金曜日の夕方は,金沢21世紀美術館の閉館時間がいつもより長いので,「週末モード」に切り替えるために,帰宅前に立ち寄ることがあります。
本日は快晴。気持ちの良い夕空が広がっていました。
18:00過ぎにふらっと出かけ,7月9日で終わる「池田学展:The Pen」と5月末から始まっていた「アペルト07 川越ゆりえ 弱虫標本」を観てきました。
池田学展の方は前にも観たのですが,やはり細かい線の積み重ねによる密度の高さが圧倒的です。モノでも音楽でもそうなのですが,ぎゅっと圧縮された剛性感のあるものを手に取るのが好きです。池田さんの作品を観ていると,作品を完成させるまでの「大変さ」は別として,密度の高いものに触れる快感のようなものを感じます。
「美術手帖」2017年4月号は「池田学」特集で,池田さんのインタビューが掲載されています。そこでは,「池田さんの現在の描き方」について,
「自分の中では特別なことだとは思っていないんです。単純に「ああ良いな」と思ったことを描いているだけで,自分のオリジナルのスタイルを勝ち取ってきたという自覚もない(中略)。電話をしながら紙の上に色鉛筆を走らせる,あれの延長なんですよ。」
といったことを語っています。読みながら,川上美映子による村上春樹へのインタビューの言葉を思い出しました。村上さんも,意識的に書いているのではなく,好きに書いており,まわりが勝手に(?)解釈しているようなところがあります。村上さんの「こだわりの文体」に当たるのが,池田さんの場合「ペンによる線の積み重ね」なのかもしれません。
館内のライブラリーに展示されている関連本やパンフレット |
大作「誕生」がデザインされたA4のWクリアファイルと「けもの隠れ」がデザインされたA5のWクリアファイル。さらに金額調整(?)のために買ったマグネット。
その後,長期インスタレーションルームで,川越ゆりえさんの作品を観てきました。
「弱虫標本」というタイトルどおり,人間の心に潜む「弱さ」などの感情を「虫」で表現したというコンセプトの展示でした。
自慢ではないのですが,私自身,子どもの頃からずっと「人見知り」で,それは今も全く変わっていません。そのせいもあり,人間の「弱さ」というものが,ずっと気になっています。
「弱さ」は克服すべきなのか?「弱肉強食」だけでないのが人間では?だけど「弱い人」を認めると「ただ乗り」と言われかねない。「弱い人」が生きていくには,どこかに境界線があるのか?...こんなようなことをよく考えています。
作品は紙粘土などで作られたちょっと不思議で不気味でポップな感じの昆虫の「標本」で,「弱さ」を表現しているのかは,正直なところ,分かりません。ただし,人間の心の奥にある「弱さ」をモチーフにしてくれているという点で,1点1点をじっくりと観てしまいました。
この展示は撮影可でしたので,雰囲気を写真で紹介しましょう。
弱いけれども地道に生きていくのもよいものかな,と考えながら,部屋全体の明るくファッショナブルな雰囲気に浸ってみました。
展覧会を観終わった後,タレルの部屋の横のチラシコーナーへ。何気なく見ていると,今観たばかりの川越さんの展示がFavoの表紙になっていました。ちなみに写っている女性は川越さんではありません。
このコーナーに置いてあったタワーレコードの「intoxicate」には,池田学展の記事が掲載されていました。
そして,タレルの部屋へ。
結構不思議な色合いに写っていました。
21美の方は,中央部を改装しているようで,「雲を測る男」は...いなかったようです。
しばらくは,この黄色いオブジェが代役でしょうか。