2014年9月7日日曜日

今更ながらレンタルDVDで「アナと雪の女王」を観てみました。なるほどという感じの名作だと思いました。

「アナと雪の女王」(原題は,ただの「Frozen」)については,これだけ音楽が流行していながら,実は映画全体を観たことがありませんでした。土曜日にレンタルビデオ店に寄った際,「早くも7泊8日貸出可!」と宣伝しているのを見て,「家族も見たがっていたので借りてみるか」と考え,借用することにしました。

というわけで,今日の午前中見てみました。

まず,映像がかなり立体的で,マンガの延長としてのアニメーション映画というよりは実写に近い3Dアニメーション映画だと感じました。主要キャラクターのデザインは伝統的なディズニー映画的な雰囲気を持っていますが(特に「雪だるま」のオラフはディズニー的ですね),そのアニメーションの動きには妙にリアルさがありました。

ディズニーの新作映画を見るのは,この前はいつのことだったか思い出せないぐらいです。多分,「美女と野獣」(いや「アラジン」の方が後?)以来です。その間に随分,ディズニーのアニメ映画を支える技術も変わったんだなぁと感じました。

ドラマの基本的な構成としては,この「美女と野獣」に近いところがあると感じました。市民の住む町から山の奥にある宮殿に主役(アナ)が入っていき,そこに閉じこもっているもう一人の主役(エルザ)を救い出し,最後は愛が勝つ。それをミュージカルのスタイルで描くという形です。映像も間然とする間がない程よく出来ていて,退屈する瞬間がありません。パーフェクトに作り込まれた作品という感じです。

ドラマのテンポも良く,幼い頃のアナとエルザ姉妹の間の重要なエピソードが紹介された後,音楽の展開に乗って,パッパッと2人が成長していく辺りはミュージカル映画ならではでした。

その一方,画面に描かれている城の中の広間,町の景観,海や山などの自然...は非常にオーソドックスで,過去のディズニー映画で伝統的に描かれていた「古き良き童話」的な気分もしっかり残っていました。この最新の技術とディズニーとの伝統のバランスの融合が何ともいえぬ,安心感生んでいると感じました。

ただしストーリーの展開については,最後の方ではこれまでのディズニー映画にはない,大きな転換がありました。ディズニーに限らず,童話のパターンとしては「王子が愛の力で王女を救う」というのが定番で,このお話もそうなりかけたのですが...(以下,ネタバレになります),急に王子のキャラクターがダークな感じに変化し,その代りに「姉妹の愛」が王女を救うという結末になっていました。

もう一人,アナと一緒に奮闘する「よい男」(クリストフ)は登場するのですが,主役になるほどには魅力的に描かれておらず,アナとエルザの姉妹の絆をクローズアップする形になっていました。やはり「待っている女性が男性によって救われる」という展開は,ファンタジーの世界とはいえ,共感されにくい時代になっているのだと思います。

現在も大ヒット中の「Let it go」は,ドラマの前半の方に出てきました。この曲がどういう場で歌われるのか,よく知らなかったのですが,ドラマの結論ではなく,ドラマが展開する前提の部分で歌われていることが分かりました。つまり,エルザが「自分の持つ魔力を隠すために城の中に閉じこもる」のを止め,「魔力を全開にして,開き直って雪の女王になる」という宣言のような感じの歌でした。

この場面は映像美と歌の伸びやかさの相乗効果で圧倒的な迫力を持っていました。これはやはり映画館の大画面で見てみたかったなと思いました。

このドラマのストーリーのポイントは,女王エルザが「触ったものを凍らせてしまう力」を持っている点にあります。それだけならば,結構便利(?)な面もあるのですが,「感情が乱れると自分でもその魔力を制御できなくなる」というのが困りもので,妹のアナとのいさかいの中で感情を大きく乱し,夏だった町を一気に全部冬に変えてしまう,というとんでもないことになります。

ドラマの結末の「解凍」の仕組みは,実はよく分からないのですが,結局,他人に対する自己犠牲的な愛の力が,アナの命を救い,エルザ女王を救い,町全体を救うということになります。この辺には,ワーグナーのオペラなどにも通じる神話的な要素もあると思いましたがが(トロルなど小人族が出てくるのも北欧神話的),やはり何よりも男女の愛ではなく,姉妹の愛にポイントを置いている点が新鮮な点だと思います。

ドラマに出てくるキャラクターとしては,雪だるま(動き回り,会話もできる)のオラフがドラマの盛り上げ役として特に重要です。このオラフは,エルザとアナが仲が良かった「楽しかった子供時代」を思い出させる,象徴的なキャラクターで,途中で溶けてしまいそうになる危機を乗り越え,何とか健気に生き残り,最後までエルザとアナの友達として寄り添います。その存在自体が「無償の愛」を感じさせてくれました。

# 外国の雪だるまは,アリのような感じで「頭+本体+腹」の3つのパーツから成っていることも分かります。

エルザを救いに山奥の氷の城に向かうアナ(あまりにも無防備な格好でしたが,そこがまた世間知らずの王女様的でした)に協力するクリストフも重要な役でした。今回,せっかくの1週間貸出なので,もう一回見てみたのですが,映画全体の「序曲」的な部分で既に子供時代のハンスとその相棒のトナカイ,スヴェンが登場しているのに気づきました。アナとエルザの物語であると同時にクリストフの物語でもあることも分かりました。

この序曲では,氷を切り出す「労働歌」のようなものを歌っていましたが,英語字幕版で見てみると,この部分で既に「Let it go」という歌詞が出てきていました。他の場面からすると,一味違う場面なのですが,ドラマ全体の展開を象徴しているのかな,と深読みをしてみたくなりました。

というようなわけで,「圧倒的な映像美とスリル」「親しみやすさと高揚感のあるミュージカル風の音楽」「感情移入しやすいキャラクターの数々」に加え,「これまでとは一味違ったストーリー展開」という要素が揃った,文句なしのディズニーの名作だと感じました。