レアンドロのプールの上も下も盛況 |
今回の展覧会はインドネシアの現代アーティスト,アイ・チョー・クリスティンの個展で,日本で行われるのは初めてとのことです。彼女の作風は,ポスターで使われている作品のとおりで,白の背景に即興的な勢いのあるタッチで抽象的な絵が描かれているというものが大半でした。
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1758
背景の余白が結構多かったので,書道に通じるものもあると思いましたが,色使いにこの方ならではのものがあり(こげ茶とか鮮やかな赤などがゴチャゴチャと混ざった感じ),見た瞬間,アイ・チョー・クリスティンの作品と分かるような個性を感じました。
展示の方は部屋ごとに違ったタイプの作品を集めており,油彩に加え,版画や巨大なオブジェを置いたインスタレーションなど変化に富んでいました。インドネシアでは数少ないという,キリスト教徒的な視点の作品もあるなど,メッセージ性も感じました。が...何を訴えようとしているのかまでは,よくわかりませんでした。
意味は別として,例えば,ギロチンを思わせるインスタレーションでは,21美ならではの白い壁面にシルエットがくっきりと映っており,純粋に「きれいな景色だな」と思って眺めていました。アーティストのトークなどがあれば聞いてみたいものです(4月28日に行っていたようですが...)。
中央の丸い展示室では,同じ大きさの油彩を壁面に展示しており,見るからに鮮やかな世界が広がっていました。1枚1枚の絵は混沌としているのですが,展覧会全体を通してみると,すっきりとした鮮やかさが強く印象に残り,エネルギーや躍動感を感じることができました。8月19日までやっているので,またこの独特の雰囲気に浸りに来たいと思います。
もう一つのコレクション展の方は,前年度から続いている「見ることの冒険」でした。
この展示のいちばん奥の展示室で,ルナ・イスラムという作家による,「縮尺(1/16インチ=1フィート)」という映像作品を流していました。
http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1767
この作品が気に入りました。サスペンス映画の1シーンに入ったような気分に浸ることができました。作品は『狙撃者』(英国、1971年)という映画のロケに使ったレストランと立体駐車場の入った建物の中の映像が延々17分ほど続くだけです。大きさの違う2つのスクリーンに2人の初老の紳士の姿や配膳するボーイの姿が移ったり,景色が映ったり...静かで意味ありげな映像がずっと続きます。意味はよく分からないけれども,別世界に浸らせてくれます。
この「見ることの冒険」の展示の最初の部分に,展覧会の鑑賞のポイントとして「いつもより10秒長く立ち止まって観てみよう」といったことが書いてありました。この言葉は,色々なものに応用できるのでは,と思いました。大量の情報が次々流れ込んでくる現代は,「10秒じっと眺める」ことも難しい時代なのかもしれません。
http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1752
「じっくりと味わう」という姿勢は,本を読む場合,音楽を聞く場合,さらには,他人とつきあう場合にも応用できるのではないかと思っているところです。意外に深い意味を持った良い言葉だなと思いました。
展覧会といえば,石川県立美術館でも「美の力」という加賀藩の茶道美術を中心とした展覧会を行っているので,同じ観点でじっくり観てみようと思います。
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21美のマイケル・リン作「市民ギャラリー」(ロッキングチェアの置いてある写真写りの良い壁)は,好きな場所なのですが...しばらくメンテナンス中とのことでした。
その代わりに,こちらも写真写りの良い「ウサギの椅子」が置いてありました。雲を図る男と一緒に記念撮影してきました。
最近,下の写真のような「スニーカーを履いた柱」が至るところにあるのを発見。自分の足と一緒に撮影している人を見かけましたが,やはり,いわゆる「インスタ映え」のする美術館ですね。