昨日は石川県立能楽堂で夏季恒例の「観能の夕べ」を観てきました。演目は狂言が「太刀奪(たちばい)」能が「小鍛冶(こかじ)」と刀が主役のような演目2つでした。2週続けて観るのは初めてのことですが,何となく「能楽堂の雰囲気」に馴染んできており,ハマリつつあります。今年は公演時間がやや短く1時間程度になっていることも敷居を低くしている要因の一つの気がします。
公演データは次のとおりです。
公演日時:2020年8月15日(土)17:00~ 石川県立能楽堂
狂言「太刀奪」
太郎冠者 炭光太郎,主:炭哲男,すっぱ:清水宗治
能「小鍛冶」
シテ:渡邊茂人,ワキ:北島公之,ワキツレ:平木豊男,間:能村祐丞
能も狂言も,展開や設定がパターン化されており,いくつか見ているうちに,今回の作品はどのパターンになるのだろう?と分類・比較したくなります。面や衣装もパターン化でき,それぞれに重要な意味があるので,「何を暗示しているのだろう」と解き明かしたくなります。今回の「小鍛冶」は,前半が童子の面で黒い髪,後半が「小飛出(ことびで)」という面で赤い髪。さらに狐の形をしたものが頭の上に付いていました(大変分かりやすい見た目)。というわけで,観た演目ごとに,その面や衣装の情報を表計算ソフトに入力していくと,結構面白いのではと思いました。そのパターン化されている類型的な部分とパターン外れた部分を視覚で探しつつ,ボーっと音に浸る―その辺に心地よさを感じています。
「小鍛冶」のシテの渡辺茂人さんは,石川県立音楽堂の公演でも観たことがあるのですが(「展覧会の絵」だったと思います),狐の雰囲気を表しているのか,動き全体にキレの良さのようなものが感じられ,観ていて爽やかさを感じました。題材そのものも,刀作り職人・宗近の作業を狐の精が助ける(相槌を打つの語源ですね)といった感じのストーリーで(大変雑な説明ですが...),「よい狐だなぁ」という後味の良さが残りました。刀づくりを暗示する部分の鳴物の音の動きも面白く,もしかしたら能の中でも分かりやすい作品なのではと思いました。
今回はサイド席(橋掛かりのあるブロック)から見ていたので,肝心の「宗近と狐の共同作業」の部分がよく見えなかったのですが,その代わり,鳴物と地謡が左右から聞こえる感じで,音の立体感を味わうことができました。
というわけで,夏の観能の夕べ,もう少しハマってみたいと思います。
終演後もまだ明るいですね。美しい空でした。