2016年8月13日土曜日

石川四高記念文学館で行われた「三州奇談」の朗読会に参加してきました。

兼六園周辺文化の森 夏のミュージアムウィーク関連イベントとして金沢市内の博物館などでいろいろなイベントを行っています。本日は,18:30から石川近代文学館主催で「三州奇談」の中から3つの作品を選んだ朗読会が行われました。
『三州奇談』というのは,加賀・能登・越中に伝わる怪談を江戸時代中期に金沢に生まれた堀麦水(ほりばくすい)が記した作品です。柳田国男の『遠野物語』の北陸版といったところでしょうか。今回は,石川近代文学館で開催中の企画展「作家といきもの」に合わせて,動物が登場する怪談3編が選ばれました。

私自身,『三州奇談』という名前は聞いたことがあったのですが,実際にどういう話が入っているのか全く知りませんでした。その「雰囲気」を手軽に味わうために行ってみることにしました。

それと,最近,朗読に注目をしています(文字を読むのがめんどうという理由ですが)。今回は,地元の劇団110SHOWの高田伸一さんと3人の女性が朗読を担当し,1時間ほどの時間で,『三州奇談』のエッセンスを味わわせてくれました。

『三州奇談』は,江戸時代に書かれた作品ということで,文語体で書かれています。今回は,夏休み向け企画,ということでかなり親子連れのお客さんも多く,最初に高田さんがオリジナルの文語体で朗読した後,3人の女性が現代語訳で朗読しました。これは子ども向けに限定したものではなく,大人にとってもありがたかったと思います。

麦水のオリジナルの文語の文章は,意味はよく分からなくても,ドラマが伝わってきました。歌舞伎か何かのセリフを聞いているような,心地よさがありました。今回は,怪談の雰囲気を出すために照明を落として,朗読者の手元を照らす照明だけを使っていました。朗読者の顔だけが青白く浮き上がり,怪談気分を大きく盛り上げていました。

今回朗読されたのは,「水嶋の水獣」「少女變鼠(ねずみにへんず)」「白山の梟怪(きょうかい」の3編でした。それぞれ,現白山市松任水島,金沢市竪町,白山市鶴来が舞台でした。こういうお馴染みの地名が出てくるのが,まず面白いところです。江戸時代に手取川で水害が頻発したときに川の中に水獣が居たとか,商家(?)で働く少女が夜中に鼠に変わったとか,森の中で梟がホーホーと鳴くのに答えたところ,沢山梟が集まってきて収拾がつかなくなった...とか(間違った要約かもしれません...),「オチがない」話ばかりでした。これは,堀麦水が自身で聞いた話という形になっているからで,「実話怪談」というジャンルに入るものとのことです。

この手の話は,水木しげるや泉鏡花の話にも多いそうです。実際,鏡花は『三州奇談』を好んで読んでいたそうです。無理にオチを付けるよりは,オチがない方が怖さがあるかもしれませんね。

それと,やはり朗読の力はすごいと思いました。オチのない話からしっかりと臨場感が伝わってきました。特に高田さんの緩急自在で深みと艶のある声は,堀麦水の流麗な文章にぴったりでした。石川近代文学館では,地元の劇団の俳優さんたちによる朗読を定期的に行っていますが,高田さんの声はまた聞いてみたいと思いました。
企画展のチラシと今回のイベントのチラシです。
この石川四高記念文化交流館の赤レンガの雰囲気も怪談にぴったりだったかも。