今回参加しようと思ったのは,私自身,時々連載記事を読んでいたこともあるのですが,朝日新聞金沢総局というのはどういうところなのだろう,という関心もありました。案内記事にあったとおり,会場は大変眺めの良い部屋でした。
香林坊のミスタードーナツからの眺めとも似ていますが,会場は4階だったこともあり,さらにアトリオ~四高記念公園方面がよく見えました。
イベントは,お二人が,それぞれの活動をスライドで紹介した後,気楽な雰囲気で対談するというものでした。会場はそれほど大きくなく,しかもお茶とお菓子付きということで,アットホームな雰囲気でイベントに参加できました。
萩のさんは,東京生まれで2004年に建築家のダンナさんに付いてくる形で,一家で輪島市の三井地区に移住されています。当初は,嫌々暮らしていたそうですが,次第に里山生活の素晴らしさに気づき,その後は,地域の自然や文化を体験する集い「まるやま組」を主宰し,情報発信をされています。ちなみに「まるやま」というのは,三井地区の中の丘の名前とのことです。
里山生活については,私も関心があります。里山地域内で,食料や資源が流通し,それが季節ごとに変化するという,2つのサイクルが巧く機能しているのが面白いなぁと感じました。
金沢生まれの岩本さんは,金沢から離れたくて東京で就職しますが,2004年に金沢に戻り,金沢の魅力を再発見します,その魅力を伝えたいという思いが「乙女の金沢」や「春ららら市」など地域に根ざした作り手や店を紹介するイベントにつながっています。
2006年に発行されたこの本。我が家にもあります。 その後,改訂版が出て「赤い色」に変わっていますね。 |
その後の2人の対談では,お二人の活動がさらに具体的に紹介されていきました。共通するのは,東京経由で石川・金沢の魅力を見いだした後,魅力を他の人と共有したい・伝えたいという思いにつながり,さらにデザイナー的な視点で編集し,発信を行っている点です。
石川・金沢には,”東京では失われた独自のもの”がずっと残っていたということが,東京から見ると「魅力」として捉えられたと言えるのですが,逆に言うと,地元にずっと残っていた人には,魅力として感じられなかったとも言えます。再発見には,物事を常に新鮮なものとして感じられる,デザイナー的な視線も必要なのだと思います。それと,「年齢の力」も大きいと思います。ある程度,年齢を重ねると,感じ方が変わってきます。意味なく,流行に従うのではなく,自然に近いものの良さが感じられるようになるのではいか,と思います。
岩本さんは,「小さい頃,福梅(正月に食べる餡子の入った金沢のお菓子)は嫌いだったが,最近,好きになってきた」と語っていましたが...実は私も同様です。幼少時の「刷り込み」が蘇ってくる「懐かしさ」も理由だと思うのですが,”どこでも食べられるもの”ではない,”その土地ならではのもの”を,しっかり味わって食べるというのは,良いものだなと感じるようになってきているのだと思います。
考えてみると今回は「餅・饅頭」関係の話題が以外に多かったですね。「ささげもち」「氷室饅頭」に加え,荻のさんが持ってこられた,特製の饅頭1個ずつが参加者にプレゼントされました。
帰宅後食べてみました |
コーヒーと一緒にというのも,意外に金沢的でしょうか |
繭のような形をしており,コクーンと書かれていましたが,ローカル+グローバルな商品は,大変魅力的なものになるのでは,と改めて実感しました。この饅頭,加賀丸いもと能登の大納言のコラボということで,「加賀・能登の出会い」がテーマとのことでしでた。特に皮の丸いもの味は「さっぱり」としているけれども食感は「ねっとり」としているのがクセになりそうです。春ららら市で出品されるとのことでしたので,来月見にいってみようかなと思います。
「里山暮らし」にしても「金沢暮らし」にしても,それぞれの土地ならではの因襲にまみれた保守性が残っている中,とりあえず,うまく折り合いを付けられるかどうかが「魅力と感じられるかどうか」のポイントなのだと思います。
どの土地も多かれ少なかれ同様だと思いますが,特に金沢に住む人は,自分の街が最高と思っているようなところがあります。その誇りが,他の都市にない独自性を残してきた一因になっているのだと思います。そういう魅力を,デザイナー的な視点と柔らかな語り口で楽し気に伝えてくれるお二人の活動にはこれからも注目したいと思いました。
こちらは岩本さんのプレゼントのハガキ(?)とシール 他の都市に住む知人に送ってみたくなるデザインですね。 |