2015年12月1日火曜日

【音盤獺祭】中古CDで思い出のショルティ指揮シカゴ交響楽団の「英雄」を購入。これは本当にショルティか?

恒例の北陸音盤祭のDM(300円割引券付)が届いたので,この前の週末にJR金沢駅もてなしドーム地下に行ってきました。今回は時間がなかったので,ざっと眺めて,パッとひらめいた2枚を直感的に購入してきました。

1枚はゲオルク・ショルティ指揮シカゴ交響楽団によるベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」のCDです。実は私が中学生の頃,自分自身の意志で初めて買ったLPレコードがショルティ指揮シカゴ交響楽団による「英雄」でした。

定期テストの点数が良かったので,コンパクトなレコードプレーヤーを買ってもらうことになりました。当時我が家には,観音開き(!)の家具調のプレーヤーがあったのですが,ターンテーブルが17cmしかなかったので,それを機会に30cmのターンテーブルのものを買ってもらえることになりました。今から思うとなかなかの優れもので,カセットデッキもFMチューナーもセパレート型スピーカーもついた,便利なオール・イン・ワン・タイプでした。

このプレーヤー用に最初に買ったのがショルティの「英雄」だったのです。ジャケットは次のとおりです。



この録音は当時の最新録音で,ショルティのベートーヴェン交響曲全集の中の1枚でした。いわゆる「楽譜に忠実」ということが話題になっていた演奏で,第1楽章の呈示部の繰り返しを行い,コーダで「ドーミ・ドーソ・ドミソ・ソー」とトランペットが吹いた後,メロディが消えてしまう,という演奏でした。このことをどこまで意識していたか不明なのですが,当時,NHK-FMのクラシック音楽番組で金子建志さんがこの演奏を引き合いに出していたことは覚えています。

この「最新の演奏」ですが,演奏全体に漂う,バシッとした剛毅な感じが大変好きでした。特に印象に残っていたのが第4楽章のコーダで出てくる,ティンパニの豪快でカラッとした素晴らしい音です。その後,「英雄」については,色々な演奏を聞きましたが,私の記憶の中では,このショルティ盤の音が最高です。

現在はLPレコードを聞ける状況にないので,ここ数年(25年は聞いていない気がします),この演奏を聞いてないのですが,今回,音盤祭で発見し,直感的に購入してしまいました。次がジャケットの写真です。


そして,家に戻るまでの車の中で聞いてみたのですが...「これは違う」とすぐに分かりました。悪くはないのですが,どうもスカッと竹を割ったような感じではありません。第1楽章の繰り返しとトランペットの「消滅」は同じように演奏されていましたが,音の感じが違います。第4楽章最後のティンパニの音は,豪快ではあるけれどももっと丸い感じでした。

で,よくよく録音データを見てみると,何と1989年となっていました。ショルティ&シカゴのベートーヴェンといえば1970年代のものしかないと思っていたのが盲点でした。再録音を買ってしまっていたようです。この頃はショルティがシカゴ交響楽団の音楽監督を円満に退任する直前ということで,両者の関係もかなり変わっていたのかもしれません。

考えてみると,ジャケットの写真が全然違うのですが,ショルティの場合,写真の方も全然老けていない(昔から老けていた?)のが盲点でした。

この2つの演奏ですが,調べてみると演奏時間も全然違います。各楽章の演奏時間は次のとおりです。

1973年録音  19:28 / 17:32 / 5:50 / 12:]10
1989年録音  17:33 / 13:18 / 5:31 / 11:14
 
歳をとってかなり速くなっているのがショルティらしいところですが,そうなってくると,1973年盤はどれだけテンポが遅かったのか気になるところです。繰り返しを行っていることもありますが,合計で54分もかかっています。

というわけで,ますます,1970年代録音の「英雄」を聞きたくなったのでした。いわゆる,これが「刷り込み」の効果なのかもしれません。

ちなみにもう一枚購入したのは,ブルーノ・ワルター指揮コロンビア交響楽団によるベートーヴェンの交響曲第4番と第5番の組み合わせのCDでした。こちらも「久しぶりに聞きたくなった」からです。これについてはまた別途紹介しましょう。