2012年7月8日日曜日

100分de名著「パンセ」を見て目からウロコが落ちました。

NHKのEテレの「100分de名著」という番組を録画してあったのを観てみました。25分×4回で特定の名著を紹介するという番組で,6月はパスカルの「パンセ」でした。名前だけは聞いたことのある本ですが(そして,「人間は考える葦である」という言葉で有名です),内容は知らなかったので,じっくりと見てみることにしました。これが,非常に面白い内容でした。

解説は鹿島茂さんで,4回目だけは生物学者の福岡紳一さんがゲスト出演しました。

「パンセ」自体,しっかり構築された体系的な本ではなく,「考えられたもの(Pensee)」の断片が死後に整理されたものなので,現代でいう,ツイッターやブログ感覚の文章が沢山集まった本と言えます。番組では,人生相談的な質問にパスカルならどう答える?という形で進んで行きました。すべて「パンセ」の中の引用で回答していたのですが,その回答が,ぴったりきました。

「私たちがどんな状態にいても,自然は私たちを不幸にする。私たちの願望が幸福な状態というものを心の中に描き出して見せるからだ」
「真実を伝えると,たいていは伝える人にとって不利に働く」
「人間の最大の卑しさは名声の追求にある。しかし,それが人間の卓越さの最も大きな印でもある」

とか,いろいろありました。その中でいちばんすごいなと思ったのが,「人間は休んでいると不安になる。それから目をそらすために労働をする」というものでした。この「何かから逃れるため」という部分を正確に言うと「死」ということになり,「死を考えないように気晴らしをすることが人生である」ということになります。

この辺はかなり,言い回しが原典とは変わっていると思いますが,「死について考える→不安になる→気晴らし→また死について考える→気晴らし....」という連鎖が人生ということになります。考えることは不幸の素であるけれども,それでも考え続けられるところに人間の偉さがあるというのを聞いては,「そういうかもしれない」と納得しました。

今回,テキストを買わずに見ていたのですが,本物も読んでみたくなり,思い切って「パンセ」を買ってしまいました(文庫本で1000円以上しました。こんな高い文庫本を買ったのは初めてかも)。結構厚い本なので(特に後半はキリスト教の知識がないと難しそう),一気に読めないと思いますが,パラパラと拾い読みをしていこうと思います。