2020年3月21日土曜日

営業を再開した金沢市内の文化施設を1デイパスで一巡り。徳田秋聲記念館で流れていたヴァイオリンの諏訪根自子のSP復刻盤の雰囲気が良かったので,金沢蓄音器館で購入。その他,泉鏡花記念館,鈴木大拙館,能楽美術館へ

新型コロナ・ウィルス感染拡大防止策として,金沢市内の文化施設は,3月上旬は臨時閉館をしていましたが,県内での拡大傾向が落ち着いて来ていることを受け,営業を再開しました。本日は少々風は強かったものの,絶好の行楽日和。まず,徳田秋聲記念館で行われていた企画展「レコオドと私:秋聲の聴いた音楽」を見てきました。


秋聲といえば,「社交ダンス大好き」として知られていますが,その前段階として色々な音楽への関心もありました。今回の企画展は,秋聲と音楽の関係を,色々な作品中の文章で紹介した後,秋聲が収集していたSPレコードコレクションも紹介するという「マルチメディア」な内容でした。
企画展示室の入口。Brunswickという会社名は...
ボウリングのボールでもよく見かけますね。
企画展の展示室に入ると,SPレコード音源らしきヴァイオリン小品が流れていました。これが実に良い雰囲気。そのレトロでロマンティックな(浪漫的という表記の方が良いかも)音は初春の休日の気分にぴったりでした。

秋聲は,SPレコードだけでなく,海外の一流演奏家たちの生演奏も聴いていたようで,その感想を小説のネタとして使っている例がかなりあります。その体験を色々と使い回す感じが,秋聲らしいところでしょうか。ミッシャ・エルマン,レオポルド・ゴドフスキー,フリッツ・クライスラー,ヤッシャ・ハイフェッツなど著名演奏家の名前が続々登場。エフレム・ジンバリストもお気に入りの演奏家だったようです。

所蔵していたSPレコードの現物の中では,ラヴェルの自作自演(指揮)による「ボレロ」が含まれていました。ちなみに,ストコフスキー指揮BBC交響楽団によるベートーヴェンの交響曲第5番も展示されていましたが,このオーケストラ名はNBC交響楽団が正しい気がします。

さて,展示室内で流れていた音源ですが,金沢蓄音器館等所蔵の往年の名ヴァイオリニスト,諏訪根自子のSP盤をコロンビアがCD化した2枚組でした。3月以降,生演奏に飢えていた(?)こともあり,金沢蓄音器館にも行ってみることにしました。例によって,本日も自転車で移動しました。
佃の佃煮の店頭も春の飾りになっていました。

久保市乙剣宮に来ると,何故かほっとします。
 金沢蓄音機館に到着。

建物の中に入ってみると,丁度,SPレコードを解説付きで試聴中。
後半だけ参加したのですが,楽器によって音が違うように,蓄音器の種類によって音の雰囲気が全く違うのがとても面白いところです。特にすごいと思ったのがソニーの元社長の盛田さんが所蔵していた,大型の紙のラッパが付いた,電動式蓄音器です。ステレオの場合,スピーカーを左右に配置することで立体感が出るのですが,この蓄音器の場合,前後に奥行きがあるような音でした。解説の方は,「そこで歌っているような」と言われていましたが,まさにそのとおりで,限りなく楽器の生演奏に近い音源でなと思いました。試聴後は写真撮影OKということで,撮影させていただきました。
結構でかい蓄音器。社長さんの家でないと入らないかも
試聴の最後は,この蓄音器で,クライスラー演奏によるドヴォルザークのユモレスクを全曲聞きました。2月末以降,コンサートにはずっと出かけていないので,久しぶりに「生演奏」に浸ったような気分を味わうことができました。

試聴の後,徳田秋聲館の展示室で流れていた諏訪根自子さんのCDを購入しました。オンラインで購入する手もありましたが,音源を持っている金沢蓄音器館で買うことに意味があると思い(先日,チケットを何枚も払い戻してもらった「お金」もあったので),その場で購入。良い記念になりました。

CDのデザインの方もセーラー服を着た諏訪さんの写真をメインにした,レトロ感あふれる素晴らしいもの。盤面もSPレコードっぽくなっていました。


蓄音器館の包装紙の色合いともぴったり。この包装紙のデザインでブックカバーなど作って欲しいものです。

ちなみに徳田秋聲記念館の展示室では,蓋の部分に小さなスピーカーのついたコンパクトなプレーヤーを使っていました。何とこれと全く同じもの(以下の写真のもの)をたまたま我が家でも持っていました。これもまた不思議な縁です。病室で聞くために買ったものですが,このCDを聞くのに丁度良い感じでした。

このCDについての展示もありました。

このCD以外にも,蓄音器館オリジナルのSP復刻CDシリーズもあります。
1階奥の休憩スペースへ。北國新聞の1面は「自粛解除」。完全な解除というわけでもないとは思いますが,市内には,日本人観光客の方はかなり戻ってきている印象でした。

 窓から表通りを撮影
 建物の入口に居るお馴染みのニッパー犬の置物。

その後,すぐお隣の泉鏡花記念館へ。企画展「鏡花百物語」を見てきました。


鏡花は人間が対抗できないような超自然力を信じており,そのことを「観音力」「鬼人力」と呼んでいたそうです。展示の中に,鏡花は江戸時代の怪異文学の上田秋成の「雨月物語」を高く評価していたと書かれた説明がありましたが,鏡花の存在そのものが,江戸時代の文学者の雰囲気をそのまま受け継いでいるようだと,色々な生原稿を見ながら感じました。

さてせっかく,1デーパスがあったので,少し足を伸ばして,鈴木大拙館と金沢能楽美術館へ。
桜開花準備中の雰囲気が漂う,石川門付近
 鈴木大拙館に到着



晴れた日の大拙館は気持ちが良かったですね。 スタンプコーナーに何気なく書いてあった文章ですが,とても良いことが書いてあったので撮影。

1デイパスで3館回るとクリアファイルをもらえるということで,鈴木大拙館の窓口に出したところ...泉鏡花記念館のファイルをいただきました。小村雪筏装幀の「日本橋」の表紙ですね。

その後,能楽美術館へ。


能楽美術館はコレクション展。展示の中央では,「右近」という能の舞台の雰囲気を衣装と面などで再現していました。春らしい華やかさがあり,これからの季節にぴったりと思いました。少し赤い顔をした能「猩々」の面も飾ってありましたが,これは酒を飲んで上機嫌な状況を表現していたのでしょうか。花見をしながら酔っ払っているムード。こちらも季節の雰囲気にあっていると思いました。
桜かと思ったら桜ではなくアンズでした。金沢21世紀美術館です。
21美の入口付近にはいつもどおり列ができていました。
感染防止策として,ゆったりと並ぶように指示をしているようです。


新型コロナ・ウィルスの方は,まだまだ余談を許さない状況ですが,以上のように金沢市内の方はそれなりに観光客が戻っている感じでした。しばらくの間は,何事も「ほどほど」といった感じで過ごしていきたいと思います。