この美術館に行こうと思ったのは,約1年前に石川県立美術館で観た石崎光瑶関連の展覧会で存在を知ったことと(光瑶の出身地が福光です)金沢から近いということです(美術館のWebサイトには「金沢大学から30分」という面白い表記がありました。)。
というわけで,本当にそんなに近い?ということを試すため,山側環状道路から石川県道27号に入り,富山県に向かうことにしました。実際,それぐらいの時間で往復できたのですが...本日は暑すぎました。美術館で作品を観ている間は,非常に快適でしたが,車に戻ると恐らく40度以上で,車内に放置しておいたアイスのはずのコーヒーがぬるめのホット・コーヒーに変貌していました。それと,例によって道に迷ってしまい(想定済ですが,カーナビなしなので),体力だけでなく精神力の方も消耗してしまいました。その辺のあたふた感も含めご紹介しましょう。
県道27号線については,戸室新保埋立場までなら,粗大ゴミを持って行くために行ったことはありますが,その先は...多分行ったことはありません。30年ぐらい前,金沢大学の裏の道から富山県の利賀村方面まで行ったはあるのですが,その時とは道路が全く違っていました。多分と書いたのはそのためです。30年前に比べると素晴らしい道路(普通の道路なのですが)になっていました。
この道路をまっすぐ行けば,そのうち「福光美術館はこちら」という案内が出てくるだろう...と期待していたのですが,結局案内表示はなかったので,とりあえず道路の突き当たりにあった,JR福光駅まで行くことにしました。
棟方志功の街ということで,棟方にちなんだオブジェもありました。 |
駅の駐車場がよく分からなかったので,駅前のスーパーに留めさせてもらい,駅にあったチラシ類で美術館の場所を確認してみました。
駅まで来なくても,途中,適当な場所で左折していれば,もっと簡単に美術館に行けたことが分かりました(上の地図でいうと福光プールあたりに美術館があるはずなのですが,なぜか書かれていませんでした)。
せっかくなのでこのスーパーに入って,軽食を購入(金沢に戻ってから昼食を食べるつもりだったので)。
美術館の方は,前述のとおり福光出身の日本画家,石崎光瑶の作品を常設展示しているのですが,それに加えて,福光に疎開した後,数年間この地で活動を行っていた棟方志功の作品を展示しています。全国的には,棟方志功の知名度が高いので,恐らく,こちらを目当てに来られる方の方が多いと思います。
この日も常設展に加え「棟方志功の福光時代展:信仰と美の出会い」という企画展を行っていたので,こちらを観てきました。企画展用の展示室は2つに分かれており,棟方志功の作品が6つの章に分けて展示されていました。
朝9時から開館というのは珍しいかも。 |
浄土真宗の信仰が厚かった方ということで,仏教を題材とした作品が多かったのですが,そこに描かれた人物にはユーモラスな表情があったり,ちょっと艶っぽい雰囲気があったり,独特の棟方志功風の味にあふれています。
絵だけでなく,素朴さのある文字と一緒に書かれた作品も多く,「絵ハガキ」作品の元祖のようなところがあるなぁと思いました。
こういった表現の中に,常に大らかさと勢いが感じられます。じっくりと考えて書いたというよりは,書道パフォーマンスのように一気に書かれたのではと思わせるライブ感が漂っています。しかし,効果を狙っているというよりは,自分の思うがままに素直に書いたらこうなった,という純粋さのようなものが感じられます。その辺が魅力だと思います。
技法的には,「裏彩色(うらさいしき)」という手法が面白いと思いました。版画作品に色を付ける際,棟方志功の場合,版画の裏から絵の具を染みこませるという方法を取っています。淡く色がつく感じで,独特の素朴さが出ていると思いました。
石崎光瑶の作品の方は常設展示室に飾ってありました。こちらの方は昨年,石川県立美術館で観た大作がずらっと並んでおり壮観でした。どれも観た記憶がしっかりと残っていたので,思わず「お久しぶり」と言いたくなる気分でした。
光瑶の作品の中には絵の具を油絵のように厚く塗った「雪」のような作品があったり,熱帯のスコールを描いた「燦雨(さんう)」のような作品があったり,伝統的な日本画の技巧を極めた上で,オリジナリティを追求しているようなところがあるのが素晴らしいと思います。そして,どの作品も非常に完成度が高いのが素晴らしいと思います。
作品の解説文は作品の下には書かれておらず,手に取って読む リーフレットになっていました。この形の方が良いと思います。 |
記念にスタンプを押したのですが,きれいになり過ぎて, 初めから印刷されているようになってしまいました |
女性のまなざしに惹かれて購入したのですが,家に帰ってよくよく見てみると,谷崎潤一郎の「鍵」の装幀用とのことでした。独特の個性を持った方で,一目見れば棟方志功の作品と分かる作風なので,装幀などの世界でも活躍されていたようですね。
石崎光瑶のクリアファイルは昨年既に購入していたので,今回は何も買わずにおきました。
さて帰りですが,来る途中に道の駅福光というのがあったので,そちらに寄ってから帰ることにしました。前述のとおり車の中がものすごい温度になっていたので,冷たい飲み物を飲まずにはいられなかったということもあります。
この道の駅ですが,非常に充実していました。お土産物だけでなく,レストランもあったし,野菜類も沢山売っていました。ただし,例の「白えびビーバー」は,まだなかったですね。こきりこ節でおなじみのササラも売っていたのですが...かなりの高額でした。
難しい川の名前ですが,「だましがわ」と読みます。この川も作品の モチーフになっているようでした。 |
PS.チラシを見ると,9月14日に福光美術館で漫画家のヤマザキマリさんの無料講演会があると書いてあったので,「これは行きたい」と思ったのですが,この日はオーケストラ・アンサンブル金沢のコンサートがあることを思い出しました。残念。