2015年1月11日日曜日

シネモンドで何気なく観てきた映画「リスボンに誘われて」。ヨーロッパの雰囲気+魅力的な展開+意外に豪華な配役で非常に楽しめました。

このところ精神的に疲れることが続いていたので,気分転換を兼ねて,もらった割引券を使ってシネモンドで映画を観てきました。何を観るかは決めていなかったのですが,「本を題材とした映画」「ジェレミー・アイアンズが出ている」ということで,「リスボンに誘われて」というヨーロッパの映画を観ることにしました。

映画のストーリーは,スイスのベルンの高校で古典文献学を教えるライムントが,学校に向かう途中の橋の上から自殺しようとした若い女性を救ったところから始まります。この女性を救った後,置き忘れていったコートの中に1冊の古本が入っているのを見つけます。

この古本にリスボン行きの夜行列車の切符が入っており,誘われるように旅支度もしていないまま,その列車に乗ってしまいます。その列車の中でその古本を読んだライムントは,その本にすっかり魅せられ,リスボンでその著者のアマデウを尋ねる。

こんな感じで始まります。ライムントはベテランの高校の古典の先生らしく知性と教養に溢れているのですが,5年前に離婚した後は,一人で寂しく単調な生活をしています。そのことが「ふらっと列車に乗ってしまう」理由になります(ジェレミー・アイアンズはもともと知的な雰囲気をもった俳優ですが,はまり役ですね。)。

まず,この設定に惹かれました。この日のシネモンドにはかなり沢山のお客さんが入っていましたが,私を含め中年以上のお客さんが結構多かったような気がします。「ちょっと冒険をしてみたくなる」という気分に感情移入したくなるような巧い導入部でした。

リスボンに着いてからは,この都市の持つ「いったい何時の時代なのだろう?」という不思議な美しさのある景色に惹かれます。現代の設定なのですが,石畳の坂道,石で出来た重厚な建物,時々出てくる自然の美しさ。ここで更にドラマの世界にはまってしまいました。

古本の著者のアマデウは,既に亡くなっていたので,その妹(シャーロット・ランプリングでした。貴族的な雰囲気がこの役にぴったり)を通じて,アマデウとそのかつての友人・恋人などに会っていきます。この辺は「巻き込まれ型サスペンス」といった趣きもあります。

この本は,アマデウの手記をもとに限定100部で妹が出版したもので,1970年代のポルトガルでレジスタンス活動が盛んだった時代の若者たちの思いやドラマが描かれています(本の内容自体は実はよく分からなかったのですが,多分)。

その回想シーンで登場するアマデウとその友人,恋人の描き方も大変魅力的でした。ラテンだなぁという感じです。そして,彼らを取り締まる体制側の警察も迫力たっぷりに描かれます。アパートの一室でモーツアルトのピアノ・ソナタ第12番の第2楽章を美しく演奏しているのを突然中断して拷問...という展開はインパクト満点でした。

さらに,旅先で眼鏡を壊してしまったライムントが眼鏡を作り直す時に眼鏡店でマリアナという女性に出会います。マルティナ・ゲデックという女優が演じていましたが,この方もまた魅力的でした。ライムントとだんだんと親しくなっていく展開には,ちょっと「Shall weダンス?」での役所広司を思わせるような含羞があり,「がんばれ」と応援したくなりました。

過去と現代が立体的に交錯する展開なのですが,せわしない感じがありません。音楽の使い方も控えめで,ヨーロッパ映画らしい落ち着きがあるのですが,その中に「時代の熱さ」が漂っていました。

実は洋画を見るのは久しぶりだったのですが,個人的には「大ヒット」の作品でした。部分的にちょっと気になる部分があったので,原作(パスカル・メルシエ著「リスボンへの夜行列車」)も読んでみたいなと思いました。

この映画で一つ気になったのは,全員英語をしゃべっていた点です。スイスもポルトガルも英語が公用語でないはずなので,どういう設定だったのか少々気になりました。ただし,この英語は大変分かりやすいものでした。私でも結構よく分かりました。

ちなみに1月のシネモンドのラインナップからピックアップすると,「リスボンに誘われて」以外にも,「ストックホルムでワルツを」「グレート・ビューティー:追憶のローマ」「ウィークエンドはパリで」と「ヨーロッパ首都めぐり」という感じです。今回の作品を見ただけで,異国を旅した気分になったのですが,全部見たらヨーロッパ一周のような気分になれるかもしれませんね。

 映画の後,香林坊アトリオへ。吹き抜けに大きな凧が飾ってありました。その下のテレビの前には,「がんばれ星稜高校」と書かれていたので,明日はパブリックビューイングのようになるのかもしれません。

その後,21世紀美術館へ。今日は雨だったので,タレルの部屋には誰も人がいませんでした。いつもと違い,床面を撮影してみました。
美術館の外には雪だるまが。雪が降ると,必ず誰かが作るようです。太陽が出てきたので,撮影してみたのですが,かなり不思議な雰囲気に写っていました。