囲気は違っていたのですが,丁度よい具合にお客さんが入っていました。
本日観たのは,狂言「長光(ながみつ)」と能「猩々(しょうじょう)」でした。主な出演者は次のとおりでした。
狂言「長光」
すっぱ 炭 哲男
田舎者 清水宗治
目代 能村祐丞
能「猩々」
シテ 広島克栄
ワキ 苗加登久治
「長光」は,他の狂言同様,のんびりと楽しめる大らかなユーモアのある作品。お馴染みのワンパターンの展開と人間味のある朗らかな声を楽しめむのが狂言でしょうか。
「猩々」の方は,一度観てみたいと思っていた作品です。能には,死んだ人の霊が出てくるような,考えてみると気味の悪い話が多いのですが,この「猩々」は,5つに分けられる能のジャンル(神・男・女・狂・鬼)中の「鬼」に該当する作品です。「鬼」といっても,角の生えた怖い鬼ではなく,「やたらと酒に強い酒の精」といった感じの上機嫌の鬼がシテです。
赤い顔,赤い髪,金色の衣装ということで、登場しただけで免疫力アップという感じでした。途中,笛・太鼓類の伴奏に乗って,シテが舞う部分が中心でしたので,一種,バレエ的な能と言えるのかもしれません。
今日の金沢は,雨が降ったりやんだりという感じで,一日中,じとっと煙るような湿気のある暑さにおおわれていましたが,それとは正反対の涼やかな華やかさがありました。華やかな気分とベタベタした感じにならない酔い方が良いなと思いました。そして...解説に書かれていた「猩々は酒の徳を称え,美しい夜空のもと酒盛りに興じます」といった文章を読んでいるうちに,冷酒を飲みながら観てみたいものだと思いました。
今年の「観能の夕べ」は解説がなかったので,本日の公演も1時間以内で終わりました(「夕べ」になる前に終わった感じでした)。これから暑い時期が続くので,ちょっと夕涼みに行くのにぴったりのイベントではと思います。