2018年12月31日月曜日

【#音盤獺祭 002】平成最後の「年末第9」は朝比奈隆指揮新日本フィルで

個人的には元号制度に思い入れはないのですが,先日の天皇誕生日に際して行われた,天皇陛下による「天皇としての旅の終わり」会見を聞いてから,「一つの時代だったのだな」と感じるようになりました。戦争のない時代に象徴天皇としての役割をしっかり果たされたと思います。

さて,年末といえば第9です。やはり気分としては聞きたくなります。子供の頃からの刷り込みでしょうか。「平成最後の年末」に誰の指揮で聞こうか考えたのですが,ここはやはり日本人指揮者の代表として,久しぶりに朝比奈隆さん指揮のCDで聞いてみることにしました。我が家にあるのは,朝比奈さん指揮新日本フィルによる全集の中の1枚です。
このボックスですが,結構豪華な装幀なので...ホコリがなかなか取れません。

そして...調べてみて驚いたのですが,録音されたのが1988年12月15日,東京サントリーホール。つまり「昭和最後の第9」ということになります。ライブ録音で,演奏後に拍手も入っています。
昭和最後の第9を30年後の平成最後の年末に聞くというのも,なかなか良いのではないかと思います。

朝比奈さんの第9ですが,基本的なテンポは遅めで,非常に律儀に演奏しています。隅々まで手を抜かない感じで,言っていれば野暮ったい感じです。が,それが演奏全体の信頼感につながっていると思います。「第9」というよりは,「頑固な大工の棟梁」の手による,何年も風雪に耐えている頑丈な木造建築といった感じです。

特に印象的なのは,ティンパニの叩き方です。第1楽章の途中に出てくる連打の部分などは,通常,滑らかにトレモロで演奏すしていると多いますが,この演奏では,律儀に32分音符として無骨に演奏されています。このCDの解説は,金子健志さんです。その情報によると,朝比奈さんのやり方が楽譜に忠実ということです。朝比奈さんと金子さんの対談が収録されているのもこの全集の特典の一つかもしれません。

第4楽章については,それほど極端に遅い感じはなく,最後のコーダの部分などは,重量感と熱気がしっかり合わさった非常にバランスの良い盛り上がりになっていると思います。
というわけで,平成最後の年末も,これで無事終わりそうな感じです。