2014年4月5日土曜日

兼六園で軽く花見をした後,中学校吹奏楽部を描いた映画「楽隊のうさぎ」をシネモンドで鑑賞。部活の雰囲気が実に自然に描かれていました。吹奏楽ファン必見の作品かも。

このところ金沢では寒暖の差がかなり激しく,桜が咲き始めたとたんに寒くなりました。今日もかなり寒かったのですが,天気がとても良かったこともあり自転車で兼六園まで行った後,香林坊109のシネモンドで映画を観てきました。



観てきた映画は,中沢けい原作の同名の小説を映画化した「楽隊のうさぎ」です。中学校に入学した後,”不思議なうさぎ”に誘われるように吹奏楽部に入った,ちょっとひ弱な感じの男子学生を中心に花の木中学校吹奏楽部の活動を描いた作品で,楽器の演奏シーン,練習シーン,演奏会のシーンがふんだんに出てきます。



ただしあくまでもドラマの核は主人公の克久を中心とした少年少女の成長にあります。出演者はオーディションで選ばれ,しかも実際に彼らが演奏したものを使っているようです。そのこともあり,画面から出てくる空気感が非常に自然で,「吹奏楽あるある」という感じのリアリティがあります。主人公の克久のセリフはとても少ないのですが,その少なさも「中学男子」的です。

楽器の中ではやはりパーカッション・パートが中心です。女子部員の方がしっかりしていて,元気で,男子部員の方は大人しいというのも「吹奏楽あるある」的です。ティンパニの先輩女子のしっかりした感じとか,実にいい感じです。

登場人物は多いのですが,楽器とセットになってキャラクターが作られているので,一人一人がキラリと光るように描かれているのも素晴らしいところです。ドラマのクライマックスの定期演奏会の場面で,指揮者からの目線で全部員の表情を映すカットがありましたが,そういうシーンを見ると「成長したなぁ」とうるっと来そうになります。

顧問の先生役の宮崎将さんのちょっとボーッとしているけれども音楽を強く愛しているという感じもなかなか爽やかで,この映画の雰囲気にぴったりです。主人公や部員を取り巻く大人たちの出番は少ないのですが,あまりベタベタと描いていないのが良いと思います。3年生部員が引退し,1年生に引き継ぐ場面など,実際の部活ではもっと「ドラマ」があるのかもしれませんが,この映画ではあくまでも爽やかに描いており,映画全体のトーンの統一感を作っていると思いました。

そして,何といってもリアルな音が出てくるのが良いですね。ビゼーの「アルルの女」のファランドールをはじめて通しで演奏したときの,ぎこちなさも「あるある」という感じでした。その他,ホルストの吹奏楽のための組曲第1番という,結構マニアックな曲を使っていたのは,この作品の音楽監督の磯田健一郎さんの趣味に違いありません。

原作ではレスピーギの「シバの女王ベルキス」という,これもまたマニアックな曲が出てくるのですが,この曲の方は使っていませんでした。そもそも原作の方には吹奏楽コンクールを勝ち抜くような展開があった(と思う)のですが,映画の方ではその辺も省略をしていました。コンクールを描き過ぎると,やはりちょっと熱過ぎるのかもしれません(ただし,吹奏楽コンクールを勝ち抜いていくようなストーリーも非常に面白そうですが)。

ストーリーにはあまり関係はないのですが,吹奏楽部に理解のある中学校の近所の魚屋さん(こういうやく役柄には欠かせない徳井優)が小型トラックで走っているとき,なぜか「ローマの松」を聞いていたりするのが妙に嬉しかったりします(ちゃんと定期演奏会も聞きに来ていました)。

というわけで,今回は記念にパンフレットも購入してしまいました。全員の顔写真が掲載されていたので,映画のシーンを振り返りながら眺めてみたいと思います。




ちなみに「楽隊のうさぎ」の原作本も我が家にはあります。我が家の吹奏楽部(しかも打楽器)に入っていた子供も,確かこの本で感想文を書いたことがあるはずです。もう一度読んでみたくなりました。パンフレットには,中沢けいさんと磯田さん,プロデューサーの越川さんの対談も掲載されていました。