2019年10月16日水曜日

#21美 #シマ缶とーく 第4回「美術館のコレクション」。島敦彦館長と21美のレジストラー/アシスタント・キュレーターの野中祐美子さんの対談でコレクションの貸出・借用についてのお話が中心。聞いているうちに不思議とアートって自由なのだなという気分にさせてくれるトーク

金沢21世紀美術館で今年度から始まった「島館長と語るシマ缶とーく」の第4回「美術館のコレクション」に参加してきました。今回は,島敦彦館長と21美のレジストラー/アシスタント・キュレーターの野中祐美子さんの対談形式で,美術館所蔵のコレクションの貸出・借用についてのお話が中心でした。

まず,日本の国立美術館では,3つの館でセザンヌの作品を所蔵しているという話題からスタート。セザンヌについては,「西洋美術史の到達点」「日本の近代絵画への影響」「キュビズムなどの現代絵画への影響」など色々な観点からの評価があるため,各館で所蔵しているとのこと。結局,各館の収集コンセプトの反映ということになりますね。

続いて,現在,21美で行われている開館15周年記念の「現在地」という展覧会の話へ。この展覧会では,21美で所蔵しているコレクションをなるべく沢山,しっかりと見せようというのが狙いで,そこから,塩田千春,小谷元彦,村上隆,奈良良智といった現代の人気アーティストの作品のお話になっていきました。21美だけでなく,日本の色々な美術館で所蔵しているこの方々の作品が画像を交えて紹介された後,野中さんの担当で,21美所蔵の村上隆「シーブリーズ」をロシアに貸し出したときの苦労話が写真を交えて紹介されました。

この作品,数年前,21美で展示されていた記憶があります。原爆の爆発時の光を想起させるような,直視できないぐらいの明るい照明が印象的な作品でした。電気系統が複雑で,しかも1990年代前半の作品ということで大変な苦労をされたことがお話から伝わってきました。

最後は恒例の質疑応答コーナー。次のようなお話が印象に残りました。
  • 21美では,「1室1作品」で展示されるインスタレーション作品を所蔵しているが,そういう作品については,展示方法を示すインストラクションを作るのも美術館職員の仕事
  • 美術作品の貸出料は,公共の美術館の場合,実費を除くと無償のことが多い。お互いにギブ&テイクの世界。
  • 購入後価格が上がることを狙った投資目的でのコレクション収集は,公的な美術館ではない。
  • 近年,世界的に美術品市場では価格の高騰が進んでいる。そのため,どの美術館でも,高額の作品をコレクションにしていくには,コレクターに買ってもらった後,その作品の寄贈を受けるというやり方しかないような状況になっている。
  • 悪く言うと将来「ガラクタ」になってしまう作品もあるのでは?という質問に対し,あり得る話だが,購入時の価値付けを伝えていけば,大半の作品は大丈夫だろうという回答。ただし,かつては輝いて見ていていた作品がそうでなくなることもある。その一方,この30年ほどで,色々な作品について,再評価が起こっているとのことです。
  • 美術については従来は欧米中心だったが,現在は世界各地に分散している。21美はコレクション収集についても日本の中ではもっとも先端的な動きをしている
このシリーズには何回か参加していますが,島館長の柔らかな雰囲気がとても良い雰囲気を出していますめ。アートというのは自由を目指すものなのだな,と感じさせてくれます。現代美術については,結構理屈っぽい側面があり,言葉であれこれと説明や補足が必要な部分も多いのですが,21美の収集方針である「新しい価値観を示すもの」ということと併せて考えると,どこに「新しさがあるのか or 新しさがあったのか」を感じることが作品を鑑賞するポイントなのではと思いました。

次回は少し先になりそうですが,また参加したいと思います。