2023年1月15日日曜日

#シネモンドの12月連続名作上映プロジェクトで「黒い牡牛」という1956年の映画を鑑賞...宣伝文どおりの感動作。最後の闘牛のシーンに圧倒されました

年に数回は映画館で映画を観たくなります。本日はシネモンドで,「12月連続名作上映プロジェクト」として行われているリバイバル上映作品「黒い牡牛(The Brave One)」(1956年アメリカ,監督:アーヴィング・ラッパー)を観てきました。



実は,この作品を選んだのには特に深い理由はなく,「午前中,時間ができたから」という理由と宣伝チラシに書かれていた,「感動のドラマ」という文句に惹かれたからだったのですが...この宣伝文どおりでした。特に最後の闘牛場のシーンには圧倒されてしまいました。

舞台はメキシコの農村。母を失った少年レオナルドは,1頭の黒い仔牛ヒタノ(ジプシーと同義)を自分の友達のように愛し,育て上げますが,闘牛場に送られることになります。まず,この子役のマイケル・レイのひたむきな演技が素晴らしく,前半は仔牛と少年のつながりがしっかりと描かれます。

後半,ヒタノが色々な手違いや事情が重なって,大都市メキシコ・シティにある闘牛場に送られることになります。そもそもヒタノには見るからに闘牛のためのスピリットが宿っており(このヒタノのにも助演男優賞をあげたいですね),ある意味,最高の活躍の場ではあるのですが,仔牛の頃から育てていたレオナルドはこれを何とか阻止しようとします。

少年が生まれ故郷の村から,牛を乗せた車に飛び乗って,見ず知らずの大人と一緒に大都市のメキシコ・シティに出かけ,何と大統領にまで会って,お願いをしに行く...という冒険物語もワクワクさせます(メキシコ人は「いい人」が多いなぁという感じです)。この作品の脚本家は,「ローマの休日」のシナリオを書いたダルトン・トランボという人ですが,いわゆる「赤狩り」でハリウッドを追われ,この作品では別名で原案を執筆しています。この辺も曰くつきなのですが,この辺の「大都市を色々と巡る冒険」という展開は,「ローマの休日」を彷彿とさせるところもあります。

そして最後は超満員の闘牛場の場へ。ヒタノは最後に登場。レオナルド少年も最前列で見守ります。この部分では実際の闘牛を本当にしっかりと見せてくれ,セリフが非常に少なくなります。画面全体から「一体どうなるのだろう?」という空気感が伝わってきます。ヒタノを救ってやりたいけれども,闘牛士と闘うヒタノのタフで勇敢な姿も素晴らしい...少年の表情もどこか「ここまで来たら,どちらでも良いか」という納得の表情にも見えます。

最後は...

*****以下ネタバレになります*****

ヒタノの勇敢さに感動した大観衆の中から「牛を殺すな」という声が次々と出てきて,主催者も白いハンカチをリングに投げ入れて,引き分けといった形になります。元々の約束では,ヒタノはレオナルド少年の所有であることになっているので,少年がリングの中に入ってヒタノを抱きしめ,大歓声の中退場。

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全体の時間は100分程度でしたが,内容がしっかり詰まっており,見応え十分。1956年に作られた作品なのですが「レストア版」ということで,映像は大変美しかったですね。古い時代の映画の美しさを体感できました。映画全体を通じて,非常にドラマティックなのですが,何が正しいかについて白黒をつけるという感じはなく,その葛藤そのものがしっかりと描かれていたのが素晴らしいと感じました。そして,闘牛場の雰囲気,少年を見守る大人たちの表情など,この時代のメキシコの人たちの素朴な暖かみのようなものもしっかりと伝わって来ました。今後こういう味わいの作品は作れないのではと思わせるような作品だと感じました。

チラシによると,「国内最終上映」とのこと(どういう事情なのかよく分かりませんが)。映画館で没頭してみるのにぴったりの作品でしたので,是非,多くの方に観ていただきたいと思います。


今回の作品が大変面白かったので,この12月連続リバイバルシリーズについては,また機会があれば観てみたいと思いました。