こういう講演会に参加して良い点は,読書するよりは短時間でエッセンスをつかむことが出来る点です。 この「現代会議」でも,姜尚中さんの「悩む力」に書かれている内容がより明確に伝わってきた気がします。
というわけで,今日(10月20日)は, 金沢工業大学学園祭で行われた「現代文明の源流を旅する:世界を変えた書物より」(竺覚暁×橋本麻里)という講演会を聞いてきました。このサブタイトルにある「世界を変えた書物」の部分ですが,今年の4月に金沢21世紀美術館で行っていた「世界を変えた書物展」 と関連があります。
科学技術史の名著の初版本をずらりと揃えて,無料で展示したこの展覧会に感銘を受けた美術ライターの橋本麻里さんが,この展覧会の企画を担当した竺先生にその内容についての話を伺うという内容でした。 私自身,橋本さん同様に「すごい」と思ったので,聞きに行くことにしました。
前半はこの展覧会の基となった,金沢大学ライブラリーセンター所蔵「工学の曙」文庫に収録されている図書についての竺さんによる解説でした。橋本さんが聞き手になる形で,古代ギリシャのプラトンの時代からアインシュタインぐらいまでの科学史のダイジェストを書籍のスライドを交えて知ることができました。
後半は,「知とその記録」の意味に関する橋本さんの考えをスライドを交えて紹介していくものでした。橋本さんは,日本美術を主な領域とするライターですが,知を載せるメディアの移り変わりの話や,電子化が進みつつある本のこれからなど,私自身,非常に興味のあるテーマについて,美しいスライドで見せてくれました。
まず,「知る」という言葉が「白」という色と関係しているという話が面白かったですね。ぼんやりとした暗闇から白いものが鮮やかに浮かび上がってくるのが「知」のイメージと言えます。なるほど,と思いました。
人間の「知への欲求」は,根本的なものであり,「知の記録」である「工学の曙」文庫のような 書物に学生たちが接することは,「知の末端」に自分がいることを考えさせてくれる。その点で意義があるというようなことをおっしゃられていました。
今後,特に名著と呼ばれる書籍については,著作権が切れているのでどんどん電子化されWebに公開されていくことになると思いますが,3次元的なモノとしての本の価値は,まだまだ大きいと私も思います。展示した場合,モノと画像では迫力が違いますね。
ただし,今後,Web上でのコミュニケーションによって科学技術が進歩していくようになるとまだ状況が変わってくるのかもしれません。そういう点では,本だけでは歴史を表現できない時代がどんどん近付いているとも言えます。時代を象徴する時に,新聞の見出しを使ったり,テレビのニュース映像を使ったりしますが,そういったものに変わって行くのかもしれません。
今回のトークは,特に竺先生の声がやや聞き取りにくかったのですが,豊富なスライドのお陰で,大変よく分かりました。改めて,このコレクションはすごいなと感じました。
会場の教室。ライトがややまぶしかったですね。 |