2018年12月16日日曜日

【新シリーズ #音盤獺祭 001】ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」ワイセンベルク(Pf),カラヤン指揮ベルリンPO他

いきなりですが,このブログに「音盤獺祭(おんばんだっさい)」という連載企画を考えてみました。何も書くことない時などに不定期に書いてみようと思います。

近年,音楽についてはインターネット上のデータ化しているようなところがあり,それで十分な面も多いのですが,LPレコード,CD,カセットテープで音楽を聞いていた時代の,1枚とか1本という「物理的な形」へのノスタルジーが私にはあります。また,自宅で「ただ音楽を聞く」というのが難しく,常に「何か」をしながら音楽を聞くという状況になっていると思います。かつては,CDの解説を読みながら,時には友人としゃべりながら,聞いていたりしたのですが,そういう習慣は悪くはなかったなと思っています。というようなわけで,物理的な音盤(CD,LPなどの総称)について,その内容を音楽愛好家に紹介しようといった趣旨の企画です。

最近はCDショップでCDを購入する機会は減ったのですが,それでも,定期的に行われている中古音盤市であるとか,演奏会会場で購入する機会はかなりあります。また,私の場合,CDを買い始めて35年ぐらいになりますので,わが家には,かなり沢山のCDがあります。数えていないのですが,2000枚以上はあるのではないかと思います。そういったCDの中から,気の向くままに,その内容や感想を紹介していきたいと思います。

ネーミングの「獺祭」というのは,日本酒の銘柄(今年の夏の中国地方の豪雨で被害を受けた酒蔵のお酒ですね)として知られていますが,もともとの意味は,「カワウソが自分のとった魚を並べること」で,転じて「書斎で学者が周囲に参考書を積み重ねること」という意味もあるようです。それをさらに読み替えて,獲得した獲物(音盤)を並べて紹介するという感じで使いたいと思います。

どれだけ続くか分かりませんが,ブログ形式で文章を書くことが好きなので,とりあえずは,軽い感じで始めてみたいと思います。

その第1回目は,ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」その他 アレクシス・ワイセンベルク(ピアノ),ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル(EMI,録音:1974年)にしてみました。10月の中古音盤市で買ったものです。

ワイセンベルクは,カラヤンとの共演が多かった人気ピアニストですが,クラシック音楽のマニアの間での評価はあまり高くなかった気がします(某評論家の影響と言えよう(?))。その点ではカラヤンにも同様な部分があったと思いますが,その華麗で雄弁な音楽は,「皇帝」という標題にある意味ぴったりだと思います。

考えてみると,カラヤン指揮ベルリン・フィルが「皇帝」を演奏している録音は...もしかしたらこの音盤だけでしょうか。1970年代のカラヤンらしく,冒頭バーンと一撃を演奏した後,非常に滑らかかつ雄大に音楽を進めています。「帝王による皇帝」といった趣きのある演奏です。

カップリングにはベートーヴェンのピアノ独奏曲の小品や変奏曲が入っています。ロンド・ア・カプリッチョ op.129は,「失った小銭への怒り」といったニックネームのある曲ですが,ワイセンベルクの技巧は非常に鮮やかで,気持ち良いぐらいよく指が回っています。小銭を落とした程度の怒りならすっきり吹き飛びそうな感じです。

というわけで,1970年代,音盤全盛時代のゴージャスな気分を味わいたい方にお薦めしたい音盤です。