2017年3月20日月曜日

福井市美術館で展覧会「ウィリアム・モリス:原風景でたどるデザインの軌跡」を見てきました。英国の自然と伝統を反映した実用的な美しさ。こんなデザインに囲まれて暮らしてみたいものです。

三連休の最終日は,「久しぶりに少し車で遠出してみるか」と思い立ち,福井市美術館で行われている展覧会「ウィリアム・モリス:原風景でたどるデザインの軌跡」を見てきました。「遠出」というほどには遠くはなかったのですが,北陸自動車道を走るのは...本当に久しぶりのことです。

この美術館に来たのは初めてでしたが,次のような独特の形の建物で,とても明るい雰囲気でした。



この展覧会は,英国のデザイナー,詩人,社会主義運動家(他にも色々な肩書がありそうですが),ウィリアム・モリスのデザイナーとしての側面に注目したもので,彼の人生に沿う形で,壁紙や本の装丁などのデザイン約100点が展示されていました。個人的には本の装丁に特に関心があるので,一度見てみたいと思っていた作家です。

今回は,モリスの作品に加え,写真家の織作峰子さん(石川県出身の方ですね)による,モリスにちなんだ場所の写真や文章,モリスの人生を紹介するスライドショー(とても美しく,分かりやすいスライド)なども交え,6つの部分(本になぞらえて「章」と呼んでいました)に分けて,モリスのデザイン作品を紹介していました。モリスのデザインだけだと,やはり単調になるので,とてもうまく変化が付けられていると思いました。

モリスは,1834年生まれで,幼少の頃から,森,川など自然に囲まれて裕福な家庭に暮らしています。この英国の自然(花とか動物とか)がルーツの1つになっています。もう1つは,中世の芸術です。こういったことが,モリスのデザインの普遍性につながっている気がしました。

モリスが住んでいた,邸宅の様子をスライドショー(Googlesストリートビューのような感じで)で再現するような展示もありました。「役に立たないものや,美しいと思わないものを家に置いてはならない」というモリスの言葉がチラシに書いてありましたが,確かにそのとおりで,統一された美的センスと簡潔さにあふれた家でした。現代風に言い換えると,コンマリさんの「ときめく魔法」にあふれた家なのでは,と思いました。格子の入った丸窓から,外の自然を眺めるというのは...自宅でもやってみたいものです。
この美術館の回りも自然に囲まれており,良い雰囲気でした。
ただし,新婚の頃に使っていた別荘,ケルムコット・マナーというのは,実はドロドロとした状況だったようです。解説には「地上の楽園」と書かれていましたが,モリスの絵の師匠のロセッティとモリスの妻との三角関係がそのまま持ち込まれた部屋の配置になっているのが,とんでもないと思いました。

モリスの作品の技術については,インディゴ抜染というのが重要なようです。デザインのモチーフとしては,植物や動物が中心で,同じようなパターンの繰り返しがリズムを生み,シンメトリカルな配置が落ち着きを生んでいました。どのデザインが良いかは...好みの問題でしょう。

モリスは出版にも関わり,ケルムコット・プレスという名前で,53点66冊の本を出版しています。それぞれ平均300冊程度しか印刷されておらず,1冊1冊が美術品のような形になっているようです。その特徴は,「美しい活字」と「美しい紙」にあります。木の葉で包まれたような重厚で装飾的なデザインは,中世の彩色写本の研究成果によるものとのことです。

思想的には社会主義運動,アーツ・アンド・クラフト運動に関わって行くことになります。この辺については,今回はそれほど紹介されていませんでしたが,「喜びと誇りを持ってモノ作りに励んでいた時代」として中世を捉えている点が,とても新鮮に感じました。

というような感じで,せっかくの機会だったので1時間30分ほどかけてじっくりとウィリアム・モリスの世界に浸ってきました。

展覧会を見た後は,グッズコーナーへ。もともと実用的なデザイン,ということでどのグッズも欲しくなるものばかりでしたが,「実際に使うかどうか?」ということを考えて,キーホールダーを買うことにしました。本当に偶然なのですが,つい2,3日前にキーホールダーが壊れてしまったばかりだったので,良いタイミングでした。
 
その他,(これは実用性とは少し違うのですが)絵ハガキの紙の感じと色合いがとても良い感じだったので,「いちご泥棒」など2枚購入してしまいました。

美術館の中では,コースターを作るワークショップもやっていました。

さて,この日ですが金沢から福井まで全部高速を使うと「高い」ので,「行き」は美川から福井まで,「帰り」は福井北から小松まで高速を使いました。

「帰り」は女形谷(おながたに)PAに寄ってみました。
 「当店人気No.1」とか「秘密のケンミンShowで紹介されました」などと書かれているとついつい欲しくなります。福井県は油揚げの消費量がとても多いそうです。個人的にも好きなので,この「谷口屋の油揚げ」というのを買ってしまいました。
さらに福井県の名物といえば,ソースカツ丼ということで,せっかくなので食べてみました。見た目通りの素朴な味でした。
その後,尼御前SAにも寄ってみました。こちらは,以前来た時よりも,大変きれいになっていました。ファミリーマートまで入っていました。

というようなわけで,福井までのミニ旅行を楽しむことができました。心残りは...山がはっきり見えなかったことでしょうか。下の写真のような感じで,かすんでいて,山は鮮明には見えませんでした。