2016年3月20日日曜日

石川近代文学館で本谷有希子著『異類婚姻譚(抄)』の朗読会を聞いた後,片町・香林坊付近で本と文房具を購入。横安江町では,よこっちょ・ポッケマート

本日は石川近代文学館で行われた朗読会を聞いてきました。朗読されたのは,石川県出身の作家,本谷有希子さんが芥川賞を受賞した『異類婚姻譚』でした。
この作品については,芥川賞受賞が決まった後,雑誌『群像』で最初に発表されたものを図書館で読んでみて,面白い味わいの話だと思いました。朗読で耳から聞くとどうなるだろうと思い参加することにしました。

中編小説といっても,朗読するにはかなり長い作品ですので,今回は一部カットした形で朗読されました。朗読は,石川近代文学館での朗読会(今回で101回目なのだそうです)に過去何回か登場している横川正枝さんでした。横川さんは県内で俳優として活躍されているそうですが,本谷さんの作品に登場する主役の女性「サンちゃん」(結婚4年目の30代専業主婦)にぴったりの雰囲気の方で,小説の雰囲気が生き生きと伝わってきました。
背景に白い布を配したり,照明や音楽を入れたり,100回分のノウハウが生きていました。
ストーリーについては,読んでいない人もいらっしゃると思うのであまり詳しくは書きませんが,かなり不思議な雰囲気を持つ旦那とサンちゃん夫婦の話です。「夫婦がだんだん似てくる」という点がポイントで,ちょっとコミカルで不気味なテイストも持っています。いつ,どこの話が分からず,旦那やサンちゃンの名前もこれだけしか分からないので,抽象的なのだけども,結構平凡でリアルな日常生活が具体的に描かれているので,読者は感情移入しやいと思います。身近であると同時に普遍性もある設定といえます。

ストーリーの中心である「夫婦が似てくる」点については,サンちゃんの知人から聞いた「似ている夫婦」のエピソードが最初の方に出てきたリ,サンちゃん夫婦の間に色々な「兆候」が出てきたリ,いくつかエピソードを積み重ねた後,最後のクライマックスにつながっていきます。「~譚」というタイトルどおり,一気にファンタジーっぽくなる点が面白い点ですが,好みが分かれる部分かもしれません。

作品で描かれている,夫婦の関係については「あるある」という感じのものがいくつかありました。例えば,旦那は,最初,家に帰ったらテレビのワイドショーばかり見ているのですが,途中からは急に揚げ物作りに凝り出したり,予測不能です。意味なく何かに熱中するというのは,ありがちだと思いました。

「夫婦が似てくる」点については,サンちゃんの弟の恋人が言う「蛇と蛇がお互いの尻尾を食べ合い,最後に一体化してしまう」という結婚観(?)が象徴的に使われています。夫婦が「似てくる」状況を描く時に,「顔がゆるんで,パーツが動く」という表現を使っていたのがコミカルでしたが,妙にリアルに感じてしまいました。基本的に「一体化して自分が無くなってしまうかどうか」のせめぎ合いが現代の夫婦のあり方なのかもしれません。

この作品については,このとおり,リアルなお話というよりは,ファンタジー的な要素もあるので,中途半端に映像化するよりは,今回のように朗読をして,イメージ膨らませるのがいちばん相応しい気がしました。横川さんは,声色を使い分けたり,椅子から立ち上がって,動作を交えて朗読されていたので,演劇を観るのと近い雰囲気もありました。

小説の場合,やはり「読むのがめんどう」という部分もあるので,今回のような朗読の会というのが,個人的にはとても好きです。配布資料として人物相関図もついていたのですが,これも分かりやすかったですね。
石川近代文学館では,しばらく前には米澤穂信さんの『満願』の朗読も取り上げてくれましたが,読書離れ対策には,話題の作品の朗読会がいちばん良いのでは,という気がしました。
さてこの日ですが,朗読会に先立ち,横安江町で行っていた「よこっちょ・ポッケマート」を見てきました。
この門前市的な雰囲気が結構好きです(ただし,何も買いませんでしたが)。今回は,一箱古本市もやっていたはずなのですが....ちょっと場所が分かりませんでした。

朗読会の後は,うつのみやで本を1冊,ダイソーとロフトで文房具を購入しました。

うつのみやで買ったのは,東雅夫編『日本幻想文学大系:幻視の系譜』(ちくま文庫)です。
室生犀星の「蜜のあわれ」が映画化されたので,これが収録された文庫を買おうと思っていたのですが,ちくま文庫のこのアンソロジーに含まれていることが分かったので,「せっかくなので色々な作家の怪しげな作品が集まったものの方が面白いかも」と方針を変えました。

ちなみに泉鏡花の「化鳥」も入っています。中島敦「文字禍」という作品も入っているのですが,これは,少し前にNHK-FM「きらクラ」のBGM選手権で使われていたテキストだったことを思い出し,読んでみたくなったものです。1000円以上する高い文庫本でしたが,結構楽しめそうな気がします。

ダイソーでは,ホワイトボードノートを購入。
少し前にNHKの朝のニュース番組でホワイトボードグッズの特集をやっていたのに刺激されて,ついつい買ってしまいました。特にどう使うか考えていないのですが...。100円だとついつい買ってしまうのが,曲者です。

ロフトで買ったのは,フリクションイレーサー(100円)です。
材質的にはまさに消しゴムです。フリクションを使った読書法を編み出せないか(大げさですが),考えているところなのですが,これだと広い面を一気に消せるので,色々と使い道があるのではないか,と思います。

最後にロフトの入っている片町きららの1階の「green bar」というカフェに初めて入ってみました。
カフェで本を読むのが好きなので,30分ほどコーヒーを飲みながら,じっくりと読書をしました(先ほどの本とは別の持参した本ですが)。アメリカンコーヒーを注文してしまったのは後悔しているのですが(やはりもっと濃いのが良かった),結構ゆったりと過ごせる場所でした。

というわけで,連休の中日の午後は,結構,文学的に過ごしていました。