2014年10月26日日曜日

石川県立美術館で「工芸王国の実力!魅惑の120選」を鑑賞後,紅葉しつつある広坂周辺を散策

このところ金沢はずっと安定した晴天が続いています。今日も自転車で出かけるのに丁度良い気候だったので,本日が会期の最終日だった「工芸王国の実力!:魅惑の120選」という展覧会を石川県立美術館で見てきました。

県立美術館前の街路樹も紅葉し始めていました。



今回の展覧会は,石川県立美術館の秋季企画展で,北陸新幹線開業記念プレイベントとのことでした。この美術館は,もともと石川県ゆかりの美術工芸品を収蔵・展示するというのがコンセプトですので,そのもっとも得意とする分野の展覧会ということになります。


展示室は3室だけでしたが,その中で明治期から現代にかけての漆芸,陶器,象嵌,染織といった石川工芸の名品を集めており,非常に充実感がありました。

工芸品には,絵画のように具体的に何かを描いたものと,抽象的な模様をデザインしたものがあります。名品と言われるものには,そのデザインにリズムに工夫があります。チラシの真ん中に写っている松田権六の「蓬莱之棚」という漆芸作品がやはり素晴らしいと思ったのですが,そこに描かれた鶴には,すっと見る人を引き付けるようなリズムとバランスの良さがありました。

そして,各工芸品それぞれに素材が違うので,その多様性が楽しめます。その質感はやはり写真では伝わらず,実物を見ないと感じられないものです。リズムと質感ということで,基本的に音楽と共通する要素が多いのかもしれません。

今回印象に残ったのは,1930~40年代の戦時中に作られた作品がかなり多かったことです。この時代,各作者がどういう気持ちで作品を作っていたのか興味深いところです。戦時中なので戦勝祈願で作った作品なのかもしれませんが,その時代の持つ緊張感のようなものが作品に反映されている気もします。

文学や映画のように言語を使った芸術の場合,戦時中に作られた作品がそのまま残ることは難しい面もありますが,工芸作品のような抽象的な作品だからこそ,今まで残っているのかなという気もしました。昭和前期の作品に,ややレトロでモダンな感じのデザインの作品があったのも面白いと思いました。

そして,よくよく考えると,今回見たような作品が全部,石川県出身者や関係者によって作られていることに改めて感動しました。ネット社会になり,あらゆるモノが消耗品的に扱われている時代,今後もこういう工芸作品を支えることができるのか?支えていくには,作者だけではなく,鑑賞者やスポンサーも含めた広い裾野が必要ではないか?そんなことを考えました。

石川県立美術館は,金沢21世紀美術館に比べると地味な存在ですが,日常生活の気分を変えてゆったりと過ごすにはとても良い場所です。その静かな空気に浸っていると,「以前こういうことがあったなぁ」とか,ちょっと甘美な記憶がよみがえってくる。そういう場所です。


今日は午前中に鑑賞した後,広坂方面を一回りしてきました。

美術館のすぐ隣にあった樹木。よく見ると,なかなか芸術的な枝ぶりでした。





広坂交差点に向かって降りていきました。




広坂通りの街路樹も秋らしくなってきました。


緑地にはミルオトキクカタチの案内がありました。石川県立音楽堂でこのオブジェに関連した演奏会を行うようですね。



いしかわ四高記念公園の隣の街路樹も赤くなりつつありました。この辺では,かなり写真を撮影をしている人がいました。



 

というわけで,大変気持ちよく,過ごしやすい一日でした。