2020年6月27日土曜日

金沢21世紀美術館 復活。「内藤礼 うつしあう創造」を観てきました。ビーズや水滴を使った独特の繊細な世界は21美の白壁にもぴったり。ゆったりと何回も観たくなるような展覧会でした。

本日,金沢21世紀美術館が復活しました。
美術館の周りに「店」が出るのも久しぶりかも
 早速,「内藤礼 うつしあう創造」「de-sport : 芸術によるスポーツの解体と再構築」を観てきました。まだ色々な制限は残っていますが,21美の白い壁の展示室をめぐるだけでうれしくなりました。 

建物に入るのは先週に続いてですが,お客さんの数はかなり増えていました。入口でサーモグラフィのチェックを受けた後,レアンドロのプールの方へ。展示室に入るのは本当に久しぶりです。


まず「内藤礼 うつしあう創造」へ。この展覧会ですが,絵画でもビデオでも彫刻でもなく,金沢21世紀美術館という「場所」を活かした,展示室全体の雰囲気を内藤礼さんの世界に作り替えてしまうような独特の内容でした。ビーズや水滴を使った独特の繊細な世界は21美の白壁にもぴったり。ゆったりと何回も観たくなるような展覧会でした。

展示室14(プールの奥の丸い部屋)にまず入ると,小さな透明のビーズが天井から吊されていました。それだけなのですが,人の気配に反応するように,少し動き,時々,キラッと光る感じが水滴のように見えます。部屋の中がちょっとクールで詩的な雰囲気に変わっていました。

市民ギャラリー前の光庭には,水を入れた小さな透明のガラス瓶が点在。ただそれだけなのですが,よくよく見ると,かすかに水面が揺れていたりします。その他の展示室も,天井から糸が下がっているだけ,本当にわずかな水滴が30秒ごとに天井から落ちてくるだけ...といったある意味,大変贅沢な空間の使い方をした作品ばかりでした。

水滴が落ちてくる作品については,スタッフの方に説明をしていただけないと気づかないような微妙な世界でした。思わず,見ず知らずの人と一緒になって,本当に水滴が落ちてくるのか見入ってしまいました。「おっ見えた!」という感じで,回りの人と変な一体感を感じながら見てしまいました。

いちばん広い展示室11には,小さな人形(この人形を使うのが内藤さんの目印なのかもしれません)が白いテーブルの上に沢山点在しているような作品がありました。この作品が特に印象的でした。人形同士はしっかり「ソーシャルディスタンス」を取っているのを見て,時節柄,「今の世界を表現しているのかも」とちょっと思ってしまいました。この人形たちですが,見る角度によってその距離感が違って見えました。上から俯瞰したり,真横から見たり...同じものでも見方によって距離感が違うというのも,面白いと思いました。

このように,展示全体として,白っぽいもの,透明なもの,細いもの,小さなもの,繊細なものばかりで,一つの統一感のある「ワールド」を作っているようでした。考えていると,21美自体,白い壁面が特徴です。その白い空間をキャンバスとして,その上に内藤さんが「静かな動き」をほんの少し加えた,そんな展示だと思いました。

唯一の例外は,展示室9と10で使っていた電気コンロです。このコンロのオレンジ色だけが暖色で,展覧会全体の核になっているように思えました。

展示室8の横の光庭を横断するように,白いリボンが2本交差するように掛けてあるのも気に入りました。外の空気の動きに合わせて,リボンが色々な形を作ります。この動きを椅子に座ってしばらく眺めているうちに,「自然との対話」も今回の展示のポインなのだと思いました。展覧会のチラシにも書いてあったとおり,日暮れ時に見ると,きっと違う世界が見られるのでは,と思いました。その点で,「第2タレルの部屋」といった感じのスペースでした。

入場料を当日券で買った場合,2000円とかなり高めでしたので,この際,「友の会」会員(年間3000円)になり,2回ぐらい観た方がお得なのでは,と思いました。「新しい鑑賞様式」(日時指定入場制)の影響で,展示室はとてもゆったりとした感じでしたが,その雰囲気の方がぴったりくる展覧会だと思いました。

その後,de-sportの方も観てきましたが,こちらの方は時間待ちをしないと観られない部屋もあったので,もう一度観に来ようと思います。東京五輪・パラリンピックは1年延期されたのですが,実施するならば,新たな意義を見つけて欲しいものです。スポーツに対する別の見方を考えるには,アートの世界から見たスポーツというのは,参考になるのではと思いました。


3月以降,外出する機会が減り,私にとってアートの世界はすっかり実世界から消えてしまっていました。21美の展覧会を久しぶりに見て,生き返った気分になりました。

長期インスタレーションルームでやっていた,安西剛「ポリー」も楽し気な内容でした。


21美を出た後,先週に続いて白鳥路へ。謎の(?)屋外彫刻が密集してますが,アジサイとセットだと,「けっこういい感じ」になっていました。

こちらの方は梅雨の雰囲気にぴったりですね。