2017年3月25日土曜日

村上春樹『騎士団長殺し』読了。”いつものようなキャラ”がクリアかつミステリアスに絡み合う長編ならではの堂々たる展開。迫真のアートが持つミステリアスな力がドラマの中心

村上春樹の7年振りの長編小説『騎士団長殺し』を読み終えました。『1Q84』よりは短かったのですが,第1部,第2部の中には,いつもどおり,音楽,料理,本,歴史などの情報がしっかりと盛り込まれており,複雑でミステリアスなストーリーをクリアに伝えようとする,いつもながらの充実感を感じさせてくれました。
読む人によっては,「いつもと同じようなキャラが,いつもと同じように飲み食いして,音楽を聞いて,不倫をして...」と感じたかもしれませんが,個人的にはそこが良いと思いました。長編ならではの堂々たる展開です。

主人公は,美大卒の腕の良い肖像画家(30代)です。妻が突然出て行った後,車で「みちのく一人旅」みたいなことをし,その後,主人公の友人の父親(雨田具彦(ともひこ)という有名な画家。入院中)が住んでいた小田原にある家で暮らすことになります。この雨田具彦が描いた日本画が小説のタイトルになっている『騎士団長殺し』です。主人公(考えてみると...名前は明記されていません)が屋根裏部屋にあったこの,「知られざる傑作」を発見してから,色々な物語が動き始めます。

第1部と第2部には,それぞれ「顕れるイデア編」「遷ろうメタファー編」というサブタイトルが付いています。「イデア」「メタファー」といった用語は,通常,小説の中で直接使われることはなく,研究者や評論家が使う用語です。こういった生硬な言葉を意図的に使っている点が,不思議な味になっています。

登場するキャラクターについても,「自己模倣か?」と思わせるほど,「いつものキャラ」が勢揃いしています。

***以下,内容に触れます****

主人公は,村上さんの小説によく出てくるサラリーマンではない,ちょっと内向的で規則正しい生活をしているプレーンでニュートラルな感じの人物。画家という点が,これまでになかった点ですが,しっかりとした専門職的なメソッドを身につけている辺りが「いつもどおり」です。村上さんの分身的なキャラなのかもしれません。

この主人公の妻が,急にいなくなり,主人公が喪失感を感じるというのも,「よくありそう」です。「死に行く老人キャラ(雨田具彦)」,「完璧な紳士だけれども善悪が判別しない,謎めいていて,立派な家に住む,グレート・ギャツビー風キャラ(免色渉)」,「主人公と深く通じ合う美少女キャラ(秋川まりえ)」など,過去の作品にも似たようなキャラクターが登場していたことを思い出します。特に「老人キャラ」との遭遇の後,異次元空間に入って行くという展開は『1Q84』と似ています。

さらに主人公は,お金はなくても,結構もてて,主婦と昼下がりの情事...というのもいつものパターンです。「本物のような夢」の中での性交というのも毎回のように出てきて,重要な意味を持ちます。劇中劇のような感じで,第2次世界大戦の時のエピソードがところどころで挟み込まれるのも,『ねじまき鳥クロニクル』などと似ているかもしれません。村上作品のキーワードになっている「井戸」のような場所に下りていくというのも,毎回のように出てきますね。

ドラマの展開自体は,『1Q84』のようにパラレルに進むわけではないのですが,途中,やはり,主人公と秋川まりえとがパラレルに行動するような部分が出てきます。

そして,主人公はLPレコードでクラシック音楽を聞き,ウィスキーを飲み,手早く料理をします。これだけ,いつものパターンが揃っているのに,しっかりと読ませるというのは,さすが村上春樹さんですね。一種,中毒性のある魅力と言えるかもしれません。

文章の方も,いつもどおりクリアで具体的な描写が特徴的ですが,今回は,異様に説明的なのが目につきます。ちょっと理屈っぽいかなと思わせるぐらいに,カッコ書きで細かく補足をしている部分が沢山出てきます。あいまいさを無くそうという点が徹底しています。

このクリアで読みやすい文章を読んでいるうちに,いつの間にか各キャラクターが絡みあい,次第に夢の中の出来事のようなミステリアスな物語に入って行くあたりが真骨頂でしょうか。心の中の闇と理性との戦いのような描写も,何だか分からないけれども惹かれます。「文章明晰でミステリアス」というのもいつものパターンです。多くの読者はこれを期待しているのだと思います。

今回の作品のいちばんの特徴は,やはり画家が主人公である点だと思います。形を描くだけではなく,対象の本質を抽出し,作品として描き出す「アートの力」のようなものが伝わってきます。雨田具彦の描いた『騎士団長殺し』(オペラ『ドン・ジョヴァンニ』の一場面を日本画として描いた作品)の持つ力がドラマ全体のエンジンになっています。

この作品に描かれている「イデア」が絵から出てきて主人公に語りかけたり(他の人には見えない),モノとモノをつなげる通路としての「メタファー」が人物として絵から出てくるというのは,難解でしたが,この作品独自の深さを感じさせる部分だと思いました。「目に見えるすべては,結局関連性の産物」といったセリフも印象に残りました。

というようなわけで,この小説は,村上春樹さんの長編小説のいつものフォーマットやメソッドにしっかりと則りつつ,いくつかの新機軸を加えた作品と言えます。その中から,迫真のアートが持つミステリアスな力がリアルに伝わってきます。一種,村上作品の典型的な作品であり,総決算と言っても良い作品のように感じました。

PS. 近年の村上作品では,「どんなクラシック音楽が使われているか?」が話題になりますが,この作品については,音楽よりも絵画の方が主役なので,ほぼBGM的な扱いのような感じです。それでも,R.シュトラウスの楽劇『ばらの騎士』は何回も登場してきたので,話題になるかもしれません。ショルティ指揮ウィーン・フィルによるLPというのは,意表を突くものでしたね。

2017年3月20日月曜日

福井市美術館で展覧会「ウィリアム・モリス:原風景でたどるデザインの軌跡」を見てきました。英国の自然と伝統を反映した実用的な美しさ。こんなデザインに囲まれて暮らしてみたいものです。

三連休の最終日は,「久しぶりに少し車で遠出してみるか」と思い立ち,福井市美術館で行われている展覧会「ウィリアム・モリス:原風景でたどるデザインの軌跡」を見てきました。「遠出」というほどには遠くはなかったのですが,北陸自動車道を走るのは...本当に久しぶりのことです。

この美術館に来たのは初めてでしたが,次のような独特の形の建物で,とても明るい雰囲気でした。



この展覧会は,英国のデザイナー,詩人,社会主義運動家(他にも色々な肩書がありそうですが),ウィリアム・モリスのデザイナーとしての側面に注目したもので,彼の人生に沿う形で,壁紙や本の装丁などのデザイン約100点が展示されていました。個人的には本の装丁に特に関心があるので,一度見てみたいと思っていた作家です。

今回は,モリスの作品に加え,写真家の織作峰子さん(石川県出身の方ですね)による,モリスにちなんだ場所の写真や文章,モリスの人生を紹介するスライドショー(とても美しく,分かりやすいスライド)なども交え,6つの部分(本になぞらえて「章」と呼んでいました)に分けて,モリスのデザイン作品を紹介していました。モリスのデザインだけだと,やはり単調になるので,とてもうまく変化が付けられていると思いました。

モリスは,1834年生まれで,幼少の頃から,森,川など自然に囲まれて裕福な家庭に暮らしています。この英国の自然(花とか動物とか)がルーツの1つになっています。もう1つは,中世の芸術です。こういったことが,モリスのデザインの普遍性につながっている気がしました。

モリスが住んでいた,邸宅の様子をスライドショー(Googlesストリートビューのような感じで)で再現するような展示もありました。「役に立たないものや,美しいと思わないものを家に置いてはならない」というモリスの言葉がチラシに書いてありましたが,確かにそのとおりで,統一された美的センスと簡潔さにあふれた家でした。現代風に言い換えると,コンマリさんの「ときめく魔法」にあふれた家なのでは,と思いました。格子の入った丸窓から,外の自然を眺めるというのは...自宅でもやってみたいものです。
この美術館の回りも自然に囲まれており,良い雰囲気でした。
ただし,新婚の頃に使っていた別荘,ケルムコット・マナーというのは,実はドロドロとした状況だったようです。解説には「地上の楽園」と書かれていましたが,モリスの絵の師匠のロセッティとモリスの妻との三角関係がそのまま持ち込まれた部屋の配置になっているのが,とんでもないと思いました。

モリスの作品の技術については,インディゴ抜染というのが重要なようです。デザインのモチーフとしては,植物や動物が中心で,同じようなパターンの繰り返しがリズムを生み,シンメトリカルな配置が落ち着きを生んでいました。どのデザインが良いかは...好みの問題でしょう。

モリスは出版にも関わり,ケルムコット・プレスという名前で,53点66冊の本を出版しています。それぞれ平均300冊程度しか印刷されておらず,1冊1冊が美術品のような形になっているようです。その特徴は,「美しい活字」と「美しい紙」にあります。木の葉で包まれたような重厚で装飾的なデザインは,中世の彩色写本の研究成果によるものとのことです。

思想的には社会主義運動,アーツ・アンド・クラフト運動に関わって行くことになります。この辺については,今回はそれほど紹介されていませんでしたが,「喜びと誇りを持ってモノ作りに励んでいた時代」として中世を捉えている点が,とても新鮮に感じました。

というような感じで,せっかくの機会だったので1時間30分ほどかけてじっくりとウィリアム・モリスの世界に浸ってきました。

展覧会を見た後は,グッズコーナーへ。もともと実用的なデザイン,ということでどのグッズも欲しくなるものばかりでしたが,「実際に使うかどうか?」ということを考えて,キーホールダーを買うことにしました。本当に偶然なのですが,つい2,3日前にキーホールダーが壊れてしまったばかりだったので,良いタイミングでした。
 
その他,(これは実用性とは少し違うのですが)絵ハガキの紙の感じと色合いがとても良い感じだったので,「いちご泥棒」など2枚購入してしまいました。

美術館の中では,コースターを作るワークショップもやっていました。

さて,この日ですが金沢から福井まで全部高速を使うと「高い」ので,「行き」は美川から福井まで,「帰り」は福井北から小松まで高速を使いました。

「帰り」は女形谷(おながたに)PAに寄ってみました。
 「当店人気No.1」とか「秘密のケンミンShowで紹介されました」などと書かれているとついつい欲しくなります。福井県は油揚げの消費量がとても多いそうです。個人的にも好きなので,この「谷口屋の油揚げ」というのを買ってしまいました。
さらに福井県の名物といえば,ソースカツ丼ということで,せっかくなので食べてみました。見た目通りの素朴な味でした。
その後,尼御前SAにも寄ってみました。こちらは,以前来た時よりも,大変きれいになっていました。ファミリーマートまで入っていました。

というようなわけで,福井までのミニ旅行を楽しむことができました。心残りは...山がはっきり見えなかったことでしょうか。下の写真のような感じで,かすんでいて,山は鮮明には見えませんでした。

先週末の #べっぴんさん で栄輔さんが言っていた「その人の生き方に通じる”おしゃれの意義”」。良いことを言っていたので抜き書きしてみました。

NHKの朝ドラ「べっぴんさん」は,結構ぐだぐだとした展開の部分もあるのですが,時折,キラリと光るセリフが出てきますね。先週末は,栄輔さんが「男のための着こなし講座」のあいさつの中で「おしゃれの意義」について語っていましたが,なるほどと思ってしまいました。うまい具合に録画してあったので,抜き書きしてみました。
おしゃれとは生き方に通じます。
人に対して好感を与えようとする努力。
誰しもが持ちうる自分はこうありたいと思う理想。
それに近づくように振る舞うことで自分を律し,自分を高めることのできる努力こそがおしゃれなのです。
逆に言うと,おしゃれをしないということは,他人とのコミュニケーションを拒否し,自分自身についての理想を持っておらず,自分に甘い,ということになりそうです。何か身につまされる気がします。

2017年3月19日日曜日

金沢町家で行われた一箱古本市へ。さらに浅野川に掛かっている橋めぐりをしてきました。

本日の午後は,別に書いたとおり金沢市内をウロウロしていたのですが,実は「一箱古本市」も見てきました。いつもは横安江町商店街付近で行っていましたが,今回は,金沢市内の町家で行うということで,雰囲気を見てきました。

場所は,紙谷漁網店1階土間。チラシに地図が付いていたのですが,結構難易度の高い場所にありました。道に迷うのを楽しもう,という感じで自転車で動き回っているうちに西別院の境内に入ってしまいました。

滅多に来たことのない場所だったのですが,「こんなに立派だったんだ」と改めて実感しました。東別院よりも,古い感じでしたが,その分,風格もあると思いました。

そして...そのすぐ近くに紙谷漁網店はありました。結果としてほとんど迷わずに到着してしまいました。

なかなか良い雰囲気でしたが,やはり屋内ということで,やや店員さんの距離感が近すぎるかなと感じました。ちょっと逃げ場がない,といった感じでしょうか。

ちなみにこの漁網店ですが,以前来たことのある場所だということを思い出しました。

近年,金沢町家を使ったお店が増えていますが,やはりカフェなどの飲食店として使うのが良い気がしました。

さて,本日ですが,ついでに浅野川の「橋めぐり」をしてしまいました。自転車ならば,簡単に出来てしまいます。それぞれの橋のデザインや雰囲気が個性的で,楽しめました。

それでは,上流から行きましょう。

奥に見えるのが天神橋です。梅の橋から撮影

梅の橋です。河畔から撮影。

浅野川大橋です。こちらも河畔から撮影。浅野川には,ダムがないので,この時期,水量がとても豊富です。街中でも,さらさらと川の流れる音が聞こえるのが,浅野川の素晴らしさです。金沢の良さの最上のものの一つだと思います。

浅野川大橋から上流を眺めてみました。今日はかなり花粉が飛んでいたのか,遠くの山並みは見えませんでした。

中の橋です。梅の橋とほぼ同じ形です。

最後は小橋。この辺りはとくに水の量が多く,ほとんどプールのようでした。観光客もいなくなり,日常の空気がゆったりと流れている感じです。

犀川に掛かっている橋も個性的なので,今度は犀川にも行ってみようと思います。

この連休中の金沢駅周辺は「一見ラ・フォル・ジュルネ金沢」風。日本循環器学会を大々的に実施中。さすが医学系の学会ですね。

本日も穏やかな天候だったので,午後から金沢市内まで自転車で出かけてみました。駅前周辺に行ってみると,日本循環器学会を大々的に行っていました。駅前のホテルの前や石川県立音楽堂の前には,次のような看板が出ていたのですが...これはラ・フォル・ジュルネ金沢そのまんまといった感じでした。

いつもの癖(?)で,ついつい各会場の看板めぐりをしてしまいまいました。

まずホテル日航金沢前。金沢市アートホールを使っていたようです。

こちらはANAホテル前。

石川県立音楽堂前です。

中に入ってみると,ラ・フォル・ジュルネ金沢の時と似た感じの受付やパネル。


石川県立音楽堂の方は全館が学会に貸し出されていました。

やすらぎ広場は,丸善の書籍販売コーナーに。邦楽ホールも使っていました。

交流ホールは次のような感じです。

地下に行ってみると,いつもとかなり違った,かなりゴージャスな雰囲気になっていました。

JR金沢駅方面に行ってみると...もてなしドーム地下も学会。

もしかしたら...と思って,もてなしドームのタペストリ―を見てみると,こちらも学会。

さらにラ・フォル・ジュルネ金沢と同様の形で,学会のフラッグがずらっと並んでいました。

というようなわけで,駅周辺は,「一見ラ・フォル・ジュルネ金沢」風になっていました。一つの学会で実現してしまうあたり,さすが医学系の学会ですね。

さらに学会の名札を付けた人を沢山見かけました。そもそも,大規模学会というのは,ラ・フォル・ジュルネのようなものなのかもしれないですね。

最後に金沢駅に行ってみると,北陸新幹線2周年を祝う,バースデーケーキ風の飾りが出ていました。新幹線は,観光客だけではなく,学会も連れてきたのかもしれないですね。

2017年3月10日金曜日

昨晩 千葉市で宿泊後,本日は国立西洋美術館の常設展を鑑賞。どこかで目にした名画ばかりでした。その後,国立新美術館へ。ミュシャ展と草間彌生展は外から眺めるだけに

昨日は仕事の関係で千葉市に宿泊しました。千葉で宿泊するのは,今回が初めてのことです。夜遅かったので,滞在時間は長くはなかったのですが,広い道路とモノレールが印象的でした。

なかなかモノレールは通ってくれませんでした。
千葉駅です。
なぜかヘレン・ケラーの像が街中にありました。
本日は1日フリーでした。どうしようか迷ったのですが,夜遅くなると疲れが残り,明日に影響が出るので,午前中,東京都内の美術館に行き,速目に金沢に戻ることにしました。

まず,久しぶりに国立西洋美術館に行ってみたくなり,上野へ。
上野公園は,穏やかな春といった気分でした。幼稚園か保育園の子どもたちが,列を作って,上野動物園に「卒園旅行」に来ていたのがとても楽し気でした。
東京文化会館前から国立西洋美術館を見たところ
上野公園内の美術館・博物館のポスター類
東京都美術館には行かなかったのですが,ティツィアーノ展をやっていました。
上野動物園は工事中のようでした。壁面に書いてあった動物の漢字です。

上野動物園周辺だとポストもパンダ仕様。子どもたちも喜んでいました。
次回予告のこの展示も面白そうです。 
飲食店の前に置いてあったものですが...どうも何でもアートに見えてしまいます。
9:30になったので国立西洋美術館へ。シェセリオーという画家の展覧会も行っていたのですが,こちらはパスし,常設展のみを見ることにしました。


美術館の前には,ロダンの彫刻「カレーの市民」。「カレーの市民アルバ」はこのパロディでしょうか。
半対面にはロダンの「地獄の門」ともう一つ作品があったのですが...撮影ミス&逆光
 この美術館については,近年,世界遺産への登録が決まったル・コルビュジエ設計の建物の方が注目を集めていますが,内容の方も素晴らしく,美術の教科書に載っているような作品がゾロゾロと並んでいるのが魅力です。

この名作の多くは,この美術館の核となっている「松方コレクション」に含まれているものです。大原美術館のコレクションと並ぶような素晴らしいコレクションだと思います。ほぼ時代順に展示されているのですが,とてもバランス良く,各時代の代表的な画家の作品が入っています。あまり大きな作品はなく,「もしかしたら私の家にも飾れるかも」といった丁度よい大きさの作品が多いのも特徴だと思います。

私の好みとしては,やはり19世紀以降の印象派あたりの作品が好きです。子供の頃,絵本を読むよりは,百科事典の別冊についていた画集を眺める方が好きだったことも影響しているのかもしれません。それと,私の母が描いた油彩画の影響もあると思います。今から思えば,ペイントナイフを使った大胆なタッチの絵が多く,「そういう絵が良い絵だ」と刷り込まれていた気がします(母の絵が応接間に飾ってあったのも思い出しました)。

印象に残っているのは次のような作品です。所蔵作品の画像がWebサイトに載っていたのでリンクしてみました。

ロセッティ「愛の杯」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1984-0005.html
この女性の表情が何故か忘れられません

クールベ「波」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1959-0062.html
これは美術の教科書などでよく見かける絵ですね。

スーティン「心を病む女」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1960-0001.html
あまりにも”そのまんま”のタイトルですが,以前何かの本で見た時から印象に残っている絵です。

マルケ「レ・サーブル・トロンヌ」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1959-0126.html
これも画集で見て印象に残っていた絵です。どこかな空虚な雰囲気がありますが,妙に波長の合う絵です

ドニ「雌鶏と少女」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1986-0001.html
調べて分かったのですが,この美術館ではドニの作品を沢山所蔵しているようです。どこか平面的で,民芸品のような雰囲気が面白いと思います。

デュフィ「モーツァルト」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1990-0007.html
画像は公開されていませんでした。デュフィには音楽を題材にした作品がいくつかありますが,こんな絵があったんだと初めて知りました。ちょっと部屋に飾ってみたくなるような絵でした。

ルノワール「帽子の女」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1959-0181.html
「これぞルノワール」という感じの絵ですね。

コルネリウス・デ・ヘーム「果物籠のある静物」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1990-0002.html
1600年代に描かれた非常に写実的な静物画です。文字通り静謐な空気感が感じられます。

そして何,2点のモネの絵。この美術館の看板ですね。展示室の最後にある「睡蓮」も良いのですが「舟遊び」は構図が素晴らしいと思います。水面にピンクが混ざっているのもなんともいえず良い感じです。

モネ「舟遊び」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1959-0148.html
モネ「睡蓮」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1959-0151.html

今回,いちばん印象に残ったのが,ハンマースホイという画家による「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」という作品でした。

ハンマースホイ「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」
http://collection.nmwa.go.jp/P.2008-0003.html

奥の部屋にいる,ピアノを演奏する女性を背後から描いた作品で,全体はほぼモノクロです。構図的にはフェルメールの絵にありそうな感じなのですが,どこかミステリアスな雰囲気があり,画面に引き込まれてしまいました。

こういった作品をじっくり楽しめて430円というのは,かなりお得なのではないかと思います。そして...ミュージアムショップでは,「自分へのお土産」ということで,その分,ついついグッズを買ってしまいました。

今回購入したのは,コルビュジエが描いた美術館のイラストをデザインしたノートと,「果物籠のある静物」をデザインした缶ケース入りのミントです。後者の方は,携帯用付箋入れに使えないかなと思っています。

さらにこの日は,「スエーケン:デンマークの芸術村」という展示も常設展と一緒に行っていました。屋外での労働の様子をスナップ写真で撮影したような絵やのどかな自然が描かれていたり,独特の落ち着きのある世界が印象に残りました。
ちなみに上の「ジグザグ」が美術館のロゴのようです,National Museum of Western Art
のNMWAを単純化すると「確かにこうなる」というデザインですね。
その後,六本木まで移動し,国立新美術館に行くことにしました。
地下鉄日比谷線の六本木駅から美術館に行く途中の「ミッドシティ」付近にあったオブジェ
こちらでは,ミュシャ展と草間彌生展をやっていました。

遠景です。巨大な美術館です。
美術館のまわりの木も「草間化」していました。
美術館の中です。同時にいくつも展示を行っていました。
美術館の外に銀色の玉。これも草間さんの関係でしょうか?
どうしようか迷ったのですが,入場料が結構高かったことと,金曜日にも関わらず結構混雑していたこともあり,展覧会には入らず,ミュージアムショップだけをめぐることにしました。国立新美術館の地下にあるミュージアムショップはとても大きく,ここを眺めるだけでも結構楽しめます。何か面白いものがあれば買ってみるかなと思ったのですが,結構,金沢でも見かけるものが多かったので何も買いませんでした。

ミュシャ展のミュージアムショップにもちょっと入ってみました。今回の展示の目玉「スラヴ叙事詩」をジャケットに使ったCDが面白そうでしたが...もの凄い列が出来ていたので止めにしておきました。圧倒的に女性客が多いのもさすがミュシャだと思いました。

ちなみにミュシャについては,画集を持っています。ミュシャの場合,もともと絵というよりは,ポスターのようなところもありますので,この画集を見て我慢しておくことにしました。

もう一つの草間彌生展の方もミュージアムショップが大賑わいでした。展覧会に入るための列は出来ていなかったのですが,ミュージアムショップのレジ待ちに大変長い列が出来ていました。こういう光景を見るのは初めてでした。
草間さんの展覧会を観た人だけが入ることのできる部屋がありました。
佐藤可士和さんデザインのロゴ
ここにも草間さん関係のオブジェがありました。
その後,地下鉄の乃木坂駅から東京駅方面に戻ることにしました。この駅に入るのは初めてでした。アイドルグループに関連したものはないか?と回りを眺めたのですが...特に目新しいものはありませんでした。
 そして,二重橋前で降りてみました。こちらも初めて降りる駅でした。
歩いて東京駅のすぐ隣にあるKITTEへ。福井県もがんばって,恐竜といっしょにPRを行っていました。

KITTEの中にある文房具店が好きなので,いつも時間調整を兼ねて立ち寄っています。今回も欲しいものはあったのですが,眺めるだけにしておきました。

というようなわけで,本日の出費は,考えてみると国立西洋美術館の常設展の入館料とおみやげ代と地下鉄代だけでした。その分,昼食の弁当代に少し上乗せして,北陸新幹線で金沢に戻りました。

長野を過ぎたあたりから,天候が暗転していくのがよく分かりました。空気の質も結構違います。関東地方は乾燥していましたが,北陸はしっとりとしています。どうみても北陸の方が肌には良さそうです。
長野付近。なぜか電柱が倒れているように写っていました。
これは...確か妙高高原付近です。