2013年3月10日日曜日

石川県立図書館で福岡伸一さんの講演会「福岡ハカセの本棚」を聞いてきました。知的好奇心をたっぷり呼び起こす,面白い内容でした。

本日は,午後から石川県立図書館で行われた,生物学者の福岡伸一さんの講演会を聞いてきました。このところ,あまり本を読む時間がないので,市内で講演会をやっているのを見つけては参加しているのですが,どの方のお話も大体面白いですね。
今回の福岡さんのお話も大変面白く,そして,考えさせられるものでした。タイトルは「福岡ハカセの本棚」だったので(これは最近,メディアファクトリー新書から発売された福岡さんの著作と同じタイトルです),福岡さんの読書遍歴のような内容を予想していたのですが,かなり切り口は違っていました。

子どもの頃,昆虫好きで読書好きだった福岡さんが,どういう道筋で関心のあるテーマを広げてきて,最終的に現在の研究テーマに至ったのか,という「知的遍歴」という話でした。スライドを交えてお話をされたこともあり,大変分かりやすい内容でした。キーワードで列挙すると,

公共図書館→書庫→ルリボシカミキリ→顕微鏡→レーウェフック→オランダのデルフト→実験ノート→フェルメール

とつながります。このレーウェンフックとフェルメールの関係については,NHKスペシャルなどの番組が作れそうなぐらいワクワクさせてくれる話でした。

後半は,このレーウェンフックが顕微鏡を作り,細胞を観察できるようになった17世紀以降,現代の科学につながるパラダイムの変化があったという話になりました。その主流が,細胞,核,DNA...とどんどん細かく分析していく,還元主義の流れです。生命についても機械のメカニズムのように捉える考え方です。

福岡さん自身,この考え方をもとに,マウスを使った実験を行っていたけれども壁に突き当たってしまいます。その時に出会ったのが,ルドルフ・シェーンハイマーという忘れられつつあった科学者による「生命は機械ではない生命は流れだ」という言葉です。

福岡先生のように分かりやすく説明できないのですが,次のようなことになります。人間は食物を食べることによって,エネルギーを取り入れているのではなく,体の細胞を取り換えている。人間の体は細胞レベルでは常に更新されている。その更新の流れの中でバランスを取りながら,生物としての形を維持している。

これが動的平衡です。この考え方は新鮮でした。機械論的には説明できない現象についても,状況に応じて少しずつ対応していく動的平衡の考え方を使えば,うまく説明できることになります。

関連して,花粉症の薬である抗ヒスタミン剤の話も出ていました。薬に頼りすぎると,動的平衡によって,細胞レベルで新たな対応を起こすので,さらに強力な薬が必要になるので,根本的な解決にはならない,とのことでした。そもそも,現代社会が清潔過ぎて,免疫システムが力を持て余し,花粉ごときに過敏に反応してしまう,というのが花粉症の原因というのも皮肉なものです。ちなみに,私自身は,清潔に暮らしていないせいか(埃っぽいところにいますねぇ),確かに花粉症ではありません。

今回のお話は,福岡さん自身の体験を通じて,「学び」のあり方を示すものでした。何か一つのことに関心を持ち,それについて調べているうちに次の関心が出てくる。そこからさらに別の関心が出てくる...というのが学びの原点ということになります。

関心を持ったものについて「コンプリートコレクション」を作りたくなる,という話も「そのとおり」と思いました。福岡さんの場合,昆虫採集だったり,フェルメールの絵を見ることがそれに当たります(私の場合,演奏会に行くのが昆虫採集のようなものですね。)。そのことが「世界を知ること」になるとおっしゃられていたのも印象に残りました。

福岡さんは,難しくなりがちな科学についての話題を,分かりやすく,面白い切り口で伝えることのできる貴重な存在だと思います。90分の講演会でしたが,全く退屈する間もなく楽しむことができました。講演を聞いた多くの方が,福岡さんの本をいろいろと読んでみたくなったのではないかと思います。
 
↑講演会の後,サインをいただいてきました。かなり大勢の方がもらっていました。