まずは,石川門周辺。昼間から宴会モードでした。本日は,ずっと曇りだったので,外で宴会するには絶好だったかもしれませんね。
続いて金沢21世紀美術館へ。「池田学展」を観てきました。
池田学さんの名前を聞くのは初めてだったのですが,「ペンだけで描いた壮大な世界」が話題になっているようで,朝日新聞の4月2日号には,次のような感じの記事が掲載されていました。
今までに制作されたほぼ全ての作品約120点を集めての個展ということになります。
21美では,これまでいろいろなタイプの展覧会を行ってきました。デザイン系,建築系の展示の場合,結構,理屈っぽいというか,文字を読んで考えないといけないような部分があるので,個人的には,やはり,今回のような純粋に色や線を楽しむ絵画作品の方が好きです。「池田学展」の場合は,見ればすごい,と誰もが実感できるので,大きな話題になることは間違いないでしょう。
各作品にぐっと近づいて見てみると,どの作品も1mmに満たないぐらいの細い線によって描かれていることが分かります。その精密な線にものすごく引き込まれます。ただし...実は最近老眼が進んでおり,眼鏡を外さないと細かい部分は判別できませんでした。まわりを見ると,結構,同様の人が多いようで,安心(?)しました。
いちばんの目玉となっているのは,上の新聞記事でも大きく取り上げていた,日本初公開の大作「誕生」です。ウィスコンシン州のチェゼン美術館で公開制作しながら,3年間かけて完成した作品とうことで,気の遠くなるような根気強さです。
ただし...この作品については,あまり近づいて見られないような形になっていました。恐らく,この作品は,美術史に残るような作品になるかもしれません。別格の扱いになっていました。細かい線をクローズアップで見てみたいな...と思っていたら,お隣の人は何と,双眼鏡で見ていました。それほど距離は遠くないのですが,本当にクローズアップで見られたのでしょうか?次回は,私もこの手で行ってみようかと思います。
この「誕生」という作品ですが,2011年の東日本大震災で壊滅的な被害をもたらした津波の被害とそこからの再生を描いています。池田さん自身の「波に魅かれる」という言葉が書かれていたのですが(池田さんの「言葉」が展示室間の壁面に書かれていました),そのことが津波とシンクロしてしまったことになります。
驚くのは,2008年に描かれた作品のタイトルが「予兆」となっていた点です。これにも大きな波が描かれており,津波を予測しているようにも読めてしまうタイトルです。
池田さんの作品で面白いのは,一種,絵巻物のような感じで,部分ごとに色々な要素が詰め込まれている点です。1枚の絵の中に,時間の流れが入っていたり,隠しメッセージが込められていたり,謎解き的な面白さもあります。「誕生」についても,部分ごとに,何が描かれているかの解説したシートがありました。これと照合しながら楽しむというのも面白そうです。ブリューゲルの絵に通じるような世界かもしれません。
この日,池田学さんが来館するトークショーが行われることになっており,とても聞いてみたかったのですが,ちょうどその時間帯に別の用事があったので,参加できませんでした。
その代わり,展示室の真ん中で放映していた池田さんのインタビュービデオ(13分ほど)をじっくり見てみました。これも面白い内容でした。見ていて次のようなことが分かりました。
- 1日に10cm四方ぐらいしか進まないこともある
- 退色しないようにアクリルインクを使っている
- 小さい作品のついては構図を決めて書いているが,大きな作品については漠然としたテーマを考えるだけで,描きながら構想を考えている
- 宮崎駿のアニメに似ていると言われる。子どもの頃から見ていたので,価値観が反映しているのかもしれない。
- 自然物だけを描いても自然には勝てないので,必ず人工物を描き加えている。そのことで色々な遊びが入る。
- モチーフとしての飛行機が好き。作品の中に入って行くような感じが良い。
- サインを入れている。それを見る人に探させる楽しみがある。
間違っているかもしれませんが,こんな感じのことを語っていました。
そして今回の展示では,グッズがいつもより沢山ありました。ついつい買いたくなったのですが,今日のところは何も買わずにおきました。この展覧会は7月まで行っているので,もう少し人の少ない時間帯にでも,再度観に行ってみようと思います。
さて21美の桜ですが,色々な種類を取り揃えていることが分かりました。色々考えて植えているようですね。
金沢市役所側の桜 |
この桜を内側から見ると,屏風のような感じに見えます。これも良いですね |
能楽美術館側の八重桜です。 |
本多町側の桜は,しだれ桜 でしょうか? |
ちなみに美術館向かいの石浦神社です。どこか草間彌生化していました。 |
ちなみに,ふらふら歩いていると,知っている人・グループに3回も遭遇しました。金沢は狭い,というだけのことですが,やはりイベントの人気が広がっていることもあると思います。それぞれに「予想外に晴れて,暑いぐらいですね」「お久しぶりです」「昼間からビールですか?」など,のどかな会話をしました。大人から子供まで,花見のついでに楽しめる良いイベントですね。何となく,明日も雨は降らなさそうなので,もう一度出かけてみたい(何か買ってしまうかもしれません)ものです。
おだやかな春の午後,こういったイベントや展覧会を眺めながら,アーティストというのは,平和な時代だからこそ活躍できるのだなと改めて思いました。その一方,池田学さんの「誕生」のように,「平和でなかったこと」が生んだ作品というのもあります。幸福感を求めるのが人間ですが,それだけではうまく行かないのもアーティストなのかもしれないですね。
さて,最後は金沢駅近くのホテル日航金沢裏の神社の桜です。高層ビルとの対比が面白いなぁといつも感じる「好きな場所」の一つです。