2015年10月31日土曜日

【音盤獺祭】カラヤンのベートーヴェン交響曲集(宝島社)を全集と間違ってうっかり購入。ただし,私にとってのクラシック音楽のイメージの原点です。

このところ仕事が忙しく,平日は疲れ果てています。帰宅途中,書店の音楽関係の雑誌コーナーを眺めているうちに,カラヤンのベートーヴェンの交響曲のCDセットを1000円で販売しているのを見つけました。

http://tkj.jp/book/?cd=62399201

実は私が親に初めて買ってもらったクラシック音楽のLPレコードがカラヤン指揮の交響曲でした。小学校4年生ぐらいだったと思います。2枚買ってもらい,1枚はベルリン・フィル指揮の第9(1960年代の録音),もう1枚はフィルハーモニア管弦楽団との「運命」「田園」(1950年代中頃の録音)でした。

「フィルハーモニア管弦楽団」については,「このオーケストラ名は何か変だ。ベルリンとかウィーンとかが抜けているのではないか?」とずっと思っていたのですが,そのうちにイギリスに「ただのフィルハーモニア管弦楽団」というのがあるというのを知りました。この録音が人工ステレオだったことも後で知りました(ちょっと音が悪いなとは思っていました)。

もう一つの第9の方は,1枚モノなので第3楽章の途中でB面に裏返すことになります。これがちょっと気に食わなかったのですが,カラヤン/ベルリン・フィル=クラシック音楽というのが小学生の私にインプットされたのは,やはりこの第9のLPがきっかけです。

久しぶりに取り出してみたのですが,1枚モノの癖に,一見2枚組のような感じのジャケットになっているのが,当時のLPです。ただし,ドイツグラモフォンの黄色いタイトルが裏面にも付いているのは,かなり珍しいかもしれません。




といいつつ,このCD時代になってからはほとんど聞いておらず,今回,店頭で発見して,つい懐かしくなりました。これは後から勘違いだと気づいたのですが,「懐かしのカラヤンのベートーヴェン交響曲「全集」が1000円で買える」とか,「第9以外の演奏も聞いてみたい」とか,「今週は疲れたし...」,「このLPレコードを思わせるジャケットもちょっと気になる」などと思いながら,つい購入してしまいました。

家に帰って,ジャケットを開いてみて「あ,2番と4番がない」と気づき,ちょっとガッカリしたのですが,この金額なので仕方ないですね。冷静に考えるとCD4枚にベートーヴェンの9曲を入れるのは難しいですね。

ただし演奏の方は,やはり素晴らしいと思います。ベルリンのイエス・キリスト教会での録音はずっしりとした聞きごたえのあるしっかりとしたサウンドが詰まっている感じです。

第9については,ソプラノのグンドゥラ・ヤノヴィッツの声が素晴らしいですね。まだ全曲は聞いていないのですが,しばらくはこのCDを聞いて,鋭気を養いたいと思います。

それにしても...ベートーヴェンの交響曲の中から7曲を抜くとしたら,2番と4番が抜けるというのは,致し方ないところでしょうか。ちょっとこの両曲には申し訳ないですね。

2015年10月18日日曜日

本日も快晴。金沢市内ではスイーツ&丼のイベントが大賑わい。21美で行われた泉鏡花シンポジウムへ。鏡花の怪異作品の源泉を多面から分析。内容が充実し過ぎていて,時間が足りなかったですね。

本日の金沢は快晴。しいのき迎賓館やいしか四高記念公園では,毎週のようにイベントが行われていますが,今週は「いしかわスイーツ博2015」と「第7回全国丼サミット」を行っていました。

 


「人が多過ぎ?」と思ってよく見ると,辻口パテシエのトークショーを行っていました。

その後,「まれ」でおなじみになった清水富美加さんと鈴木砂羽さんも登場したようです。その横には,巨大ひゃくまんさんフワフワが。快晴の陽光の下で見ると,妙に幸せな気分になります。

その後,いしかわ四高記念公園の方へ。

こちらも大勢の人が列を作っていましたが,あまり待ちたくなかったので,比較的待ち時間の少なかった「能登・牛すじ丼」を食べることにしました。


本当に柔らかい肉でした。

公園周辺の木々も少しずつ紅葉が進んでいます。

その他,市内各地でイベントをやっていました。

泉鏡花生地近くにある久保市乙剣神社では,「鏡花うさぎまつり」。



こじんまりとした雰囲気が実に良い感じでした。鏡花記念館をはじめ,本日は市内各地のミュージアム類が,「石川県民入場無料」になっていました。



横安江町から武蔵が辻に掛けてもイベントをやっていました。ただし,通り抜けただけです。


ちなみにこの「目細通り」は,鏡花とのつながりも大きな場所ですね。

その後,14:00から金沢21世紀美術館のシアター21で,泉鏡花をテーマにしたシンポジウム「怪異の泉:鏡花 幻影の本棚」が行われたので,参加してきました。


このタイトルは,現在,泉鏡花記念館で行っている展示と同様のもので,鏡花の持ち味である怪異で幻想的な世界の源泉をその蔵書から探るといった内容でした。シンポジウムということでしたが,実際のところ,予定よりも時間がかなり伸びてしまい,4人の講師による,それぞれ別の観点からの講演を一気に聞く(だけ)という形になりました。シンポジウムというからには,講師同士の語り合いがあった方が良かったのですが(時間配分にかなり無理があったのかも),それぞれの内容が充実していた上,相互に内容が絡み合っていたので,自然なまとまりができていました。

今回の講師は,次の4人で,司会は泉鏡花記念館の学芸員の穴倉玉日さんでした。
  • 東京・神田神保町の和書専門の古書店・大屋書房四代目の纐纈(こうけつ)くりさん
  • 浮世絵などの日本美術史が専門の藤沢紫さん(国学院大学教授)
  • 近世文学専門の堤邦彦さん(京都精華大学教授)
  • 怪談史専門家の東雅夫さん(怪談専門誌「幽」編集長)
今回の泉鏡花記念館の展示の目玉は,現存する鏡花の蔵書を全点公開するという点です。鏡花の蔵書は,慶応義塾大学の図書館に寄贈されたのですが,昭和20年5月の空襲で大半が焼けてしまいました。今回展示されたのは,地下に移動されていたため戦火をくぐり抜けることのできた,約500冊の幸運な蔵書です。

その中心が草双紙類ということで,まず,纐纈さんが予備知識的に,草双紙の変遷についての紹介をしました。草双紙は,戯作者による物語と浮世絵師による絵画が一体になった小説で,現在のマンガの元祖のようなものと言えます。その草双紙の到達点が『偐紫田舎源氏』ということで,鏡花記念館での10月20日からの第2期の展示のメインはこの「マンガ版源氏」になとのことです。纐纈さんによると,「鏡花の蔵書の「源氏」は,今まで見た中でいちばんきれいな刷り」ということで,この話を聞いただけで,実物を見てみたくなりました。

続く,藤沢紫さんのお話は,浮世絵の中に出てくる幽霊や怪異表現がテーマでした。まず,藤沢さんの作ってこられたプレゼン(画像もトークも)が素晴らしく,浮世絵の面白さが分かりやすく伝わってきました。特に歌川国貞や円山応挙などの作風を実例を交えて具体的に説明していただいたのが面白く感じました。

鏡花作品の挿し絵は鏑木清方などが描いているのですが,しっかり歌川派の系列に入っていました。鏡花の世界と江戸後期の浮世絵の世界とは,挿し絵の点でも密接につながっていることが分かりました。鏡花の怪異作品に出てくるファム・ファタル的性格を持つヒロインの持つ二面性が,浮世絵の世界の美と粋,美と奇,写実と幻想...といった二面性に重なるのも面白いと思いました。

堤さんのお話は,「江戸怪談の法則と鏡花作品」についての話でした。江戸の怪談については次のような「法則」があるとのことです。①上方中心の初期は宗教的な寺社との関わりの強い作品,江戸中心の後期は芝居小屋中心に展開。②典型的な型を決めて組み合わせるような,「どこかで聞いたようなハナシ」が多い,③版本として類書が刊行され流行することで,怪談の普及が広まった。

鏡花の蔵書には,付箋がわりにワラが挟んであるのですが,そういった部分をチェックすることにより,鏡花の読み方が分かるというのが興味深い点でした。ちなみに,堤さんは慶応義塾大学で国文学を勉強していた頃,このワラの挟まれた蔵書の移動作業を手伝ったことがあるとのことでした。今となっては,これも貴重な経験ですね。

最後に東さんが,鏡花作品と怪談実話や海外作品との関連について,詳細な年表を参照しながら説明されました。鏡花の蔵書の中に含まれていた海外作品は少ないのですが,その1つが「アラビアンナイト(当時の訳名『全世界一大奇書』」です。実際の文章の紹介もあったのですが,明治時代の訳の雰囲気が,鏡花の初期の作品ととても似ているのが面白いと思いました。

さらに鏡花は,柳田國男とかなり若い頃から交流があり(2人ともお化け好き),「百物語」イベントなどで対談を何回か行っていたとのことです。フィールドワークで『遠野物語』などをまとめた柳田と先行する江戸時代の伝承的な素材を取り込んだ鏡花の対比も面白いと思いました。

というわけで,最初に書いたとおり,「まとめ」的なコーナーはなかったのですが,鏡花の怪異文学のルーツが立体的に明かにされたような充実した内容だったと思います。

鏡花記念館の展示は,時々,展示替えをしながら12月末まで行っています。特に刷の良い蔵書は一見の価値がありそうですね。

2015年10月11日日曜日

小雨の中,金沢市内ミュージアムめぐり。三文豪スタンプラリーに参加。かなざわクラフトマルシェは,雨で大変そう。

本日は,小雨の中,金沢市内のミュージアムをいくつかめぐり,しいのき迎賓館裏で行っていた「かなざわクラフトマルシェ」を見てきました。

秋になると,毎年,金沢市内にある三文豪の記念館を中心にスタンプラリー企画を行っています。「オリジナル○○プレゼント」という宣伝文句に魅かれて,ついつい参加したくなります。しいのき迎賓裏でも「かなざわクラフトマルシェ」という楽し気なイベントを行っているということで,「今日は金沢市内観光」をしてきました。


今日は,次の順にめぐりました。徳田秋聲記念館→泉鏡花記念館→金沢蓄音器館→金沢文芸館→石川県立伝統工芸

館→クラフトマルシェ→石川四高記念文化交流館→金沢能楽美術館→金沢21世紀美術館 

2日間使えるパスポートを700円で購入したので,ほとんどの施設でお金を払うことなく,入館できました。目的の半分ぐらいが,「グッズねらい」だったので,それほどじっくりと見ていない館もあったのですが,楽しく過ごすことができました。

体育の日にちなんでいるわけではないのですが,「文化」と言いつつ,これだけ動きまわると「運動」になるのが良い点です。家の中にじっとしているよりも,動くだけで頭が活性化される気がします。

ただし,しいのき迎賓館に着いた頃は,雨が降ったり止んだりという状態になり,かなざわクラフトマルシェの方はお客さんが少ない感じでした。はじめは三文豪ツァーを目論んでいたのですが...犀星記念館はパスしてしまいました。これだけが心残りです。

以下,写真で紹介しましょう。

徳田秋聲記念館。「芙美子と秋聲」という企画展を開催中。秋聲の作品は,一度読んでみたいのですが,なかなか時間が取れません。「あらくれ」か「仮装人物」が面白そうな気がしています。


浅野川大橋に向かって移動。対面に写っているのが,主計町茶屋街です。


泉鏡花記念館。こちらでは,企画展「怪異の泉:鏡花,幻影の本棚」を開催中。展示室の暗いムードにマッチした,展示でした。来週は同タイトルのシンポジウムも行われます(会場は21美)。


しっかりスタンプラリーのスタンプを押しました。

鏡花の書いたお化けの落書きがパネルになっており,記念撮影可となっていました。こういうスポットがあると良いですね。

鏡花記念館の向かいにある,佃の佃煮の店頭。新幹線のパッケージに佃煮が乗っている商品があるようです。ちょっと気になりますね。

金沢蓄音器館。蓄音器の実演を聞くつもりはなかったのですが,タイミング良く「聞き比べ」が始まったので参加。蓄音器の歴史がしっかり分かりました。クライスラーの「美しいロスマリン」の自作自演(多分)でおしまい。


蓄音器といえば,「ラッパ型」を思い浮かべますが,長い管が胴体に入っているクレデンザなどの方が音質は良いようですね。BOSEのスピーカーなどの原点もこの辺にあるのかもしれません。

蓄音器だけでなく,LPレコードも聞けるようです。

入口には,おなじみのニッパー犬が並んでいます。

蓄音器館は,他の館と違って,「聴覚」で楽しめるのが良いですね。金沢観光のガイドではそれほど大きく取り上げられていませんが,個人的には「おすすめ」のスポットです。旅の疲れを癒す(?)のにもよさそうです。

金沢文芸館です。しっかりスタンプをゲット。

その後,兼六園方面へ。紺屋坂を上る途中に列が出来ていたので何かと思ってよく見ると...金箔入りソフトクリームのようでした。いつの間にか,ここにも進出してきたようですね。


兼六園には入らず,石川県立伝統産業工芸館へ。ここだけは別料金だったのですが,企画展「工芸館Reading Style21世紀バージョン」という本に関する展示を行っているということで,行ってみました。

実は入るのは初めてだったのですが,企画展といいつつ展示というよりは,通常のショップのようでした。いろいろ面白そうなものがありました...が,今回は観るだけにしておきました。

続いて,県立美術館の横を通って,広坂方面へ。石浦神社の鳥居にハートマーク。

しいのき迎賓館裏に到着。

かなざわくらふとマルシェの店が色々出ていました。

ここで昼食。イタリアのフィレンツェ名物のサンドイッチ,ランプレドットを食べました。



この日は,おしゃれメッセというイベントもやっていました。しいのき迎賓館では,モデルさんがモデル歩きをしていました(同語反復)。


外には,色々なオブジェが並んでいました。

こちらは,この時期恒例の「月見光路」ですね。夜になるとまた別の雰囲気になりそうです。



四高記念公園の方では,「金沢スイーツフェア」。こちらは遠くから眺めるだけ。


石川四高記念文化交流館へ。これでスタンプ4つがたまったので,記念品のメモ帳をゲット。
ここでは,企画展「うたえ!□(詩歌句)街の仲間たち!」を開催中。ただし...私にはよく理解できない内容でした。

続いて,金沢能楽美術館へ。これで5館めぐったことになったので,今度はパスポートの特典で一筆箋をゲット。


小雨まじりの広坂通りです。

最後は金沢21世紀美術館のタレルの部屋で,一休み。相変わらずよく賑わっていました。皆様,まず,「天井,空いている?」という反応をしますね。本日は,一目瞭然でした。

最後に「おみやげ」です。しいのき迎賓館と21世紀美術館の中間にある,GIFTという店で「手漉和紙」を使ったポケットノートを購入しました。もともと,この文庫本サイズの手帳が好きなので,手に取っていたら,店員さんが上手に商品を進めてくれ...ついつい買ってしまいました。

ちなみにこのGIFTというのは,Ishikawa, Fukui, ToyamaのGiftのイニシャルを取ったもので,北陸三県のギフトを集めた店でした。この和紙のカバーも越中のものでした。

次の「はちまんさん」の落雁も宣伝していました。「ひゃくまんさん」のお蔭で,逆に新鮮に感じられますね。


さて,本日の成果です。三文豪の初版本をデザインしたメモ帳。なかなか良いアイデアだと思うのですが,使うにはさすがに小さすぎますね。文庫本サイズのメモ帳一冊でも良かったかも。

能楽技術館でもらった一筆箋。ツイッター気分でメモを書くのには使えそうです。一筆箋をどれだけ使うか?という根本的な問題はありますが....。


最後に本日行ったミュージアムのリーフレットです。金沢市内の観光については,「徒歩で回る」というのが注目されているので,これらのミュージアムのぞれぞれに「目玉」があれば,面白いと思います。