2017年11月19日日曜日

#金沢泉鏡花フェスティバル2017 最終日。「世界の中の鏡花:『絵本化鳥』トークショー(ピーター・バナード,中川学,東雅夫)」へ。話を聞いて英文版も読んでみたくなりました。

11月15日から行われている金沢泉鏡花フェイスティバル2017も本日が最終日。昨日よりもさらに冷たい雨の降る一日になりました。


この日は午後から行われる泉鏡花文学賞などの授賞式と審査員の作家たちが勢揃いする文芸フォーラムの方がメインイベントだったのですが,こちらの方はパスして,泉鏡花原作の『化鳥』に関するトークショーの方を聞いて,展示を見てきました。

今回のトークショーは,5年前のフェスティバルに合わせて行われた『化鳥』の絵本化と今回のフェスティバルに合わせて行われた『絵本化鳥』の英訳版の作成の話を中心に,話が広がっていくような内容でした。

スピーカーとして登場したのは,『絵本化鳥』を翻訳したピーター・バナードさん,『絵本化鳥』の絵を描いた中川学さん,金沢ではお馴染みの文芸評論家・東雅夫さんの3人で泉鏡花記念館の学芸員の穴倉さんが司会をされました。皆さん『絵本化鳥』を通じた旧知の中ということで,リラックスした雰囲気の中で,鏡花に関する興味深い話が続きました。次のような話題が出ました。
トークショーの開始前の雰囲気です。
1 バナードさんと鏡花作品の出会い

  • 米国から日本に留学した時,鏡花のことは知らなかったが,たまたま泉鏡花記念館を訪れた際に泉鏡花という面白い世界を作っている作家のことを知った。
  • 鏡花作品については,英訳版から入った。
  • その後,アメリカで行われた日本のホラーについてのイベントで,東さんと知り合い,東さんの編集する雑誌でエッセーなどを書くようになった。

# 泉鏡花記念館という場を中心に,色々な人のつながりができていることが素晴らしいと思いました。

2 米国での鏡花の受容について

  • 鏡花作品については,米国の大学でも取り上げられている。
  • 海外の人には日本の習俗などがわかりにくいのではという懸念とあえて日本らしさを全面に出してそのまま紹介した方が良いのでは,という考え方とがある。
3 『絵本化鳥』の英訳について


    • 鏡花作品の中で,翻訳して違和感がないのは『化鳥』ぐらいである(理由:口語体で書かれていることと一人の子どもの感情をずっと書いていること)。そのこともあり,英訳することにした。
    • 5年前の金沢泉鏡花フェスティバルの際,何か後に残るものを作りたいと相談を受け,絵本を作ることになった。その時から海外に紹介しないともったいないという思いがあり,今年のフェスティバルに合わせて,英訳版を作ることになった。
    • 鏡花作品については,文体の影響が大きいので翻訳するのは難しいが,バナードさんならやれると判断した。
    • 例えば,文章だと敢えて隠されている「羽がはえた美しいねえさん」を絵本では表現しないといけないなど,絵本ならではの苦労がある。
    • ただし,絵本の英訳に際しては,絵があることで助けられたことも多かった。
    • 英訳版ではレイアウトにもこだわっている。
    英訳版です。
    4 『化鳥』のタイトルの英訳について

    • 『化鳥』については,定まった英訳はまだない。
    • 化鳥という言葉については,「怪しい鳥,不思議な鳥」という名詞的な意味と,鳥に化けるという動詞的な意味がある。その両方を保つ方法を考えた。
    • 上田秋成の『雨月物語』の『白峯』の中に「化鳥」という言葉が出てくるが,「お化け」的な訳語は合わない。
    • 「類は友を呼ぶ(Birds of a feather flock together)」という英語のことわざを意識して,「A Bird of Different Feather」という英訳にした。

    5 装丁と絵本文化

    • 『絵本化鳥』の装丁は豪華である。日本の装丁文化も発信したかった。
    • 子ども向け絵本については,米国の場合と内容的に違う。米国では,「言葉遊び」的なものが多いが,日本の場合,優しい文で道徳を伝えるようなものが多い。
    • 米国では,他国の絵本を読む習慣があまりなく閉鎖的である。
    • 『絵本化鳥』については,一般的な絵本よりはマンガ的に作った部分もある。

    特にまとめ的な話はなかったのですが,バナードさんのような方が英訳された鏡花作品からこの世界に入ったことを考えると,これからも海外に向けて鏡花作品を発信することが必要というようなことが「まとめ」ということになるかと思います。

    私自身,英語は得意ではないのですが,「鏡花の日本語」もそれなりに難しいので,英語版というのを是非読んでみたいと思いました。

    以下,フェスティバルの会場の雰囲気を紹介しましょう。
    市民芸術村のすぐ隣にJRが走っています。列車が丁度通っていました。

    PITごとに色々なイベントをやっていました。

    PIT4では演劇や映画になった鏡花作品についての展示などをしていました。

    「文豪とアルケミスト」(これが何なのかよくわかっていないのですが)
    に出てくる文豪の等身大(?)パネルコーナーがありました。

    「明治東京恋花伽」に出てくる鏡花なども等身大パネルになっていました。

    これがそのパネルです。

    鏡花のパネル。やはりウサギがトレードマークでしょうか。

    PIT5では泉鏡花文学賞関係の展示もありました。


    こちらは金沢市民文学賞

    歴代の泉鏡花文学賞が展示されていました。