2013年6月22日土曜日

国宝薬師寺展へ。展示も良かったけれども,お坊さんは話が上手過ぎ。ついつい写経セットまで買ってしまいました。

北國新聞社主催塔の主催で石川県立美術館で行われている「国宝薬師寺展」の会期が明日までということなので朝から出かけてきました。

北國新聞によると「連日大賑わい」ということなのですが...本当にそのとおりでした。朝9:30の開館と同時に行ったのですが,既に列ができていました。

展覧会入口。この裏でお坊さんが曼荼羅の説明中でした。
今回の展覧会は薬師寺東塔の大修理にあわせての企画で,「聖観世音菩薩立像」,日本最古の彩色画「吉祥天女像」など国宝を数点含んでいるのが見所です。「吉祥天女」の方はかなり小さいもので,書かれている布の質感まではよく分からなかったのですが,暗~い展示室に1つだけライトアップするという展示方法がなかなか斬新で良い雰囲気を出していました。「聖観世音菩薩立像」の方は実に美しい像でした。こちらは前からも後ろからも間近から見ることができました。

何よりも良かったのが薬師寺のお坊さんのお話でした。まず,展覧会の入口に入ってすぐのところにあった曼荼羅の説明をした後,この「聖観世音菩薩立像」の解説をして頂きました。「横から見ると結構メタボでしょ」とか「「ボサッとしている」という言葉の語源も菩薩なんですよ」とか「この立像は後ろから見ても美しい。私たちも後ろ指を指されないような生き方をしましょう」とか,大変楽しい解説でした。

その後,美術館のホールの方で別のお坊さんがお話をしてくださるということで,こちらも聞くことにしました。

これはお話の後です。黒板を使って漢字の由来なども説明。

薬師寺のお坊さんのお話は面白いというのは,私が中学生の時に奈良に修学旅行に行った頃から言われていましたので,伝統として定着しているようです。今回登場した大谷徹奘師のお話もお見事でした。

まず声が素晴らしい!マイクなしでビシッとした声がホール全体に届いていました。徹奘師は高校生の頃から30年以上薬師寺にいらっしゃるとのことですが,今いちばん脂が乗っているという感じの切れ味の良いトークでした。

「最初にしっかり挨拶をしましょう。おはようございます」という最初の部分からお坊さんのペースでした。一般に「寺=坊さん=死」という連想があるが,薬師寺は死とは無縁の寺で,「心の学校」であること,「お経」というのは人生のガイドブックであること...大変分かりやすい話が続きました。次々と「良い言葉」が出てくるので,しっかりメモしながら話を聞いてしまいました。以下はその抜粋です。

続いて薬師寺が本家と言っても良い「般若心経」の話になりました。このお経は三蔵法師が日本に伝えたものですが,薬師寺はその直系なのだそうです。このお経は,「観自在菩薩」という言葉で始まりますが,これは一般に観音様と言われている菩薩のことです。「観自在」と言われたり「観世音」と呼ばれたりしているのですがが,その意味の違いが説明されました。

「観世音」は,「世の中の音をよく観る」という外に注意を向けることであり,「観自在」の方は,「自分の在り方をよく観る」という自分の命に目を向けることです。徹奘師自身の修行時代の苦労話と重ね合せ,「苦しいことであっても,自分で選んだことである。他人を指さすことばかりしていては何もならない。迷う前に覚悟をしなさい」といった,迫力のある言葉が出てきました。

そして,「かつて,家の中で覚悟をする場所が「仏壇」だったけれども,段々となくなってしまい...同じぐらいの大きさのテレビに変わってしまった。テレビをはじめ,色々な情報攻撃にさらされている現代社会では迷う一方で覚悟をする場所がなくなってしまった。「心の勉強」が必要」ということです。なるほどと思いました。

その「心の勉強」の方法として,(1)座禅,(2)念仏,(3)写経,(4)話を聞く,の4種類があり,特に薬師寺では,写経を広めているとのことでした。「写経をしている時間は,外側から内側に向かう時間。薬師寺の写経は紙を重ねてなぞるだけ。鉛筆でもいいんです。」ということで,最後は写経のすすめのお話になりました。

いちばん最後に薬師寺の名物管長と呼ばれた高田好胤師の「かたよらない心,こだわらない心,とらわれない心...」という言葉を皆で声を出して読み上げて30分ぴったりでお話が終わりました。

あまりにもお話が上手かったので,帰り際に「一度やってみるかな」と2000円を払って写経セットを購入してしまいました。書いて薬師寺に送ると,納めてくれるそうです。

お経に加え,著書も売れていました。見事な「実演販売」でした。
終わってみると「入場料の半分以上は薬師寺のお坊さんへのお布施?」という感じになってしまいましたが,たっぷりと楽しめた展覧会でした。

その後,美術館を出て,広坂を下りました。
朝降っていた雨が上がり,新緑がさらに美しくなっていました。
21世紀美術館を横目に見て,バスに乗りました。

 
「まちバス」で武蔵が辻まで行きました。100円でした。
バスの中にも薬師寺展のポスターが。「ちょっと金沢まで。」は北陸新幹線PRのキャッチコピーです。
その後は金沢市内で食事と買い物をしました。そして,ついつい気分が良くなって,変なものを買ってしまいました。無印良品で歯ブラシ立て,うつのみやで「大人の鉛筆(タッチペン付き)」というのを購入しました。組み合わせるとちょうどよい感じでした。


これで写経してみようかなと思います(先日,銀座で買った8Bの鉛筆を使うか迷うところですが)。

金沢駅の地下のもてなしドーム下では中古CD市をやっていたので眺めてみました。フランチェスカッティのヴァイオリン,ブルーノ・ワルター指揮によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲,オイストラフのヴァイオリン,オーマンディ指揮によるシベリウスのヴァイオリン協奏曲を組み合わせた輸入盤CDを380円で売っていたのでついつい購入してしまいました。

今日は薬師寺のお坊さんの話を聞いて,結構元気が出ました。話が上手過ぎて,「乗せられたかな?」というところもありましたが,悪くはないと思います。この元気を維持できるように,早速,「鉛筆で写経」をしてみようかと思っています。

写経セットです。高田好胤師の言葉が書かれていました。
 
紙を重ねて般若心経をなぞるだけです。手本は取っておけるので別の紙で繰り返し使えそうです。