内容はタイトルどおりで,明治時代以降の日本人画家・彫刻家による肖像作品の名品94点が集められた,大変見応えのあるものでした。
今「集められた」と書いたのですが,石川県立美術館以外の国内美術館所蔵の作品が多いのも(東京国立近代美術館からの作品が多かったのは,館長が交替した力も大きいでしょうか)特徴でした。石川県立美術館の企画展は自館所蔵作品を中心とした展示が多かったのですが,今回はいつもとは一味違う,新鮮味を感じました。もちろん高光一也,鴨居玲,宮本三郎といった石川県ゆかりの「外せない画家」の作品もしっかりと入っていました。ただし,展覧会のコンセプトに合う形で作品が集められており,展覧会全体としてのイメージに統一感のようなものを感じました。日本画と洋画と彫刻が混在しているのも良いなと思いました。
展示は次の4つの章に分かれていました。
- 芸術を極める
- 歴史に求める人間の姿
- 市井の人間像
- 親しき人をみつめる眼
アーティストがアーティスト自身を描いた作品,歴史の一部を切り取ったような作品,無名の人たち,家族などを近い距離感で描いた作品...「顔,顔,顔...」といった感じで壮観でした。
気に入った作品は次のような作品でした。
- 鏑木清方「一葉」(樋口一葉を描いた日本画)
- 上村松園「夏の美人図」(蚊帳美人図の構図で描かれた,本歌取りのような作品)
- 川端龍子「越後(山本五十六元帥)」(大きく,威厳を感じさせる作品)
- 萩原守衛「文覚」(劇画を立体化したような迫力)
- 小倉遊亀「舞妓」(凛とした初々しさとシンプルさに惹かれました)
- 小磯良平「着物の女」(品格が一ランク高い感じの人物画)
- 硲伊之助「黄八丈のI令嬢」(黄色の衣服とくっきりとした表情が美しい)
- 高光一也「立秋」(戦後間もない頃だけれども,どこか優雅な空気感)
- 宮本三郎「南方従軍素描集」(素晴らしいデッサン力)...
図録を見ているうちに,「マットな感じの手触りが良いなぁ」と感じ,購入してしまいました。次のような感じです。
コロナ禍の中,あまり混み過ぎていない美術館で観た展覧会を図録で振り返るというのも,なかなか良い時間の過ごし方なのでは,と思っています。