1週間ほど前,泉鏡花記念館に行った時,鏡花原作の「化鳥」を絵本化したものの原画展を行っており,関心を持ちました。この日は,この「化鳥」などを基に作られた,「囮」という作品が地元劇団メンバーによって上演されるということで,これを目当てに芸術村に行きました。
行ってみると...
特設紅テントがありました。昨晩,ここで唐十郎の演劇が上演されました(今晩もやっていたようです)。これも面白そうだったのですが今回はパスしました。
さて,この「囮」という作品ですが,5年ごとの泉鏡花フェスティバルの度に募集している,泉鏡花記念金沢戯曲大賞の受賞作品です。今回が4回目で,中空よおいさんという方の作品です。
「化鳥」という作品自体しっかり読んだことがないので,どういう形で引用しているのかまでははっきりと分からなかったのですが,「母-子」の物語を拡大解釈し,「現代の若者」と「社会」「大人」との関係を象徴的に描いた作品になっていました。
主役の少年・廉(れん)とその分身の「猿」,そして,「花」という名前の少女。この3人を中心にドラマは展開します。ドラマ工房自体にステージはないので,役者さんたちは,お客さんのすぐ前で演技をするのですが,この3人は,四畳半の部屋を示す四角い台の上で演技をするシーンが中心でした。
開演前の様子。既に役者さんが動き回っていました。 |
脇役もかなり多く,「本当は化ケモノだけれども人間の姿として登場している...」というような,訳あり風のキャラクターばかりで,それぞれ何を象徴しているのだろう,と考えているうちに,こちらも訳が分からなくなってしまいました。
というようなわけで,「1回観ただけではよくわからない」という作品だったのですが,それでも作品の伝えようとしている内容は理解できた気がしました。中心人物の若者3人だけはいずれも白っぽい衣装を着ていましたが,いずれも純粋過ぎるほど一図な心を持った子供として描かれていました。脇役たちの方は,純真さを失った大人・世間として描かれており,その葛藤が伝わってきました。
年齢的には,私はもちろん「大人」の方ですが, 実は,精神的には,まだ「子供」のようだと自分で思っています(社会人っぽい行動,大人っぽい行動を取ることは,いまだにスムーズにできません。)。というわけで,主要人物3人,特に引きこもりの廉に感情移入をして観てしまいました。前述のように,訳が分からなかったのですが,「大人の世界」への嫌悪感や恐怖感のようなものはリアルに伝わってきました。
最後の方では,化ケモノたちが,廉の集めていた「記憶」を象徴するような白っぽい紙切れ(発砲スチロール?)を延々と会場にバラマキ続けていましたが,この部分も非常に印象的でした。訳は分からないけれども,意味深でした。
全体で休憩なしで90分ほどなので,演劇としてはそれほど長い作品ではありませんでしたが,セリフの量が多く,それがどんどん積み重なってくるので,非常に見ごたえがありました。リアルなステージではなかったので,「これは何を意味しているのだろう?」などといちいち考えてしまったので,結構疲れてしまいましたが,たまには日常生活とは全然違った時空間に没入するのも,良いものだなと感じました。
次のとおりシナリオが公開されていることが分かりましたので,これを読んで,反芻をしてみようかと思います。
http://www4.city.kanazawa.lg.jp/11020/bungaku/gikyoku/gikyoku.html
演劇を見た後は,その他の展示をざっと見てまわりました。
フェスティバルの立看板 |
囮のポスター |
金沢文芸館も協賛しているようでした。 |
歴代の受賞者の肖像写真集 |
他の金沢カレーの店には入ったことはあるのですが,いちばんの老舗のターバンカレーだけは入ったことはありませんでした。せっかくなのでメニューに「1番人気」と書いてあったメニューを注文してみました。
金沢カレーの濃厚なルーの上にハンバーグ,ウィンナー,ロースカツが乗っているというもので,大満足でした。
写真を見返してみて,また食べたくなりました(このところ,要ダイエットなのですが)。
その後は本屋をめぐってバスで帰ったのですが,演劇→カレー→本屋 というのも,なかなか良い取り合わせだと思いました。