2018年6月16日土曜日

先週~今週末は #泉鏡花 #徳田秋聲 #室生犀星 #金沢三文豪 の記念館巡り。本日は #鏡花記念館 で #金沢湯涌夢二館 の学芸員の川瀬さんによる#千章館 刊の夢二装幀本のお話。本の装幀の世界は面白いですね

先週から今週にかけて,泉鏡花,徳田秋聲,室生犀星の金沢三文豪の記念館を巡っていました。金沢市内の美術館や博物館では,結構頻繁に,ギャラリー・トークであったり講演会を行っているので,入場料だけで色々と面白い話を聞くことができます。

本日は泉鏡花記念館で行われた「千章館発行の竹久夢二著書・装幀本を中心に」という講座に参加してきました。実は,この講座,金沢湯涌夢二館の学芸員の川瀬千尋さんが担当をしていましたので,鏡花記念館に居ながら,夢二についてのお話も聞いたことになります。

というわけで,順に紹介しましょう。

先週は,徳田秋聲記念館で企画展「秋聲をめぐる人々:文壇星座観測」に行ってきました。


秋聲は,明治・大正・昭和のかなり長い期間にわたり,第一線で活躍した作家です。その各時代ごとに秋聲と文壇の作家たちのつながりを秋聲とやりとりした手紙を中心に展示したものです。さすが秋聲というつながりの多さです。
取り上げられている作家の生きた期間を示す図。赤が秋聲です
ギャラリートークの時に学芸員の方が,特定のテーマを掘り下げると展示できないが,今回のような形ならば展示できる「お宝」も多いので今回はこのような形を取ってみたとのことでした。直筆の手紙などが多かったのですが,こうやってみると,正宗白鳥の文字が味があってよいな,と思いました。



室生犀星記念館では企画展「旅する犀星:北信越編」を行っていました。晩年は「旅嫌い」で通した犀星の旅行に焦点を当てたものでした。犀星の場合,犀星自身の文字が個性的です。原稿用紙の中に小さく書くので,大変「かわいい」文字です。
常設展示の中には,犀星と同時代の文豪との「つながり」を示したパネルがありました。鏡花と秋聲については,かなり好き嫌いが激しかったようで,この両者は互いを意識しつつも接触を避けていたようです。それに比べると,犀星はどちらともつながりがあり,「人間ができているのでは?」と思ったりしました。
犀星関連情報ですが,6月25日(月)に犀星原作,山田洋次脚本による「あにいもうと」がTBS系列で放送されます。これも注目ですね。大泉洋&宮崎あおいが兄妹役で共演するということで,もしかしたら,寅さんとさくらのような雰囲気になるのでしょうか?
ミュージアムショップを見ていたら,A5サイズのクリアサイズを売っていたので,買ってみました。最近,私自身,庭掃除に凝っている(?)ので,『庭を造る人』の装丁をデザインしたものです。小型のカバンに入れるのに使ってみようと思います。

さて,本日行ってきた泉鏡花記念館では,上述のとおり講座を聞いた後,企画展「日本橋:鏡花,雪岱,千章館」を観てきました。





今回の展示は,鏡花の小説『日本橋』の版元である千章館の社主・堀尾成章の自宅からこの作品の自筆原稿をはじめとして貴重な資料が続々と出てきたことによります。堀尾家旧蔵の資料の中には,鏡花作品だけではなく,竹久夢二が装幀を行った千章館刊の資料も含まれていたので,今回,夢二館の学芸員の方が講座を担当することになったようです。夢二と金沢の関係など,基礎的な部分から説明をしていただいたので,「3文豪+1」の情報を得ることができた感じです。

それにしても,成章館出版の本の装丁は,凝っています。小村雪岱による鏡花『日本橋』の装丁は純日本風でありながら,洗練されたデザイン性もある素晴らしいものですが,今回紹介された,夢二による,純日本風から少しモダンな感じへと少し冒険をしているような装幀の数々(といっても4点だけなのですが)も全く古びた感じがしませんでした。成章館自身は,活動期間が短かったのですが,これもあれこれ凝り過ぎていたのが原因だったのかもしれません。それだけ,本の装幀の世界というのは,面白く,奥の深いものなのかもしれませんね。

講座の中で,夢二は鏡花のファンだったようだが,鏡花の方から夢二に対するアクションはなかった(残念)といったお話がありました。時代的には十分重なり合っていたようなので,夢二装幀による鏡花の本というのが実現していたら面白かっただろうなと私も思いました。

さてこうなってくると,残るは石川近代文学館です。ここでは「開館50周年記念:石川近代文学館作家大集合」という展示を行っています。
ギャラリートークは行っていないのですが,その代わり,地元の劇団員による朗読などを毎月のように行っています。うまく時間が空けば,行ってみようかなと思います。

ちなみに今回の「3館めぐり」ですが,次の「旅ぱすぽーと」を使いました。観光客向けのものですが,一つ持っておくと便利です。団体料金(各館250円)で入ることができます。

3館の入場券はそのまま,本のしおりにできそうな大きさです。