2019年8月2日金曜日

この前の日曜日,話題の映画 #ニューヨーク公共図書館 を #シネモンド で鑑賞。余分な説明なしに映像と対話だけで図書館の多彩な活動を生き生きと伝える3時間超のドキュメンタリー。#NYPL が知を媒介に人と人をつなぐ場になっていることを実感

この前の日曜日,香林坊の東急スクエアのシネモンドで,話題の映画「ニューヨーク公立図書館」を観てきました。まず,上映時間が3時間30分近くという異例の長さだったのが特徴ですが(一度,休憩が入りました),映画の内容の方も異例でした。


ニューヨークにある,有名公共図書館の活動を紹介するドキュメンタリー作品という情報は事前に持っていたのですが,余分な説明や字幕などは皆無。実際の映像と対話だけで,ただただ活動を紹介していくという徹底ぶりでした。はじめのうちは,「これは一体何をしているのだろう?」「この人たちは何者?」という部分もあり,戸惑いましたが,何回か同じ人や場所が出てくるので,段々と,「これらすべてが図書館の活動なのだ」ということが重層的に伝わって来ました。

有名な学者によるトークショー,ピアノや室内楽の演奏会,就職活動のセミナー,アメリカの歴史についての講座,読書会...これらがそれぞれじっくりと紹介されます。それにに加え,図書の貸出・返却,レファレンス質問といった,一般的な図書館サービスもしっかりと行っています。さらには資料のデジタル化作業,バックヤードでの裏方の仕事などもきっちりと撮影されています。

そして所々で,館長を中心とした幹部によるミーティングの場面が入ってきます。この部分が特に印象的でした。そこで取り上げられているのは,予算獲得のことであったり,コレクションの構築の方針であったり,浮浪者対策であったり,恐らく,日本の図書館にも共通するようなテーマです。

#「ニューヨーク公共図書館」ということで,運営の財源は,ニューヨーク市からの予算と寄付金などの財源とが混在しているようでした。ニューヨーク市の意向を重視している点をはじめ,「ステークホルダーのため」という意識が徹底しているのも印象的でした。

日本の図書館と違うのは,このミーティングの場面を中心に,迫力のある言葉のやり取りが延々と続く点です。皆さん本当によくしゃべります。しかし,登場する市民や図書館員の主張はそれぞれ大変明快で,しっかりと議論が成り立っています。意見が違うのは当たり前,それを交換し合うのも当然。「図書館は民主主義社会の基盤だ」といった言葉をよく聞きますが,そのよい実例になっていると感じました。恐らく,このことはアメリカ社会及びアメリカで行われている長年の教育の反映なのだと思います。

この図書館が,ニューヨーク市民の「知的情報のプラットフォーム」になっていると同時に,「知的コミュニケーションの場」になっていることも実感できました。図書館という場は,一般的には「人と本をつなぐ場」と言われていますが,この図書館の場合,「知を媒介として,人と人をつなぐ場」になっています。もちろん,紙の本が出てくる場面も沢山あるのですが,それよりも印象的なのは,この図書館を舞台にコミュニケーションを取る人の多さです。知的な側面から観た「ニューヨークの縮図」的な場所と言えると思いました。

気になるのは,これだけ多くの活動をどれだけの期間で行っているのか?ということです。それと,登場している図書館員がどういう役職なのかということも気になります。そういうこともあって,パンフレットも購入してみました。
このパンフレットで良かったのは,各場面の説明が最初から順に書かれていた点です。「STORY」という見出しになっていましたが,これを観ると,映画の内容を思い出せるだけでなく,「こういう役職の人がしゃべっていたのか」ということが分かります。
最初の場面にいきなり登場するのが,生物学者のリチャード・ドーキンス。


会話が非常に多い,3時間以上の作品ということで,観ていて疲れる作品であることは確かですが,アメリカの図書館の底力のようなものを鮮やかに伝えてくれる作品となっていました。シネモンドでは,来週も上映していますので,特にアメリカの図書館活動に関心のある方は是非ご覧ください。
上映時間はシネモンドのサイトでご確認ください。料金も特別料金です。