本日はNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」の最終回でした。
半年前に始まったとき,若いヒロインがすぐに結婚・出産し,「一体この先どう展開していくのだろう?」「もしかしたら老け役は別の役者さんが演じる?」などと思ったりもしていたのですが,出演者たちがそのままの雰囲気を残しつつ年齢を重ねていき,まさにエバーグリーンという感じのエンディングになっていました。これだけ,穏やかに終わった朝ドラも珍しいかもしれません。
終盤は,大きなドラマがなくなってしまったので,物足りないと思った人もいたかもしれませんが,慌ただしい実社会の中で,別世界に入ったような心地よい緩さを感じさせてくれました。4人組とその家族たち一緒になって「ええねぇ」という感じで楽しんでいました。
ドラマ全体のコンセプトとしては,「生む」「育てる」「残す」というサイクルがポイントだったと思います。このことを個人レベル,家族レベル,会社レベルで描き,それが絡み合っているのが面白いと思いました。絡み合いすぎていて,「いつも同じ場所」ばかり出て来たところもありましたが,このいつも集まっている人たちが,「大きな家族」のように成長していく様を描きたかったのだと思います。成長といっても「営業の業績を上げていく」といった経済的な意味での成長ではなく,人と人とのつながりが増えていく有機的な成長を描いた点で,現代社会で失われつつある重要なものを提示していたのだと思います。
このドラマでは,すみれの母が最初の週で亡くなってからは,その母がナレーターとして,ずーっとすみれの成長を応援し,見守っていました。そして,部屋の中に飾られている記念写真が増えていくにしたがって,これと同様の「他人のしあわせを家族のように応援する」視点がどんどん増えていきました。それがドラマ全体に暖かい安心感を作っていました。
主役の芳根京子さんは,そのドラマの気分にぴったりだったと思います。20歳にして,孫がいる年齢まで演じるとは予想もできなかったのですが,見事に演じきったと思います。今回登場した多くの役者さんの中でも「べっぴん」だったと思います。