2014年10月5日日曜日

昨日は映画「舞妓はレディ」を観てきました。近年珍しい和製ミュージカル映画。その後,米澤穂信著『満願』の朗読会へ

本日もいろいろと街中ではイベントをやっていたのですが,天気が悪かった上,少々風邪気味になってしまったので(今日は結構涼しかったせいかも),一日じっと家の中で過ごしていました。 

昨日はその分,あれこれ出かけてきました。まず,朝9時台から金沢フォーラスで周防正行監督による映画「舞妓はレディ」を観てきました。既に公開されて1か月ぐらい経つのですが,「周防監督の作品なら観なければ」「まだやっていた」ということで,ようやく観てきました。

ストーリーは,鹿児島と津軽の強い訛りを持つ若い女性が,舞妓に憧れ京都に出てきて,色々な障害を乗り越えて念願を叶える,というものです。タイトルから分かるとおり,ミュージカル「マイ・フェア・レディ」のパロディです。オリジナルでは,方言を矯正する言語学者のヒギンズ教授とピカリング大佐が「方言を矯正できるかどうか」の賭けをすることろから始まります。「舞妓...」の展開もそのとりです。

「スペインの雨」のパロディのような曲が出てきたり(京都の盆地に雨が降る...みたいな歌詞),アスコット競馬場でうっかり”馬脚”を現してしまうシーンに相当する場があったり,教授の研究室がヒギンズ教授の研究室のような雰囲気だったり,「マイ・フェア・レディ」を観たことのある人へのサービスのようなシーンがいくつかありました。

登場人物は主役の新人,上白石萌音と言語学の教授役の長谷川博巳の脇を,周防作品でお馴染みの役者さんたちが固めるという形でした。その他にも,小津安二郎監督作品を思わせるようなショットなど,周防監督らしさが随所にあり,「さすが周防監督」という,しっかりと計算され,丁寧に作りこまれた作品になっていました。

ただし,どうしてもパロディという印象が残る上,ミュージカル映画お決まりの「突然歌いだす唐突感」がかなり強烈なので,ちょっと引いてしまうところもありました。日本舞踊を踊っていた人たがちが,急に洋舞になったり(草刈さんについては,いきなりドレスに早変わりするシーンまでありました),かなり「マツケンサンバII」に近いテイストのあるミュージカルとなっていました。

ドラマの展開についても,主役の上白石さんの教授に対する恋愛感情が,かなり淡い感じで,個人的には,やや物足りない気がしました。「Shall We ダンス?」の時のような,ドラマティックなでスリリングな展開もなかったので,やはり「Shall We ダンス?」には劣るかなと感じました。

良いなと思ったのは,画面構成です。舞台になっている下八軒という茶屋街に橋を渡って入るシーンが何回かあるのですが,大体,真正面からシンメトリーになるような映し方をすることが多く,コメディにも関わらず,堂々とした風格を感じました。最後の仮装パーティーのようなエンディングは,往年のMGMのミュージカル映画のラストのような感じでした。これも左右対称で,主役を中心に,全員がワーッと前に出てくる感じは,「ザッツ・エンターテインメント」でした。

*以下,ネタバレになりますが*

この場では,竹中直人+渡辺えりによる往年のラテン・コンビが「Shall We ダンス」の時の衣装+カツラで登場したり,富司純子さんが「マイ・フェアレディ」の衣装で登場したり,「わかるひとにはわかる」楽しいエンディングとなっていました。

ドラマの展開としては,考えてみると,NHKの朝の連続ドラマ的だったので,ミュージカルシーンを外して,連続ドラマとして,「故郷のおじいさん,おばあさん」なども含め,「おら舞妓さんになりたい」という感じで「リアル」に描いていっても面白い題材かなと思いました。朝ドラで思い出しましたが,
同じ「舞妓さんモノ」として宮藤官九郎脚本の「舞妓Haaaan!!!」という作品もあるので(こちらは金沢でロケをしていますね),ちょっと見比べてみたくなりました。

その後,JR金沢駅方面へ。カウントダウンが始まっていました。


続いて香林坊方面に移動。東急ホテルの名前が,エクセルホテルから,ただの東急ホテルに変更になっていました。

続いて,しいのき迎賓館方面へ。ミュージアムウィークの幟などが出ていました。


その後,石川近代文学館に行き,ミュージアムウィークの企画の一環として行っていた,米澤穂信著『満願』の朗読会を聞いてきました。



米澤さんは,金沢大学出身で,今年,山本周五郎賞を受賞しています。直木賞についても,この『満願』という作品で候補になりました。

この作品自体は読んでいなかったですが,「読むより聞く方が楽」「無料」ということで,参加してきました。この『満願』というのは短編集で,今回はその中に収録されている表題作と同じ『満願』の抜粋が地元の劇団の俳優の茶谷幸也さんによって読まれました(ちなみに茶谷さんが所属する団体は,「演劇アンサンブルかなざわ」というどこかで聞いたことのあるような名前なのですが,オーケストラ・アンサンブル金沢よりも歴史はあるはずです)。時間は約1時間でした。

やや人数は少な目でしたが,かつての「四高」の教室ということで落ち着いたよい雰囲気でした。



まず,この茶谷さんの声が素晴らしく,落ち着いた雰囲気で文学的な気分に浸らせてくれました。この『満願』は,サスペンンスものなのですが,聞いた感じかなり地味な感じで,法律を学ぶ主役の学生とそれを支援する下宿の若い奥さんとの関係が中心で,後半はこの2人が絡む裁判が出てくるあたり,ちょっと泉鏡花の「滝の白糸」を思わせる部分があると思いました(ただし,主人公が奥さんを弁護する設定なので,正反対ですが)。大学生と少し年上の女性の間の関係を描いている点で,夏目漱石の小説あたりに出てきそうな雰囲気もあると思いました。

犯罪のカギになるような,小道具がしっかり描かれている点は,やはりサスペンンスだと思いますが,文体などもコンパクトにきっちりまとまった感じなので,「石川近代文学館」にふさわしい,文学的な気分を持った作品だと思いました。

米澤さんは金沢大学で学んだことをプロフィールに書かないようにしているようですが,もしかしたら,そのうちにこの近代文学館にコーナーが出来るような作家になって欲しいなと思います。

というわけで,この短編集の他の作品も機会を見て読んでみたいと思います。

今後もイベントが色々とあります。

せっかくなので,金沢21世紀美術館にも立ち寄ってみると,今週もパフォーマンスをやっていました。シューベルトの「死と乙女」が聞こえてきたので,音源の方に行ってみると,光庭の中でダンスをしていました。



銀粉をつけた男性が,ロボットのように歩いていました。


金沢21世紀美術館は開館10年ということで,フラッグがあちこちに出ていました。


美術館の隣の金沢市役所は,「檻にはいったよう」。この表現は,米澤穂信さんが『ボトルネック』の中で,金沢市役所を描写するために使った表現ですが,正真正銘の檻に入っているようでした。