2019年12月14日土曜日

21美で行われた「夕暮れおしゃべりツアー」に参加。開館15周年記念の「現在地:未来の地図を描くために」(2)の見所や鑑賞ポイントがよく分かる,楽しくてためにる企画でした

本日は夕方から金沢21世紀美術館に出かけ,友の会企画である「夕暮れおしゃべりツァー」に参加してきました。現在行われている開館15周年記念の展示「現在地:未来の地図を描くために(2)」の担当キュレーターの一人である山下さん,黒沢副館長と一緒に展示室を回り,解説を聞きながら作品を観るという企画でした。
そろそろ冬至ということで,「夕暮れ」というよりは「夕闇」ですね。
21美は12月下旬から,開館以来の大々的な改装工事のため,約1ヶ月間休館になります。今回は「しばらく見られなくなるので,最後にじっくり観ようかな」と思い参加してきたのですが,期待以上に面白い内容でした。現代美術の場合,解説を聞くと聞かないとでは,作品に対する印象がかなり変わるということを改めて実感できました。

館内ツァーの前のトークの時,副館長の黒沢さんは,「現代美術は,作品だけを切り離して鑑賞しても面白くない。気になった作品が出てきたら,作家名で関連情報を調べると面白く鑑賞できる」といったことを語っており,なるほどと思いました。このことは,多かれ少なかれ,美術以外の芸術にも言えると思います。作品についての「エピソード」や「情報」を楽しんでいるとも言えるので,あまり頭でっかちになるのも良くないのですが,現代社会でアートを楽しむためには重要なポイントだと私も思います。

その他,作品間のつながり,作家間のつながりを楽しむという要素もあるかもしれません。アーティストの名前とその特徴を覚えることがポイントなのかも,と思いました。ちなみに今回のトークで言及されたアーティストは次のような方々でした。

照屋勇賢,イ・ブル,田中敦子,アナ・メンディエータ,小谷元彦,泉太郎,清水晃,金氏撤平,草間彌生,マチュー・ブリアン,富本賢吉(21美所蔵でいちばん古いのがこの方の作品。1941年の作品です),曽根裕,エル・アナツイ...

館内ツァーでは,展示室1から展示室6までを巡ったのですが,「開館以来15年間,出したかったけれどもなかなか出せなかった作品」が21美としては,異例なほど沢山展示されていました。

今回のねらいは,作品の数だけでなく,「切り口の多彩さ」も見せたいということで,次のような切り口があると,解説を聞きながら感じました。
現代社会への風刺,身体を張って作った作品,ひたすらうるさい作品(会場にいけば分かります),素材にこだわった作品,表現技法にこだわった作品,伝統工芸に新しい視点を与えようとする作品...
解説を聞きながら鑑賞すると,アーティストは面白いことを考えているのだな(考えすぎ,こだわりすぎかも)と実感できます。

展示室の外の長期インスタレーションルームに飾られていた,クリス・バーデン作「メトロポリス」は,高層建築が密集する都市をイメージさせるような模型の間を沢山のミニカーが走り回るといった,作品です。通常は時間を決めて,ミニカーを走らせるのですが,今回は特別に動かしてくれました。大人でも(大人の方が?)じっと見入ってしまいますね。

交流ゾーンに展示されていた,安部泰輔「ざわざわ森」は,現在,21美に展示されているコレクションを古着やはぎれを使って表現し,壁面に貼り付けていくという21美へのオマージュ作品でした。今回のツァーに参加した後だと特に楽しむことができました。美術作品への「愛」のようなものを感じてしまいました。その点で,開館15周年記念にぴったりの展示だと思いました。
この作品全体としても,パトリック・ブラン「緑の橋」
のパロディ&オマージュのようになっています。
この「夕暮れ」企画については,企画展ごとに行っているようなので,都合がつけば,これからも参加してみたいと思います。

PS. 「現在地」展については,映像作品などを中心とした(1)も並行して行われていたのですが,こちらについてのトークは終了済。こちらも参加してみたかったですね。