2017年6月24日土曜日

東京都美術館で #ブリューゲル「 #バベルの塔 」展を観てきました。その緻密な世界も良かったけれども,#ヒエロニムス・ボス のストーリーを感じさせるような油彩,ブリューゲルの怪しい動物キャラなど,色々見所がありました

6月23日は仕事の関係で,東京方面に出張に来ていました。夕方まで仕事があった後,帰りの列車の時間までの時間を使って,上野の東京都美術館で行われている「ブリューゲル「バベルの塔」展を観てきました。
http://babel2017.jp/

この展覧会については,少し前,NHKの「日曜美術館」でマンガ家の大友克洋さんをゲストに迎えて特集していたの見て,見に行きたくなったものです。
http://www4.nhk.or.jp/nichibi/x/2017-05-28/31/15815/1902722/

上野公園内にある美術館の場合,駅からとても近いのが利点です。本日も列車の発車時刻の30分ほど前まで観ていました。ただ,今回はこの日が金曜日で閉館時間を20時まで延長していたから可能だったものです。

17:30頃に美術館に着きました。最初のうちは,「結構混んでいるなぁ」ぐらいだったのですが,18:00過ぎぐらいから,だんだんとお客さんの数が増えてきました。

作品は3つのフロアに分けて,展示されていました。地下1階は聖書を題材にしたような16世紀ネーデルラント絵画のコーナー。正直なところ,古い時代の宗教画については,描かれている人物にほとんど表情がないこともあり,どれも似たように見えます。それとどうも劇画っぽく見えるところがあります。今回もざっと眺めるだけにしました。この中で,異様なすごみを感じたのがキリストの頭部を真正面から描いた小さな肖像でした。夜観ると夢に出てきそうな雰囲気がありました。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12975517.html

1階は,今回の展覧会のもう一つの目玉であるヒエロニムス・ボスの作品が展示されていました。まず,展示室の最初に展示されていた『放浪者(行商人)』という作品が印象的でした。次のような絵です。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12981044.html
http://www.museum.or.jp/modules/topics/?action=viewphoto&id=942&c=7

どこか怯えているような表情には,現代人の苦悩にも通じるような,「人間関係の悩みを抱えているのかな?」と思わせるような複雑さがありました。ストーリーを感じさせるような作品でした。

絵の中には,アイコンのような感じで色々なものが描かれていたのも,ついつい深読みをしたくなります。実際,それらを読み解くためのパネルも展示されていました。何かを象徴するようなフクロウが描かれていたりして,村上春樹の小説『騎士団長殺し』に出てくる,同名の絵もこの絵と同じような雰囲気なのかな,と勝手に想像を広げてしまいました。

ボスの作品と「ボスもどき」の作品のコーナーに続いては,ブリューゲルの版画コーナーでした。ここでは,色々と不思議なキャラクターが描かれていました。絵のタイトルからして,「大きな魚は小さな魚を食う」という諺風で,ファンタジーというには不気味な雰囲気がありました。その中にどこか遊び心が感じられるのが面白いと思いました。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12982627.html

そして2階展示室には,目玉であるバベルの塔が展示されていました。
http://www.museum.or.jp/modules/topics/?action=viewphoto&id=942&c=1

それほど大きな絵ではないのですが,実に緻密でぎゅっと圧縮された密度の高さがあります。絵の色合いは,全体にくすんだ感じだけれども,所々,変色したような感じでやや赤み掛かっていたり,青み掛かっていたり,ちょっと不思議な雰囲気があります。日曜美術館で大友さんが語っていたとおり,背景に地平線が入っており,絵を上下に二分しているのも不安な気分を盛り上げるようです。それと同時に,奥行きやスケール感を感じさせてくれます。

そして,絵の中には,小さく小さく塔の中で働いている人たちの姿などが描かれています。どこか宮崎アニメなどに出てくるような,要塞のような感じにも見えます。金沢21世紀美術館で現在行っている,池田学の作品にも,要塞を思わせるような架空のの建造物の中に,細かく人が描かれていたりしますが,それと共通する性格があると思いました。池田学さんに,ブリューゲルの影響があるのか尋ねていたいものです。

# 調べてみると皆さん同様に感じるようで,次のようなインタビュー記事がありました。
https://dot.asahi.com/aera/2017052500045.html
# 池田学展の方はこちら。
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1746

展示の最後のコーナーでは,高精細映像とCGで,バベルの塔の色々な部分をクローズアップするような5分ぐらいの映像を流していました。これも面白いものでした。この映像以外にも,東京芸術大学のチームが拡大復元した絵が展示されていました。どうも,この作品については,他のアーティストを刺激するような潜在的な力を持っているようです。

今回,作品を観るときに美術鑑賞用の近距離焦点の双眼鏡というのを使ってみました。生物学者の福岡伸行さんが,朝日新聞に連載しているエッセーの中で,「最近,使っています」と書いていたのを読んで,トライしてみたものです。有料記事ですが,次の記事です。
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20170508001499.html

事前にインターネット通販で近距離焦点の安めで小型の双眼鏡を購入したのですが,効果はそれなりにありました。金沢だとほとんど見かけないのですが(やはりお客さんの数でしょうか),今回の展示では,双眼鏡で観ている人は結構いました。「バベルの塔」展だからということもあるかもしれないですね。

私の場合,眼鏡を掛けているので,その上からさらに双眼鏡を当てる形になり,視野が狭い感じになります。眼鏡を外すともっと大きく広がるのですが,その場合,普通の眼鏡をぶら下げるストラップがあると便利だと思いました。この双眼鏡は,コンサート用にも使おうかと目論んでいます。

会場を出ると,展覧会用のマスコットキャラクターの「タラ夫」のコーナーが。「サザエさん」に出てきそうなネーミングです。ブリューゲルの作品をキャラクター化したようです。


その他の怪しげなキャラ(というよりはブリューゲルの作品から切り取ったもの)も窓ガラスに貼られていました。

記念のスタンプは押す場所がなかったので出展作品リストに捺してみました。

最後にバベルの塔の大きさを実感してもらうパネル。書いてありませんが,東京スカイツリーよりは低いようですね。

ミュージアムグッズも色々と楽しいものが多かったのですが,自分用のお土産として,「バベルの塔」スノードームを購入。実は,スノードームは結構好きなのです。780円と,思ったより安かったので買うことにしました。以下は帰宅後,撮影したものです。
雪を降らせると次のような感じ

外箱と一緒に撮影

その他のグッズは次のような感じでした。
http://babel2017.jp/goods.html

そして,予定通り上野駅から「かがやき」で金沢に戻りました。ブリューゲル展(ブリューゲル一族を特集したもののようです)は,来年1月から再度,東京都美術館で行われるようなので,うまく出張などがあれば,また観に来たいと思います。


PS. 驚いたことに,本日の朝日新聞の天声人語では「バベルの塔」について書いていました。期間終盤ということで,今日と明日は相当混むかもしれないですね。
http://www.asahi.com/articles/DA3S13002353.html