2017年9月23日土曜日

柴田克彦著『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)。対照的だけど親密だった2人の指揮者の生き方が分かりやすくまとめられていました

昨日から今日にかけて,柴田克彦著の最新刊『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)という本を読みました。第2次世界大戦後活躍を始めた,岩城宏之さん以降の日本人指揮者の活動について関心があるので,この手の本が出るとついつい読んでみたくなります。

小澤征爾さんと山本直純さんは,2人とも指揮の師匠は,斎藤秀雄なのですが,実は斎藤の代わりに小澤に最初に指揮の指導したのは直純さんとのことです。というわけでこの2人については,特に強いつながりがあります。

本の内容は,対照的なキャラクターを持った2人の指揮者の歩みを過去の文献や関係者へのインタビューを引用しながらまとめたものです。既存の文献の引用が多いので,新しい情報はほとんんどなかったのですが,2人の人生を編年的に交互に並べ,すっきりとした文章でまとめているので,大変読みやすい構成になっていました。予備知識を持っていれば,1日で読めると思います。

この本の原点は,直純さんの「オレは底辺を広げる仕事をするから,お前(小澤)はヨーロッパへ行って頂点を目指せ」という言葉です。この本を読むと,まさにその通りになったことが分かります。

ただし,その人物像は,世間一般のイメージとは逆で,「陽気で人懐っこい人物に見えながら,音楽なら何でもできてしまう天賦の才能を持ち,それゆえの孤独感を宿した孤高の人=直純,天賦の才能を持った孤高のマエストロに見えながら,勉強と努力を重ねて頭角を現した,人なつこい人情家=小澤」ということになります,

私自身,直純さんが司会をしていたテレビ番組「オーケストラがやって来た」でクラシック音楽が好きになった世代ですので,今さらながら,その音楽家としてのマルチな才能に感謝をしつつ,再評価して欲しいなと思っています。この本を読むと,直純さんの晩年のやや破滅的な生き方についてまでもが,直純さんの凄さのように感じられます。

直純さんといえば,岩城宏之さんとのつながりも大きいのですが,この点については,次のように書かれていました。
直純は,小澤およびそのライバル的存在とみなされていた岩城の双方と深い交友関係をもった稀有の人物。ブラームス,ワーグナーの双方と交友関係を結んだシュトラウス2世を彷彿とさせる(要約)
そして小澤さんについては,
小澤は,楽壇の帝王と呼ばれたカラヤン,作曲家としても名高い才人バーンスタインという20世紀後半の指揮界の二大巨匠の温かい薫陶を,両者の生涯に亘って受けたほとんど唯一の存在。才能もさることながら,小澤の人柄あってのことに違いない(要約)
この2人については,人脈も凄いのですが(特に小澤さんの人脈はすごいですね),音楽だけではなく,人を引きつける魅力もあったのだと思います。

読み物としては,やはり,小澤さん自身,直純さん自身の著作(小澤征爾『ボクの音楽武者修行』や山本直純『赤いタキシード』)の方が面白いと思うのですが,特に直純さんの再評価のきっかけとなる本として,クラシック音楽に関心のある方にお薦めしたいと思います。