正月休み中は,ほとんど音楽についての文章を読まずに過ごしていたのですが,久しぶりにあれこれ読んでみたくなり,今日は午後から,昨年末に買ってあったレコード芸術編「吉田秀和:音楽を心の友と」を読んでみました。
ONTOMO MOOKということで,「レコード芸術」の過去の特集記事と追悼記事を組み合わせ,それにいくつか新たな文章を加えただけ(1500円にしては結構薄い本でした)という内容だったのですが,最近,「レコード芸術」をほとんど読んでこなかったこともあり,音楽評論家の白石美雪さんによるインタビュー記事など大変興味深く読むことができました。
1945年以前の吉田さんの若い時代のエピソードからは,世の中全体の空気が伝わってきました。中原中也などの詩人との交流を通じて,「「勤めないで好きなことをしていても,成り立つ生活はある」ということを学んだ」という言葉は,この時代の東京帝国大学の卒業生ならではかもしれませんが,この自由さにはうらやましさを感じます。
音楽批評のあり方についても率直な言葉が書かれていました。白石さんが批評を書く際に「自分にそれを書く資格があるのか,ということを常に問う必要があると思う」と語ったのに対し,吉田さんは「何を今さら。あなたも今まで仕事をして来て既に社会に責任を持っているはず。常に成長しなくてならないのは苦痛だが,それはモノを書く人間の責任」と書いた上で,「どこに自分が立っているかという立ち位置を分かるように書いたうえで,「私の文章を読みたい人」が読めば良いと思う。あれもこれも盛り込んで客観的に批評することを重視しなくて良い。おもしろい批評を書くことが大事」といったことを語っています(勝手に要約しています)。
私自身,音楽についてWeb上で文章を書いているので(音楽評論家という立場ではありませんが),なるほどと思いました。吉田さんの批評は,文学作品の域に達していますが,自分の立ち位置を踏まえ,社会的責任を感じつつも,自由に,読者にとっての面白さを意識して書く,というあり方は非常に参考になりました。
さて,吉田さんが長年NHK-FMで担当をしていた「名曲のたのしみ」ですが,昨年末についに最終回になりました。
http://cgi.nhk.or.jp/navi/detail/index.cgi?id=12f26820121230
最終回スペシャルは,ほんの少ししか聞けなかったのですが,そこで放送された曲目リストを眺めながら,吉田さんを偲びたいと思います。今思いついたのですが,時間があれば,これらの演奏を集めたプレイリストを作ってみたいものです。
http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2012-12-30&ch=07&eid=87427
# このサイトの情報も消えるかもしれないので,コピー&ペーストしておきます。
2012年12月30日(日) 午後0:15~午後5:00(285分) NHK-FM
名曲のたのしみ 最終回スペシャル 大林奈津子
「ソナタ ロ短調 L.449(K.27)」
D.スカルラッティ作曲
(4分55秒)
(ピアノ)エミール・ギレリス
<BBC BBCL 4015-2>
「ソナタ ニ長調 L.424(K.33)」
D.スカルラッティ作曲
(2分50秒)
(ピアノ)ウラディーミル・ホロヴィッツ
<ソニー SRCR 2663>
「ソナタ ロ短調 L.33(K.87)」
D.スカルラッティ作曲
(4分31秒)
(ピアノ)クララ・ハスキル
<WESTMINSTER MVCZ-10065>
「ワルツ 嬰ハ短調 作品64-2」 ショパン作曲
(3分40秒)
(ピアノ)アルトゥール・ルービンシュタイン
<RCA R32C-3013>
「ワルツ 嬰ハ短調 作品64-2」 ショパン作曲
(3分09秒)
(ピアノ)ウラディーミル・ホロヴィッツ
<SONY SRCR-9705/6>
「マズルカ 嬰ヘ短調 作品59-3」 ショパン作曲
(2分58秒)
(ピアノ)マルタ・アルゲリッチ
<EMI TOCE-55372/73>
「マズルカ ニ長調 作品33-2」 ショパン作曲
(2分18秒)
(ピアノ)マウリツィオ・ポリーニ
<ドイツ・グラモフォン UCCG-1427>
「マズルカ 嬰ハ短調 作品63-3」 ショパン作曲
(1分55秒)
(ピアノ)スヴャトスラフ・リヒテル
<メロディア MELLCD 1001626>
「交響曲 第2番 ニ長調 作品73から 第3楽章」
ブラームス作曲
(5分41秒)
(管弦楽)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)カール・ベーム
<ドイツ・グラモフォン POCG-2676/7>
「歌劇“フィガロの結婚”序曲」 モーツァルト作曲
(3分55秒)
(管弦楽)ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)ゲオルク・ショルティ
<LONDON POCL-5072>
「バイオリン協奏曲 ニ長調 作品61から 第2楽章」
ベートーベン作曲
(8分45秒)
(バイオリン)ヤッシャ・ハイフェッツ
(管弦楽)ボストン交響楽団
(指揮)シャルル・ミュンシュ
<RCA BVCC-37051>
「“謝肉祭”作品9から“オイゼビウス”“フロレスタン”
“コケット”」シューマン作曲
(3分52秒)
(ピアノ)アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ
<UNIVERSAL MUSIC/PHILIPS
UCCP-9237/38>
「歌劇“ピータイ・グライムズ”海の間奏曲から
第3曲“月の光”」ブリテン作曲
(4分23秒)
(管弦楽)コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団
(指揮)ベンジャミン・ブリテン
<LONDON F25L-20407>
「ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466から 第2楽章」
モーツァルト作曲
(9分13秒)
(管弦楽)室内管弦楽団
(ピアノ、指揮)エドウィン・フィッシャー
<東芝EMI TOCE-9406>
「ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 作品106
“ハンマークラヴィール”から 第1楽章」
ベートーベン作曲
(9分56秒)
(ピアノ)ソロモン
<UNIVERSAL MUSIC/PHILIPS
UCCP-9283/84>
「“子供のための歌のアルバム”作品79から
“小さいふくろう”“てんとう虫”“時は春”」
シューマン作曲
(4分42秒)
(ソプラノ)エリー・アメリング
(ピアノ)イェルク・デムス
<BMG VICTOR BVCD-5011>
「オーボエ・ソナタ ニ長調 作品166から 第1楽章」
サン・サーンス作曲
(3分03秒)
(オーボエ)ハンスイェルク・シェレンベルガー
(ピアノ)ロルフ・ケーネン
<DENON 33CO-3088>
「無伴奏バイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調
BWV1004から“アルマンド”」
バッハ作曲
(5分13秒)
(バイオリン)ヒラリー・ハーン
<ソニー SRCR 1994>
「楽興の時 作品16-1 変ロ短調」 ラフマニノフ作曲
(6分29秒)
(ピアノ)デヤン・ラツィック
<CHANNEL CLASSICS CCS SA26308>
「弦楽四重奏曲 ニ長調 作品76-5から 第2楽章」
ハイドン作曲
(6分21秒)
(弦楽四重奏)アルバン・ベルク弦楽四重奏団
<EMI TOCE-55070>
「歌曲集“詩人の恋”作品48 第1~第6曲」 シューマン作曲
(8分12秒)
(バリトン)ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ
(ピアノ)ウラディーミル・ホロヴィッツ
<ソニー CRCR 8285/6>
「楽劇“トリスタンとイゾルデ”から“イゾルデの愛の死”」
ワーグナー作曲
(7分09秒)
(ソプラノ)キルステン・フラグスタート
(管弦楽)フィルハーモニア管弦楽団
(指揮)ウィルヘルム・フルトヴェングラー
<EMI CE25-5821~24>
「トッカータ ホ短調 BWV 914」 バッハ作曲
(8分37秒)
(ピアノ)グレン・グールド
<CBS/SONY 46DC 5279~80>
「ディアベルリ変奏曲 作品120から
第23、第24、第25変奏」
ベートーベン作曲
(4分43秒)
(ピアノ)アレクサンドル・ロマノフスキー
<DECCA UCCD-1325>
「ディヴェルティメント 変ロ長調 K.287から
第4楽章“アダージョ”」
モーツァルト作曲
(7分13秒)
(管弦楽)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)ヘルベルト・フォン・カラヤン
<ドイツ・グラモフォン F32G 20264>
「ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595から
第2楽章」
モーツァルト作曲
(8分17秒)
(管弦楽)イギリス室内管弦楽団
(ピアノ、指揮)マレー・ペライア
<CBS/SONY CSCR 8430/3>
「バイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 作品24“春”
第1楽章の一部」
ベートーベン作曲
(0分45秒)
(バイオリン)ジノ・フランチェスカッティ
(ピアノ)ロベール・カサドシュ
<ソニー SICC 1524/6>